昭和の初恋 令和を生きる君たちへ

まほろば

第1話 私の初恋

 皆さんは自分の初恋覚えていますか?


 私は初恋と言えるのかという初恋と、これが初恋と思える物の二つがあります。


 何、変な事言っているんだと思えるでしょうが、これが正直な私の初恋です。初恋って自分で認識してる事だけじゃないんです。また変な事言ってるぞこいつはと思うでしょ。でもそういう無意識の初恋もあるんです。


 無意識なのに初恋? おかしいですよね。でも実際に自分が年を取ってから認識する初恋もあるんです。


 人に思いを寄せることが初恋なら私の初恋は小学生の時ですが、そうではなくその人に会いたい、会って話がしたいと年を取ってから思う相手も初恋ではないかと思うのです。


 好きだ、愛しているという気持ち以外は恋とは認められないのか? 私は違うと思います。好きとか愛してるとかというのは心情、感情を表す言葉ですが、その言葉は後からついてくるものだと私は思っています。


 会いたい、一緒に居たい。これって好きだから、愛しているからそうしたいというのが普通の考えでしょうが、私は会いたい、一緒に居たいと思えるのが好きであり愛であると思うのです。


 ある意味コロンブスの卵の様な問答にも思えますが、実はこれが私の無意識の初恋に関係しているのです。


 その時は思ってもいなかったけど、いざ会えなくなった時や長年会っていなかったのに会えるチャンスが来た時に燃え上がる思い、これも初恋ではないかと私は思えるのです。


 初恋と認識していた相手でも、その恋は実を結ばず何十年と経ってから再会したことで、思いが蘇るなんて言う事も良くあることです。


 それと同じでその時は初恋の相手だとは認識していなかったのに、いざ再会するチャンスが巡って来た時に初めて会いたいと思える相手、それも初恋ではないでしょうか?


 私は小学校に上がる前に親の都合で関西から九州に引っ越ししました。その幼児期を過ごした関西で近所に住んでいた女の子が無意識の初恋の相手です。


 その子は近所の銭湯の娘さんでしたが、毎日のように保育園でも会い、夜には銭湯でも一緒でした。そんな関係だった二人が突然会えなくなったのです。当然幼児ですから好きだとか嫌いだとか言うぐらいの感情しかありませんが、私はその時そんな感情すらその子に抱いていませんでした。


 そんな私が年を取ってから、その子が初恋の相手だと思えたのは、中学生の時に再会するチャンスが巡って来た時です。


 引っ越してから実に8年ぶりに関西を訪れる事が決まった時、一番に頭に浮かんだのがその子に会いたいと思ったこと……。


 正直、私はその時その子の顔さえ思い出せなかったのです。それなのにその子に会いたいという思いは物凄く強かった。引っ越してから全く連絡も取っていなかったのにです。近所の男友達とは年賀状の交換位はしていたのにですよ。


 そこまで忘れていたというか、記憶にもほとんど残っていなかった女の子なのに、いざチャンスが巡ってきたら、それまで休火山のように静かだった感情が一気に活火山に成ってしまったのです。


 結果的には連絡を取り合っていた近所の男友達の協力のもと、その子には会う事が出来ましたが、会ったからと言って告白する訳でもないので、終始それまでの事や昔話をして別れました。


 その時の事を今思い出すとやはりこれも初恋なのではと思うのです。人によってはそんなの違うと言われると思いますが、私にとっての無意識の初恋はこの子です。


 皆さんにはそんな相手いませんか?


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 私にはもう一つの初恋があると言いましたよね。その子は今でも決して忘れられない女の子です。今では人の妻に成っていますが、私の実家の近くが彼女の職場なので帰省した時にはよく見かけます。


 この子が本当の初恋であり、人生で初めて交際した女の子でもあります。


 この子との思い出はラブコメ小説やドラマを自で行くようなことばかりでした。下駄箱に入っていたラブレター、校舎裏ではなかったですが、図書館の横のベンチでのデート。周りからの冷やかしで黒板に書かれた二人の名前が入った相合傘。


 彼女に思いを寄せていた他の男子から喧嘩を売られたこともありました。


 お互いの家はそう遠くは無かったのですが、通学路は違っていました。それなのに私は毎朝わざわざ遠回りをして、彼女と一緒に登校していました。


 昭和の時代の小学生にしては結構な行動力だったと思いますね。彼女の両親は二人とも教師という家でしたから、当時電話ですらするのに物凄い勇気がいりました。


 まぁ今のように携帯電話もない時代ですから、当然皆さんも同じような経験はされているでしょうが、親の仕事が教師というのは相当きついですよ。


 ちなみに彼女が私のキスまでは全て初の相手です。行事などのダンスで手を握ることを別にしたら彼女が初めて手を繋いで歩いた子ですし、肩を組んだり、腰に手を回したのも彼女が初でした。


 こんな事平成や令和の若者に言ったらあほ草と言われるでしょうが、昭和の時代ではこういうのが普通でした。


 中学や高校になれば、今では死語でしょうがA/B/Cなどという恋愛に関係する言葉も使うように成りましたね。


 手を握るのに、物凄い勇気をもって臨んだことありますか?


 肩に手を回すのにアニメなどであるようなベンチの後ろからゆっくりと手を回して行き、彼女に気づかれそうになったり、他人が通ったら思わず手を引っ込めて口笛を吹くような思いをしたことありますか?


 大人になってからの恋愛でも似たような事はあるかもしれませんが、子供の頃に経験するものとは違っていると思います。


 初恋ってやっぱりそういう意味でも忘れられない物です。


 私は年齢的にも死を身近に感じてきていて、持病もあるのでよりそういう事に敏感に成っているのかもしれませんが、今回初恋というテーマで何か書いてみようと思えたのはそれが切っ掛けです。


 私がもし死の直前に最後に何でも叶えてやると言われたら、まず間違いなく彼女に会いたいというでしょうね。




 その時は会ってくれるかな……。  久美子ちゃん








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