第2話絆を深める日々
現在、夏休みと言うことで僕に出来た新しい家族と一緒に過ごす時間はかなり多かった。
眠気眼で階下に下りて父親の作る手料理をいただこうと期待していると…。
リビングには三姉妹が当たり前のように存在している。
僕は明らかに寝ぼけていて彼女らと同居することを失念していたのだ。
「おはよう。顔洗ってきたら?」
長女の岬が僕に微笑んで小首をかしげてきてぎこちない態度で頷く。
洗面所に向かって顔を洗うとついでに歯も磨いた。
寝癖を軽く直すとリビングに再度顔を出した。
「おはよう。二人共仕事に向かったよ。朝食は私達が作ったんだけど…食べてくれる?」
次女の成海が僕に伺うような言葉を口にするのでそれに一つ頷いて感謝を口にする。
「ありがとう…」
照れくさくて俯き加減に感謝を口にすると三女の港はクスっと笑う。
「急にお姉ちゃん達と姉弟になったら誰だって困るよね」
港は自分の美貌に気付いていないのか僕は思わず口を開く。
「港ちゃんも何だけどね…」
「え?私?私にも緊張してくれるの?嬉しいなぁ〜♡」
小悪魔的な笑みを向けてくる港に僕は視線を彷徨わせて椅子に腰掛けた。
「まぁそんなに緊張しないでよ。もう私達は姉弟でしょ?」
成海は朝食をテーブルに運んでくると軽く僕の肩に触れる。
ドキリと心臓が跳ね上がったような気がしたが鼻息を荒くしないように不自然に呼吸をすると深く頷いた。
「いただきます」
「お口に合えばいいけど」
岬はそんな言葉を残すと僕の食べている姿をまじまじと眺めていた。
緊張感が漂う中で朝食に手を付けると素直に感想を口にする。
「美味しいです」
「良かった。いっぱい食べてね?♡」
それに頷くと彼女らの期待に応えるように僕は食事を進めていくのであった。
朝食を終えて食器を洗っていると彼女らはリビングで仲良さそうに話をしていた。
僕はすぐにでも友人に神崎三姉妹が兄妹になったことを伝えたかったがもう少しだけ思考していた。
こんな羨ましい展開を伝えてしまったら彼らは嫉妬に狂って僕に暴力を振るうかもしれない。
そんなもしものことを考えて頭を振る。
口にするのはやめておこうと結論づけると食器をしっかりと洗って乾かしておく。
手をタオルで拭くと自室に向かおうと歩き出すと彼女らに引き止められてしまう。
「あれ?部屋に戻るの?ここでお話しようよ」
岬に引き止められて港が僕の元までやってくると腕をぎゅっと抱きしめた。
「お兄ちゃんの話を聞かせて?♡」
そんな甘えた態度で接近してくる彼女らに僕は言葉に詰まってしまうのだが、どうにかリビングのソファへと向かう。
そこから僕ら姉弟は両親が帰ってくるまで四人で過ごすのであった。
少しずつ距離が近付いてくる僕ら四兄妹の絆を深める日々は続こうとしていた。
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