ある日、街で有名な美人三姉妹が突然義理の兄妹になった。ぎこちなくも徐々に関係が進んでいく僕ら四兄妹の話

ALC

第1話父親の再婚を期に訪れた三姉妹

「父さん…再婚することにしたから」

ある日の夕食のこと。

父親の唐突な告白に僕は箸で挟んでいたとんかつの欠片をぽとっと茶碗の上に落とした。

「え?そうなんだ…良い人いたんだね」

「あぁ。同級生でな。昔から特別仲が良かったんだ。でもそれぞれに恋人がいて…結局結ばれることはなかったんだが…先月同窓会があっただろ?その時に再会して。お互いに離婚してシングルで子供を育てているって話から盛り上がってな。再婚する流れになったんだ。良いよな?」

父親は少しだけ惚気けるような話をすると照れくさそうに後頭部のあたりを手で掻いていた。

「構わないよ。父さんも幸せになったら良いよ」

「今でも幸せだけどな。それは勘違いしないでくれ」

「勘違いしてないよ。良い人がいたなら良かったよ」

「あぁ…それで何だが…相手の連れ子は三人居るんだ。しかも三姉妹」

三姉妹という響きを耳にして僕は少なからずドキリと胸が高鳴った。

「ごめんだけど…相手の名字って神崎かみさきって言わない?」

「ん?よく分かったな。何でだ?」

「いや。ここら辺で三姉妹って言ったら…神崎三姉妹しか思いつかないよ」

「ほぉ〜。そんなに有名な姉妹なのか?」

「そうだよ。美人三姉妹で有名なんだ…困ったな…」

「何で困ることあるんだよ。普通に仲良くしたら良い」

「それが出来ないから思春期なんだよ」

「あぁ。そうか。紅郎くろうは思春期だったな。まぁ良い機会だ。女性と普通に話せるようになったほうが成人してから助かるぞ」

「はぁ…そうだね。わかったよ」

そうして僕ら親子は夕食の続きを始めると食事が終わったら食器を洗ってそれぞれの時間を過ごすのであった。



そして後日。

その日はやってくる。

神崎家の面々は僕と父親の住む家へと越してくる。

「佐伯くん。今日から私達家族をよろしくね」

神崎家の母親は僕の父親に深く頭を下げている。

それに倣うように三姉妹も頭を下げていた。

「紹介するよ。息子の紅郎。ほら。挨拶しな」

父親に促されて僕は彼女らに向けて挨拶をする。

「高校二年生の佐伯紅郎です。今日からよろしくお願いします」

「ご丁寧にどうも。今日から母親になります海子うみこです。娘が三人います。一人ずつ紹介しなさい」

神崎家の母親は僕に挨拶をすると長女が先んじて挨拶をしてくる。

「長女のみさきです。大学二年生です。ここでも長女になるので頼ってくれたら嬉しいです。よろしくね?」

「次女の成海なるみです。高校三年生で受験を控えていますが。志望校にA判定をもらっているので余裕はあります。困ったらお姉ちゃんに頼って欲しいです。よろしく」

「三女のみなとです。高校一年生です。私が末っ子ですが…お姉ちゃんたちとの橋渡しは私も協力します。出来れば仲良くしましょう」

各々が殆ど僕に向けて挨拶をするとそれぞれに頭を下げた。

「玄関先で喋る話でもないな。荷物も運ぶだろうし。紅郎も手伝いなさい」

父親に諭されて僕は彼女らの荷物を運び出していた。

ダンボールをいくつも運んでいくとペンで書いてある文字を見て僕は顔を赤くすることになる。

「下着類1」

その文字を見て僕は不自然なほどに顔を背けるとそれを見ていた彼女らに誂われてしまう。

「そんなに意識しないで大丈夫よ。これから一緒のお風呂を使うし一緒の洗濯機で洗うわけでしょ?いくらでも実物を見られてしまう機会はあるんだから。私達だってそんなことはもう覚悟しているわよ。大丈夫」

「意識しすぎよ。下着なんて見られたって大したことないから」

「お兄ちゃん。気にしないで。私達は大丈夫だから」

三姉妹はそれぞれ僕に言葉を投げかけるのだが…。

僕は気まずくてもじもじとした態度で軽く頷くだけだった。



今日から僕には新しい家族が出来て、いつの日か佐伯四兄妹としてこの街で一番のラッキーボーイと噂されるようになる。

だがそれはまだ先のお話。

僕はまだ彼女らに自然体で接することは出来ない。

徐々に変化していく僕ら兄妹の関係。

今後どの様に転がっていくのか…。

それはまだ誰にもわからないのであった。

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