魚原永太の話
昨日は大変だった。
急に透夜が店に来たと思ったら、「よー、永太。魚捌けるようになったかー? 俺に教えてくれよ、な?」とか言い出した挙げ句、俺が教えないと言ったら「なら捌けるかどうか見せてくれよ」と言ってきた。
あまりにもしつこいので、捌いてやると感嘆の声を漏らしていた。
曰く「本当に捌けるとは思っていなかった」らしい。
そんなことをしていたせいか、魚を購入しに来ていた
俺は嫌な予感がした。今の奏介といえばニートである。そんな彼のことを彼の両親は心配している。俺も何度か仕事を紹介してくれと頼まれたことがある。
案の定、彼女の話は奏介の話題になっていた。そして、透夜にも仕事を紹介してくれと頼んでいたところだった。
これは透夜にとっては面倒事だ。ここは助け舟の一つでも出してやるかと思ったら透夜が急に真剣な顔つきになって言った。
「奏介のことは心配でしょうけど、奏介にも考えはあるはずです。僕がどうにかすることはできない。あ、でも奏介に謝らないといけないことがあるので近いうちに伺いますね」
後半部分は微笑みながらだったが、その微笑の裏には凄みのようなものがあった。
それを感じ取ったのか彼女は何も言わずに魚を購入して小走りで帰っていった。
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