第105話

試験艦は搭載する核融合炉の限界まで酷使された。

ボロボロになった試験艦を牽引してステーションまで戻る。

俊はドックの中に何とか試験艦を放り込む。

内心では爆発しないだろうなと怪しんでもいた。

何せ使われているのは核融合炉である。

少しでも扱いを間違えれば被害は相当なものとなる。

俊の思いとは違い、試験艦は爆発など起こさず技術者達によって様々な処置をされ、安全な状態にされる。

技術者達は俊の存在など忘れたかのように試験結果を議論している。

ここに居ても出来ることはなさそうなのでこの場を後にした。

マーチェと合流して決済すべき仕事を片付ける。

惑星の開発状況は順調でそろそろ生物を投入してもよさそうだ。

「問題なければ、決済印を押してください」

「了解」

決済印を入れられたデータはそのまま銀河帝国の生物の遺伝子を管理する部署に送られる。

そして、すぐに返信が返ってくる。

「ええっと・・・。遺伝子が届くのが1週間後か」

「それは俊様が皇族だからですね。通常は2,3か月とか待たされますよ」

お役所というのはどこもかしこも同じらしい。

「後は、冒険者から艦を売ってほしいか。どう思う?」

「そうですね・・・。余裕があるなら売ってもいいのではないでしょうか?」

「元々、売却も視野に入れて造っていたから駆逐艦には余裕があるけど・・・」

「支払いを危惧されているなら、大丈夫かと。ビビット金融がお金を貸すみたいですから」

ビビット金融はマーキュリー家の一族が経営している。

そして、支店長は交流のあるドリトルさんだ。

支払い能力には問題がないだろう。

「よし。とりあえず5艦ほど売って様子見かな」

売却する旨を伝えると直接取引がしたいと冒険者から呼び出された。

場所は出来たばかりの冒険者組合である。

「ちょっと行って来るね」

冒険者組合に着くと値踏みされるような視線を感じる。

受付に用件を伝えると奥の部屋に通された。

「お久しぶりねぇん」

「ドリトルさん。お久しぶりです」

他にも購入者と思われる壮年の男性が5人いる。

「あんたが俺達に艦を売ってくれるのか?」

「言葉には気をつけなさいな。若いけどこの星系の領主様よん」

「ええっと。まずはじめに、貴方達を信頼してお売りするわけではありません」

そう言うと冒険者達は怖い顔をする。

「なんだと・・・?」

「ドリトルさんとはそれなりに親交があります。そのドリトルさんが認めたからであることを忘れないでください」

「光栄ねぇん。あんた達、私の期待を裏切ったらわかってるわねん」

そう言ってドリトルさんは冒険者達を睨みつけた。

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