第36話 色々と仕掛けてきますね
私のスープに毒が入っていた事件から1ヶ月が過ぎた。どうやら犯人は諦めが悪いのか、あの後も3回ほど私の食事に毒を入れるという悪事を働いた。
ただ、何度毒を入れられても私にはすぐにわかるのだ。そのたびに食事を残さないといけないから、勘弁して欲しい。
さらに我が家を陥れようと、不正を働いたと見せかける書類をお父様の書斎に隠そうとした執事が、現行犯逮捕された。
多分犯人は、私をお妃候補から引きずりおろしたいと考える人物。という事は、もしかすると我が家にも危害を加えるかもしれないと思い、両親には新しい使用人を雇わない事。さらに部屋中に監視用の撮影機を設置する様に依頼をしたのだ。
王妃様も協力的で、王妃様が絶大な信頼を寄せている護衛たちを、我が侯爵家に派遣してくださっている。そのお陰で、我が侯爵家に不法侵入をしようとした不届き者も侵入する前に捕獲された。
本当に飽きずに色々とやって来るわね。お妃候補者が決まるまで、後1ヶ月。相手も相当焦っているのだろう。ただ、どうして私を狙うのかしら?お妃は、既にマーリン様に決まっているというのに…
まあ、どんな理由があろうと、私に喧嘩を売って来た以上、買うしかないのだけれどね。
「ヴィクトリア、何を考えているのだい?またろくでもない事を考えているのではないよね」
「私が何を考えていようと、殿下には関係ありませんわ。それよりも、最近距離が近くありませんか?」
そう、あの事件以来、殿下は今まで以上に私の周りをウロウロとしている。距離感も近くなり、いつも私にベッタリくっ付いていて鬱陶しい事この上ない。
さらにこの男、なぜか私を守ると宣言し、色々と先回りをして私の邪魔をするのだ。そもそも私は、殿下に守ってもらわなくても自分で何とか出来るのに!
ジト目で殿下を睨みつけた。
「そんな可愛い顔で睨まれても全然怖くないよ。何か気に入らない事でもあったのかい?僕に何でも言ってごらん」
「でしたら殿下が毎日毎日ベッタリとくっ付いているのが目障りでたまりません。それから、私は自分の身くらい自分で守る事が出来ます。これ以上邪魔しないで下さい」
この際なので、はっきり言ってやった。
「酷いな、僕はヴィクトリアの事が心配で傍にいるのに…ヴィクトリアが笑っていてくれたら、それだけで幸せなんだよ」
何が私が笑っていてくれたら幸せよ!ん?それなら…
「でしたら自由にクリーに乗れる様にしてください。それから自由に森にも行きたいですわ。あそこの木の実、とても美味しいですし。それでは早速森に行って参ります」
「待って、ヴィクトリア。それなら僕も行くよ」
「私は1人で行きたいのです!」
「酷いなぁ。すぐにそうやって僕を虐めて。もしかして僕を虐めて楽しんでいるのかい?」
何をどうしたらそんな発想になるのだろう…本当に面倒な男だ。
「ヴィクトリア、後1ヶ月の辛抱だよ。少し不自由な生活を強いって本当にすまない。だから、どうかあと少し、我慢してくれ」
急に真剣な表情になったと思ったら、殿下がそんな事を言い出したのだ。後1ヶ月か…後1ヶ月もすれば、殿下はマーリン様と…
そうなれば確かに私は自由よね。
その瞬間、チクリと胸を刺すような痛みを感じた。何よ、この痛みは!たとえマーリン様と殿下が結ばれることが決まっているからと言って、このまま諦める訳にはいかないわ。何が何でも黒幕を捕まえて、ギャフンと言わせてやるのだから。そうしないと、私の気が済まない。
私がお妃候補の任務を解かれ、はいさよならだなんて絶対にさせない。その為にも…
チラリと殿下の方を見た。
「殿下、1つお願いがあるのですが、聞いていただけますか?」
「僕に出来る事なら何でも聞いてあげるよ。一体何だい?」
「それはですね…」
殿下の耳元でそっと呟いた。
最初は反対していた殿下だったが、しぶしぶ納得した様だ。
いつまでもやられっぱなしではたまらない、そろそろ勝負をかけるとしましょうか。
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