こっちだって黙っていません

「何が八つ当たりだ!とにかく僕は今まで、君を甘やかしすぎた。君に嫌われたくなくて色々と大目に見て来たけれど、今回の件は見逃せない!ヴィクトリアが何を言おうが、3日間は我慢してもらうからね」


何が今まで甘やかしすぎたよ!その割には“勝手に森に行ってはいけない”“勝手に領地に行ってはいけない”とか言って、私を縛り付けて来たじゃない。こうなったらこっちだって、徹底的に戦ってやるわ。


馬車が停まるや否や、さっさと馬車から降り、1人で自室へと向かった。


「お嬢様、お帰りなさいませ。あら?怒っていらっしゃるのですか?何かありましたか?」


クロハが心配そうに、私の元にやって来た。


「別に何もないわ。それよりも私、気分が悪いの。今日はお部屋で昼食を頂くわ」


「…承知いたしました。すぐに準備をいたします」


どうやら私の殺気を察知したのか、クロハが特に文句を言わずに部屋から出て行った。ちなみに今日は入学式だけだったため、クロハは留守番していたが、明日からはクロハも私のお手伝いの為、学院に一緒に来ることになっている。


クロハが昼食を準備している間に、他のメイドたちが着替えさせてくれた。


「お嬢様、お待たせいたしました。どうぞ」


クロハ含め、メイドたちが美味しいお料理を準備してくれた。こちらは腹ペコだ。早速王宮の美味しいお料理を頂いていく。そして…


「今日のデザートの、シフォンケーキでございます」


「クロハ、どうしてスイートポテトではないの?私はスイートポテトが食べたいの。すぐに準備して頂戴」


何事もなかったかのように、クロハにスイートポテトを催促したのだが…


「お嬢様、今日の件、殿下から全て伺いました。あなた様は一体、何を考えているのですか?入学式をサボっただけでなく、殿下を陥れるだなんて。その上、他国の王太子殿下と2人きりで密会していたそうではありませんか!」


「ちょっと、密会とは失礼ね。少し話をしただけよ。それなのにあの男が、醜い嫉妬心を露わにして!本当に腹が立つわ。とにかく私は悪くないのだから、すぐにスイートポテトを準備して頂戴」


「いけません!3日間はスイートポテトもクリー様に乗るのも、禁止だそうです。分かりましたね」


クロハめ、すっかりディーノ様の言いなりになって。そもそも、クロハの主人は私なのに!


腹が立って仕方ないが、シフォンケーキには罪はないので、美味しく頂いた。


それにしてもディーノ様め。腹が立つわ!一体どうしてくれよう!


その時だった。


「ヴィクトリア様、王妃殿下がお呼びです」


「まあ、王妃様が?すぐに行くわね」


王妃様は、常に私の味方なのだ。今回の件、王妃様に報告してやろう。そう思い、王妃様の待つお部屋へと向かう。


すると


「ヴィクトリアちゃん、ディーノがごめんなさいね。あの子の醜い嫉妬心から、あなたに酷い事を言ったそうね。可哀そうに、さあ、好きなだけスイートポテトをお食べなさい」


私の姿を見ると、飛んできてくれた王妃様。その上、沢山のスイートポテトを準備してくれたのだ。さすが王妃様だわ。


「ありがとうございます!王妃様。やはり私の一番の理解者は、王妃様ですわ」


早速王妃様が準備してくれたスイートポテトを、食べようとした時だった。


「母上、ヴィクトリアを甘やかすのはお止めくださいと、言いましたよね?」


ディーノ様が大量のスイートポテトを奪い取ると、そのまま使用人に渡してしまったのだ。


「ディーノ様、それは私のスイートポテトですよ。お返しください」


「そうよ、ディーノ。それは私が、ヴィクトリアちゃんの為に準備したスイートポテトなのよ。ヴィクトリアちゃんはスイートポテトが大好きなの、取り上げたら可哀そうよ」


王妃様も私の味方をしてくれた。そうよ、あれは私のスイートポテトよ。すぐに取り返さないと!


ものすごいスピードで使用人の元に向かい、そのままスイートポテトを取り返そうとしたのだが…


「そうはさせないよ。すぐにそのスイートポテトを持って行ってくれ」


「はい、かしこまりました」


間一髪のところで、ディーノ様に邪魔されたのだ。何なのよ、この男は!


「ディーノ様、私に恨みでもあるのですか?どうしてそんな酷い事をするのですか?」


「僕は何も酷い事はしていないよ。とにかく3日間は、スイートポテトは与えないからね。母上も隠れてヴィクトリアにスイートポテトを与えようとしても、無駄ですから。いいですね。ほら、ヴィクトリア、行くよ」


ディーノ様に腕を掴まれ、そのまま王妃様の部屋から連れ出されたのだった。

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