笑顔のない世界・フレームからはみ出た二人

@k0905f0905

第1話

近未来、政府の微笑み禁止条例が施工されて以来、人類からすべて笑顔が

消えてしまった。

 理由は生産性の減衰を防ぐためとだけ明言はされていた。

しかし、ケンジとリミアだけは

決して笑顔を忘れなかった。

「リミア、笑ってるか」

洞窟でケンジがリミアに

たずねた。

 ロウソクの炎だけが一本ともっている、

薄暗い洞穴だった。

「ええ、なんとか、でも今笑ってるから

微笑み探知機で探知されて、この場所も

探されるわ」

「大丈夫だ。いま、微笑み探知機遮断装置で

電波をブロックしてるから」

「有効期限は三時間なんでしょう?」

「そうだ、だからまた別の場所に

逃げなけりゃならない」

「そうね」

リミアが憂鬱そうに顔を伏せた。

「足のケガ、痛むのか」

リミアはここへ逃げてくる途中に

切株で躓いて、足に大怪我をしていた。

「どこか、遠いところへ行きましょう。

誰も追ってこない遠い所へ」

「そうだな」

ケンジも頻りに頷いた。

「立てるか、リミア」

「うん」

リミアがどうにか立ち上がった。

ケンジがリミアに肩を貸した。

「よし、行くぞ」

ケンジとリミアが洞窟の外に出た。

外は猛吹雪で嵐が吹き荒れていた。

「探しに行こう、ボクたちの笑顔を

受けいれてくれる場所を」

「うん」

リミアが努めて明るく返事をした。













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