第16話

「時間は有限、出来ることはなるべくやっとけば後々楽になってゆっくりできるしね」


 出た、彼女の名言。

 彼女は何事も効率よくこなす。

 運動以外は……。

 成績は紅羽と並ぶほどの点数だが、運動が壊滅的……この前なんか、女子の体育でバウンドしたサッカーボールが顔面に直撃したらしい。

 そんなことあるかと思うだろうが、僕がその現場を間近で見たので間違いない。


「そんなに勉強して疲れない?」

「ううん、疲れるというより楽しいよ」


 僕にとっては未知の発言で、到底理解の及ばない領域だ。

 だってそうじゃないか、勉強して疲れることはあれど楽しいなんてことはありえない。 


「前回も悪かったようだし、一緒にやらない?」


 今は九月なので、あと二週間ほどで中間試験だ。

 前回点数が悪かった分、今回で取り戻さなければ何が待っているかなんて考えたくもない。


「お前ら、席につけ~」


 そう思っていると、担任である立花加奈先生が中に入ってきて教壇に立つ。


「おはよう皆、それじゃあ出席を取っていく」


 そう言って彼女は出席を順番に取り始める。


「それじゃ、今日の連絡事項だが、何度も言ってるようにもうすぐ中間試験だ。 試験の悪かったものもよかった者もきちんと勉強するように」


 瞬間、教室が騒がしい雰囲気になる。

 中間試験が迫り絶望している者や誰かに勉強を教えてもらおうと必死に頼んでいた。

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