第7話叔母への相談

美織が寝たのを確認して、リビングに戻る。

美那さんに相談したい事があったからだ。


「美那さん、ちょっといい?」

「いいわよ、どうしたの?」


俺は美織が友達から家に招待された事、その友達が俺のクラスメイトの弟である事を伝えた。

異性という事もあり、もしも遊びに行くなら美織が懐いているクラスメイトも一緒に来てくれる旨も補足する。


「なるほどね……噂の大介君・・・・・からのお誘いか」

「美那さん、顔気をつけて。眉間に皺が寄ってる」


美織大好きの美那さんは予想通りの反応。

皺を指摘されて苦笑いを浮かべている。


「それで優希はどうしたいの?」

「俺としては正直な話、断りたいと思っている」

「美織に納得してもらえそう?」

「多分難しいと思う。クラスメイトが美織を気に入ってて、美織も満更じゃないから……」

「うーん、これも良い機会なのかもしれないわね」


美那さんは、複雑そうな表情かおをしているものの、否定的な反応ではない。


自惚れてるみたいで言いたくはなかったが、その協力してくれるクラスメイトが俺に好意を持っている事も伝えた。

それを聞いた途端、美那さんの眉間に先程よりも深い皺が刻まれた。


「美織が可哀想ではあるけど、優希の負担になる様ならお断りするべきだと思うわ」


事情を知った美那さんが前言撤回とばかりに意見を覆したと思ったが、それは勘違いだった。


「そうだよな、お断りし「でも、もしも優希が踏み出してみようと思うなら協力するわ」」


俺が最後まで言い切る前に、美那さんからの思いも寄らぬ提案。

どうやら否定的ではないらしい……。


「でも、心配だから……日曜日は私も仕事が休みだから、逆にウチに連れてきたらどう?」

「ウチにか……」

「確認だけど、その子達は優希の事情はどこまで知ってるのかしら?」


流石に自分から積極的に親が居ない事を伝えるほど馬鹿じゃない。


「親が居ない事は言ってない。だからウチに呼ぶなら話さないといけなくなると思う」

「そう……。優希は嫌かもしれないけど、私としては事情を知ってくれる人があなたの周りにいると安心出来るかな」


おそらく中学時代の事を思い出しての発言なのだろう。


俺が体調を崩した日、美那さんがどうしても仕事を休めない事が一度だけあった。

美織は保育園に預けて問題なかったのだが、その日の夜に病状が悪化した俺は急遽病院で診てもらうことになったのだ。

結局大した事はなかったのだが、その日の事を今でも気にしているのだろう。


「分かった、その条件で返事してみるよ。美那さんありがとう」

「ごめんね、優希に無理させちゃって……」

「そんな事ないよ、明日も学校だからそろそろ寝るね。おやすみ」

「ええ、おやすみなさい」


力なく笑う美那さんに申し訳ない気持ちになる。

俺がしっかりしないと……中学時代の様にならないと心に誓いながらベッドに潜り込んだ。




翌日の朝、既に登校していた2人に昨夜考えた提案をした。

美織と遊べる事を喜んでくれて、場所はどこでも構わないとの事だった。


「えっと……何か持って行った方がいいよね?」

「亜依、それ嶺田君の前で言う事じゃないよ。それ聞いたら『気にするな』しか言えないじゃん」

「あ……」


俺は苦笑を浮かべながら、手ぶら・・・で来てくれとだけ伝えた。

あまり周りに聞かれたくないという俺の気持ちが伝わったのか、それ以上2人がこの件に触れる事はなかった。


帰り際に鈴木さんから、今日は迎えがないから大介君には帰ったら伝えておくと言われた。

志岐さんは、日曜日楽しみにしていると……。


急な変更があった時に連絡が取れないと不便だからと、メッセージアプリのIDを交換して美織を迎えに教室を出た。



その日の夜、志岐さんから日曜日とは関係のない事で連絡がきた。

それに気づいた美織が「お話したい」と散々駄々を捏ねて、結局ビデオ通話をお願いする羽目になるのだった……。

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