第17話『Side A』④
嫌な予感というのは当たるもので、あっきーの作戦も見事に失敗に終わった。
しかもかなり悪手だったようで美那さんが状況報告の為、慌てて連絡をしてきてくれた。
3人で話した結果、余計な立ち回りはせず暫くは大人しくしておこうと今後の方針を決めた。
そのまま何の進展もなく……私は一言も会話を交わす事もなく週末を迎える。
授業も終わり、大介君の迎えを頼まれているあっきーが一緒に保育園に行こうと優希君を誘った。
あっきーは私の為になりふり構わず誘ってくれたのだが、そのせいで告白とか周りが好き勝手に騒いでいる。それを聞いて申し訳ない気持ちになった。
話す内容は教えてもらえなかったので、何を話すのかは気になった。
その内容を私が知るのは、あっきーが帰宅して連絡をくれた時だった。
私が痴漢から助けてもらった事、他の男の子と遊びになんて行ってなかった事、協力者が自分と美那さんだった事……全部話したと……。
勝手に助けられた件を話した事について何度も謝られたが、このまま事実を話さなければ関係修復は無理だと判断しての行動だったと言われたら、何も言えない。
最善は尽くしたが、遅かったかもしれない……本当にごめんなさいと言われた時、私の中で何かが崩れていく音がした。
夕食の支度が終わったからとママが部屋に呼びに来てくれるまで、私はどうやって過ごしていたか覚えていない。
その日の夕食は皮肉にもオムライスだった……あの日を思い出してしまい更に気持ちが沈んだ。
憂鬱な気分が晴れないままお風呂を済ませ、今日は早く寝てしまおうと考えていた時、思いもよらぬ人からの着信があった。
スマホの画面には『嶺田優希』
私は慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし……嶺田です。こんな時間に突然ごめん。今少しだけ話をする事ってできる?」
話し方から緊張している様子が見受けられた。
「うんっ!!出来るよっ!!」
「そっ、そうか……。ありがとう」
勢い良く言ってしまったせいで、引かれたりしてないだろうかと不安になる。
「少しは事情を話したとは思うけど、一方的に拒絶する様な言い方をして悪かったと思ってる」
「う、うん……」
そんな事ないよって言ってあげれたら本当はいいのだけど、私はそこまで大人じゃない。
曖昧な相槌を返すだけで精一杯だった。
「今更かもしれないけど、包み隠さずちゃんと話そうと覚悟を決めたんだ。その結果、志岐さんが距離を置くならそれでいいとも思ってる。嫌な気持ちにさせるけど、もしも聞いてくれると言うなら今度こそは全部話したいと思う」
「うん、話してくれるなら……私は全部教えて欲しいと思ってるよ」
今この時を逃したら、私は優希君と完全に決別すると直感的に思った。だから私は即答で返事をした。
「そっか……分かった。美織の面倒を見てもらう必要があるから、美那さんのいる日曜日でお願いしたい。今日の明日は流石に急過ぎるだろうから1週間後の日曜日はどうだろう?」
「大丈夫、絶対に行くよ」
「それともし良かったら鈴木さんにも声をかけておいてくれ。無理に聞いてほしい訳じゃないし、嫌な気持ちにさせる事は間違いないから、そこを説明した上で来るかどうかは決めて欲しいと伝えてもらえるか?」
「うん、頼まれたよ。直ぐに連絡するから、確認取れたら報告するね」
用件だけ言い終わると、優希くんは直ぐに電話を切った。
予定を確認しようと私は急いであっきーに電話をかけようとスマホに手を伸ばす。
手をかけた瞬間、スマホが鳴った。美那さんからの着信だった。
「時間を置いたら、優希の本心が聞けないかもしれない。だから内緒で明日来れないかな?聖音ちゃんが来れそうになくても亜依ちゃんだけでもいいから」
幸い私も明日は予定が入ってなかったので即答で『行く』と返事をした。
遠くなってしまった優希君との距離を一刻も早く埋めたい……それだけが私の心を後押ししていた。
あっきーに、優希君からの電話の内容を伝えると明日一緒に行ってくれるとの事だった。
知り合ってから間もないけど、私はかけがえのない友人と巡り会ったと思ってる。
この先もしこの友人が助けを求める日が来たら、今度は私が精一杯支えたいと思う。
だけど、あっきーの恋愛の駆け引きに関する助言だけは信じないでおこうと固く心に誓った。
私は明日何を聞いても怯んだりしない。優希君が打ち明ける事をしっかりと受け止めてみせる。
そして私はこの恋を必ずものにしてみせるんだ!!私は決意を新たにした。
「それで、何で2人が来てるんだ?」
優希君の声がいつもの3倍増しで低くて重い……。向けられるジト目が痛いほど突き刺さる。
つい怯んでしまったのは、この際ノーカウントだと思うんだよね。だって凄く睨むんだよ?こんなの怖いに決まってるよ……。
そして私は昨日に続き決意を新たにする。美那さんの言う事も鵜呑みにしないと、固く心に誓った……。
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