間章 作戦経過及び戦況解説

 ――<UN-E>上級職員向け作戦開始前ブリーフィング資料より抜粋。





 ・<タイタニア型>出現予想より現在までの作戦経過のタイムライン


  ・<タイタニア型>出現予想時刻より一週間前

   「総司令官直属特務実証部隊」所属の「天音雨衣一等兵」の持ち帰った情報により<タイタニア型>のJ-51地区出現予測が立つ。解析作業開始。



 ・<タイタニア型>出現予想時刻より五日前

  持ち帰られた情報の解析、並びに近辺<N-ELHH>の動向の解析より、具体的な出現予想時刻、出現予想ポイントが特定。


  時刻は情報提供時より一週間後の作戦時刻一二:四〇ヒトフタヨンマル、ポイントはJ-51地区の北西に位置する沿岸部の湾部分であると特定された。

  

  対<タイタニア型>臨時作戦本部設立。地区南方に位置するJ-51地区基地の一室に設置された。


  <UN-E>総司令官奏栞を筆頭とした<UN-E>司令部の一部、J-51地区基地に移動。

  奏栞、作戦本部長着任。

  基地指揮権がJ-51地区基地司令である有田中佐より、<UN-E>総司令官並びに作戦本部長である奏栞に移譲。この作戦行動の終結宣言が発令されるまでの間、J-51地区基地にまつわる権限は奏栞が保持することとなる。


  これより後、J地区の各基地より、兵士、整備兵、オペレーター、兵器等の戦力の作戦本部搬入が継続的に実行された。


 ・<タイタニア型>出現予想時刻より三日前。

  作戦本部により『<タイタニア型>討滅並びにJ-51地区奪還作戦』の草案、当時のコードネーム<オペレーション・フラッグ>が立案される。

  しかしこの作戦内容は未だ不十分であるとしてこの時点では一般兵士向けに発表されなかった。


  だが<オペレーション・フラッグ>の内容は未だ破棄には至らず、現行作戦の<オペレーション・レイズドフラッグ>の実行が難しい、不可能であると判断された場合、簡易版であるこちらに作戦が変更される可能性がある事に充分留意されたし。


 ・<タイタニア型>出現予想時刻より二日前

  NT-67タンク部隊並びに随伴部隊が行動開始。

  出現予想ポイントである臨海部の湾を半円状に包囲する様に陣地形成を行った。随伴部隊内の工兵が<N-ELHH>支配圏とタンク部隊の陣地とを隔てる為のバリケードを作成。以降タンク部隊並びに随伴部隊には待機が命令された。


  <ロンギヌス>級戦艦、<UN-E>司令本部より対<タイタニア型>臨時作戦本部へと受領。メンテナンスと燃料補給開始。

  民間人の避難開始。


 ・<タイタニア型>出現予測時刻より一日前

  作戦地区内<N-ELHH>の活性化を確認。ここから約五時間程度をかけて作戦地区内の<N-ELHH>が集結し、徐々に支配圏の形成が行われるのが確認された。

  最終的にはバリケードで隔てられたタンク部隊を取り囲むかのような形状として支配権が形成されることとなる。


  作戦立案が完了。現行作戦である「<タイタニア型>討滅並びにJ-51地区奪還作戦」、<オペレーション・レイズドフラッグ>が当日を以て発令され、作戦書が開封された。


  作戦に向けての人員整理並び部隊割完了。全兵員の装備受領並びに整備完了。これを以て総員の即時スクランブルが可能となった。


  以降、J-51地区基地は非常警戒体制に移行、それぞれオペレーターが交代しつつ戦場に動きがないか監視する事となった。



 ・<タイタニア型>出現予想時刻より〇日前(本日)

  100mを越える<N-ELHH>の接近反応を基地よりNW方向120km先の海上よりレーダー探知。敵影の撮影には失敗し敵種特定には至らなかったものの、その大きさより恐らく<タイタニア型>であると想定される。


  <ロンギヌス>級戦艦、出港。


  J-51地区の地区境界線に兵員を配置。J-51地区外に<N-ELHH>が漏れないよう封鎖を開始した。


  基地よりNW方向90km先の海上に<タイタニア型>の敵影を補足。敵種が<タイタニア型>であることと、さらに基地方向への接近が行われている事を確認した。

  進行速度が維持されると仮定するとポイント到達時刻は作戦時刻一二:五五ヒトフタゴーゴーとなる。一週間前の予想時刻とほぼ相違なし。


  戦局に重大なる想定外無しとして、<UN-E>総司令官並びに作戦本部長奏栞の下で『<タイタニア型>討滅並びにJ-51地区奪回作戦』、コードネーム<オペレーション・レイズドフラッグ>の実行が承認された。


  これを以て非常警戒態勢より総員第一種戦闘配置に移行。


  ポイントより<タイタニア型>の出現が確認されると同時に、順次出撃。各ランディングポイントに降着し、各自の作戦行動開始。


    ◆


 ――<UN-E>一般前線兵士向け作戦開始前ブリーフィング資料より抜粋。


 ・J-51地区の現状の解説


 前述の通り、NT-67タンク部隊が北東部にある<タイタニア型>の出現予想ポイントを直径100mの半円状に包囲している。

 その包囲陣の境界線上に実体と非実体、どちらにも対応出来るバリケードを展開し、陣地内への<N-ELHH>の侵入を阻止している。

 そしてそのバリケードを境として<N-ELHH>支配域がこれもまた半径1kmの半円状に展開され、タンク部隊を包囲している。

 これが今回の作戦の主目的である<タイタニア型>を取り巻く現状である。


 また、今現在作戦地区に到達していないが、出現予想ポイントの更に北の海域に<ロンギヌス>級戦艦を配置する。

 これによって<タイタニア型>の正面よりNT-67タンク部隊による砲撃、背面より<ロンギヌス>級戦艦の主砲一斉射という戦術兵器二種による挟撃体制を取り、出現とほぼ同時に<タイタニア型>に侵攻不可能となるレベルの大ダメージを与える。

 これが作戦第一波である。


 そして、<N-ELHH>支配域の外端より南方向に350m以上離れた各所にランディングポイントを設定する。

 兵士諸君は部隊ごとにこの各所のランディングポイントより降下、そこから<タイタニア型>に向かって進軍、支配域を制圧ないしは突破してもらう。


 そして、初手の挟撃で弱った<タイタニア型>をタンク部隊、<ロンギヌス>級戦艦、兵士諸君の三面的な総攻撃で討滅する、というのが今回の作戦目標となる。


 プランB以降の二次作戦想定の物もあるが、それは都度都度本部より司令を出すため、この資料では記述しないこととする。


 また、防衛に関してであるが、野戦病院、前線装備科などの補給にまつわる設備はランディングポイントが点在するエリアの3.5kmほど後方に設置している。

 ここを突破されてしまうと補給を潰されてしまい、作戦続行は限りなく不可能に近くなる。

 よって、補給設備群から500m北に最終防衛ラインを敷く。


 また、エリア南西部、補給設備群から真西に2.5kmに森林地帯がある。これが格別作戦に関わるというわけでは無いのだが、視界不良故に<N-ELHH>が紛れ込んでいても発見が遅れる可能性もある、一応留意されたし。


 そして、それらの南方2kmに対<タイタニア型>臨時作戦本部であるJ-51地区基地が存在する。

 言うなればここが本陣であるため、ここの陥落というのが当作戦行動における最悪の結末と言えるだろう。


 以上が、J-51地区の戦闘区域の現状である。

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