2:君は?

いまだ怒号の飛び交う大通りとは対照的に、裏路地はやけに静かだった。


そして目の前には跪く女。


このバカげた状況を夢ですますには、先ほどのの恐怖があまりに鮮明で、


これがまぎれもなく現実であると分からされた。


「…きみは?」


緊張のせいか少し震えた声で聞く。


女は跪いたまま答える


「あなたの従者だよ」


「従者って…」


「従者は従者だよ」


「…」


会話になっていない。いきなり引っ張られて裏路地につれてこられた挙句、


説明もなくひざまずかれているのだ。というか跪くなら敬語使えよ。


…いや、ここまで連れてこられたことは感謝すべきだろう。


彼女が助けてくれなければあそこで焼け焦げた肉片になっていただろうから。


「えっと、従者かどうかは置いといて、とにかく助けてくれてありがとう。」


「従者なんだから当然でしょ。ていうかそろそろ立っていい?膝痛いんだけど」


なんだこいつ。自分で跪いたくせに…


女はこちらの無言を肯定と捉えたのか、膝のほこりをはたきながら立ち上がった。


「じゃ、改めて自己紹介するね。あたしアーシャ。あんたの従者だよ。」


そういうとアーシャはこちらをじろじろ見てきた。あ、こいつため息ついた。


「あんた…勇者の割には貧相過ぎない?こんなんじゃ魔王もなにもそこら辺の下級魔物にも負けるよ」


「いや、まずこの状況を説明してくれ…。こちとらいきなりこんなとこに飛ばされて来たんだから。」


「は?あんた勇者じゃないの?なんでなにも知らないのよ」


「まず勇者って、どーゆーことだよ。」


「あんた「こんなところにいたのか!!」


アーシャの背後から声が聞こえた。


「くそっ馬鹿に見つかった…」


アーシャはうんざりした顔で、腕をつかんできた。


「ほら、さっさと逃げるよ」







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