詩集/双子座流星群

アズマ60

双子座流星群

 「双子座流星群」



わたしを束ねないでという詩を読んだ、

はじめてまともに教科書を読んだ

その隣で谷川俊太郎は生きるということを並べていた

あのときわたしは心を入れ替えればよかった

あのとき


わたしの黄色い髪はカールが過ぎて

長いスカートはいつも香ばしい、煙草の臭いがした

漆黒の地毛が伸びる頃には冷蔵庫から盗んだビールで髪を濯いだ

冬ははやく陽が落ちるから、行き場所はいつも本屋の前の自販機だった

流れ星は何ひとつ、わたしのことなど見ていてはくださらなかった


いつか気持ちが届きますようにと書いた日記には

おもちゃの南京錠がついていて

初恋のひとに鍵をわたした

終わったことの証には手首にやいばで印をつけた

ルララルラ

それでも晴れた夜には星を見上げてしまうじゃない

ルラルララ

冬の双子座 カストルがたまに墜ちれば

残されたポルックスは後を追う

流れ流れて十二月


「なるようになれ」と自堕落に生きれば

その行く末はしょせん「なれの果て」でございましょう


ルラリララ

でも誰もわたしにそんなこと教えてくれなかったじゃない

何処まで引き返しても

いまやわたしはわたしにたどり着くしかないじゃない

冬の双子座流星群

冬の双子座流星群

墜ちた星の行方を誰が知るものか


流れ星は何ひとつ、わたしのことなど見ていてはくださらなかった

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