窓をあければ銀河が吹き込んだ

「窓をあければ銀河が吹き込んだ」



 


強いひとが偉いというわけじゃないのに

どうして強くなくちゃならないのだろう

宇宙の果てにかいなを伸ばす


乗り込んだ銀河鉄道は満席だった

隣に座ったひとと話をした

けっこう気があった

楽しかった たくさん話した

でも次の駅で乗ってきた奴らの顔をみて

隣のひとは顔色を変えた

すぐに口笛で呼ばれて、

一度だけわたしの方を見てから席を立った

わたしは胸がぞわぞわしていた


凛々しいひとが偉いわけじゃないのに

どうして凛々しくなければならないのだろう

星の熱をおよびでとらえる


降りれば二度と乗れない片道列車

銀河鉄道は光の駅を目指してる

「大事な物がないんだ」

隣の席のひとが、小さな声で呟いた

例の連中はそのひとの顔をみてにやついていた

「大事な物、忘れて来ちゃった」

「しっかり探したのかい」

わたしが尋ねると、鞄を確認することもなく

「忘れてきたんだ、忘れてきたんだ」

とそのひとは言う

(忘れてきたんじゃない、奪われたのだろう)

(あいつらに強奪されたのだろう)

わたしはそう言いたかった、

車掌さんに言ってこらしめてもらおうと言いたかった

でも言えなかった、怖かったからだ

「取りに戻る。次の駅で降りるよ」

降りれば二度と乗れない片道列車

もう二度と誰にも会えなくなるし

行き先に何があるのかも確かめられないし

光の駅では、いつか出会うあなたの愛情の相手や

いつか出会うあなたの子供やあなたの子孫もお待ちかねなのに

「でも大事な物をなくしたのだから、取りに戻らないとこの先やっていけない」

さようなら

さようなら


強いひとが偉いわけじゃないのに

どうして強くなくちゃならないのだろう

宇宙の果てにかいなを伸ばす

凛々しいひとが偉いわけじゃないのに

どうして凛々しくなければならないのだろう

星の熱をおよびでとらえる


窓をあければ銀河が吹き込んだ


気安めで過ごせば矛盾に気づかぬままだろう

なりゆきで過ごせば憤りを知らぬままだろう


 


 

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詩集/双子座流星群 アズマ60 @under60

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