第104話
マーチェと手分けして俊は事務仕事に精を出す。
各部署に問題は起きていない。
順調そのものに見えたのだが、嫌な申請書が目に飛び込んできた。
提出者は技術者達である。
試作型のシールド発生装置の試験だ。
試験を行うにあたって護衛用の艦隊を派遣してほしいとのこと。
「う~ん・・・。何か嫌な予感がするんだけど・・・」
「でも、受理するしかないのでは?」
その通りではある。
その通りではあるのだが・・・。
「はぁ・・・。他の皆は休暇中だし、ちょっと行ってくるね」
「頑張ってください」
そう言ってマーチェに送り出された。
俊はAIに指示を出し臨時の護衛艦隊を組織する。
そして、ドックに赴いた。
「申請のあった件ですけど・・・」
「今か今かと待ってましたよ」
相変わらず熱量が凄まじい。
「少し落ち着いてくださいよ」
「これは失礼」
「詳細をお伺いしても?」
「今回の為に、専用の艦を用意しました。ただ、1つ問題がありまして・・・」
「問題?」
「この艦は自力で移動することが不可能でして・・・」
「なるほどって・・・。どうやって試験宙域まで運ぶんですか?」
「ドックの外には何とか出しますので護衛艦に牽引していただきたく・・・」
「わかりました。ドックの外に護衛艦を待機させます」
時間があったので今回、用意された艦のスペックを調べる。
核融合炉を5個搭載している。
その全てが試作型シールド発生装置に使われるようだ。
注釈としてこれでもブラックホールエンジン1つで造られるエネルギーより少ないと書かれていた。
技術者達は実験用にブラックホールエンジンを使おうとしたようだが、マーチェに却下されたようである。
俊としてもブラックホールエンジンを使い潰すような実験は認められない。
それだけブラックホールエンジンに使う資源量は多いのだ。
今回、試作型シールド発生装置の試験に同行するのは駆逐艦10艦と軽巡洋艦1艦だ。
念のため周辺を探査する。
周辺に飛んでいる宇宙船もなく宇宙生物などもいない。
駆逐艦に牽引され試験艦は所定の位置に運ばれる。
遠隔操作でシールドが生成され準備は万端だ。
「それでは耐久力を試してみましょう」
技術者達はノリノリである。
俊は言われるがまま、試験艦に攻撃をする。
技術者達はデータを確認し一喜一憂している。
「やはり、エネルギーが足りませんね」
技術者達はエネルギーが回復するのを待ち、また攻撃をしてほしいと言ってくる。
何度も実験に付き合わされても堪らない。
俊は技術者達の気の済むまで指示をされるまま試験艦に攻撃を続けた。
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