第7話 寝不足幼馴染

「……すぅ……すぅ……ん……」


 僕の肩で可愛らしい寝息で寝ていらっしゃるのは、幼馴染にして先程強引に僕の予定を決めてきた暴風娘の紅羽だ。

 一通り喋ると彼女は一睡もしていないからか、少しずつ瞼が閉じて何故か僕の肩に頭を乗せてきた。


 思春期男子にこういうの、良くないよ本当に……そして、なんで逆に行かないのか不思議だ。


 席を角に譲ったのも、彼女が寄りかかりやすいようにしたからなのに、これだと全く意味がない。

 一瞬ドキッとしたが、気持ちよさそうな彼女の顔を見て起こすのも悪いのでずれても大丈夫なように後ろの方に移動させる。

 正直前に落ちて転ぶ彼女も見てみたいが、後が怖いのでやめておいたという事もあるが。

 これでガクッと前に落ちることはないだろう。

 しかし、無防備だよな。

 こんな公衆の面前でこんな可愛い子が眠っているのは単純に危なっかしい。


 それだけ僕に心を許してるってことなんだろうけどさ……。


 それにして無防備すぎて、僕を男として見ていないのだろうと再認識させられる。

 しばらく僕らは電車に揺られていると、シンパシーだろうか……彼女の寝息が聞こえると同時に、僕も眠たくなってきた。

 まるでASMRのような寝息に次第に意識が遠のくのを感じる。


 ヤバい……。

 

 この寝息は不味い、確実に駅を降り損ねてしまう。

 かといって気持ちよさそうに寝ている彼女を起こすのも、悪い気がするし……。

 本当に眠りにつきそうになる。


「ん……」


 眠りに誘われそうなのと同時に、彼女は眠りから覚める。

 紅羽が目が覚めたのか目をこすりながら僕から離れる。


「……ごめんね、肩、貸して貰っちゃって……」

「いや、いいよ」


 彼女の寝息が聞こえなくなり、少し目が冴える。

 どれだけASMRが強力なのかが、わかった。

 今度使おう。


 彼女は両手を上にあげ、少し膨らんだ双璧を強調するかのように背伸びをする。 

 

「ん~! それにしても私、寝ちゃうなんて」

「まぁ、疲れてたんでしょ」


 そういうと、彼女は眠そうな顔で僕の方を見る。


「ごめんね、私口開けたりしてなかったよね?」

「あ~えっと……開けてたかな……」


 正直、肩のあたりが少し生暖かい。


「え、ほんとに!? 口空いてた!?」


 僕の言葉に恥ずかしそうに口元を覆った。



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