第12話 外から見たらそう見えるんよね
それに
電車の中では朱実も
ひな
でも、もしかするとひな子先生は困るかも知れない。
それに、ひな子先生がいなくなっていたら?
あの家がなくなっていたら?
だいいち、朱実はちゃんと行き着けるだろうか?
道は単純だから覚えているつもりだ。でも、何しろ、最後に行ったのはだいぶん前のことだ。
そんな朱実の気もちを察したから……。
――ではないと思うが、亜緒依も何も声をかけてこなかった。
久しぶりに下りた収の駅は、改装されて、すっかりきれいになっていた。改装工事をしているのは電車から見て知っていたが、ここまで変わっているとは思わなかった。
前は線路の上の橋を渡って両側に下りて、その下りたところにそれぞれ改札があった。
それが線路の上の橋のところに改札が一つにまとめられ、そこから階段が両側についている。大がかりに変わったわりには、あまり便利になったようでもない。
ホームにも、改札の外にも、上りだけエスカレーターがついて、エレベーターもついたのは、便利になったのかも知れないけど。
駅前もすっかり変わっていたらどうしよう。いや、そうなれば、ひな子先生の家を探し当てられなくて当然ということになって、亜緒依にも言いわけができる。
そんなことを思って、だだっ広くなった駅の階段を下りる。広くなったからか、ほんとうに線路の上の橋の高さが高くなったのか、階段が前より長く感じる。
階段を下りたところも、まだアスファルトが黒々としていて、前とは様変わりしている。
ああ、これはほんとうに先生の家はわからないかも知れない。そう思って顔を上げると、大きく
朱実は信号を渡ってその狭いアーケードの商店街に入る。亜緒依もついて来た。
「何この
その通りだ。
「前言」から「撤回」するまでが短すぎへんか、とは思うけど。
入り口のところのスーパーマーケットはもう開いていて、お客さんが出たり入ったりしていたし、小さい店でも店を開けているところが何店もある。
初詣やお出かけの帰りの人たちが、朱実と亜緒依を追い越して駅から商店街に流れこんでいた。
「外から見たらそう見えるんよね、なんか寂れてるな、って」
朱実が笑って言う。
「ここって、入り口のところが坂になって急に下ってて、外からは中の店がぜんぜん見えへんから。それで店がぜんぶ閉まってるみたいに見えてしまうねん」
気の強い亜緒依も、いまは朱実の後ろをついてくるしかない。
何を考えているのかはわからない。何か
でも、それはいつものことなので、何を考えているか、見ても判断できないのだ。
その入り口のスーパーマーケットの斜め向かいに、年季の入った木造の家の正面をぶち抜いてガラスをはめたような店があった。中から電球色の明かりや蛍光灯色の明かりが惜しげもなく表に漏れている。
周囲の木の感じと、店の正面のガラスっぽい感じのと対比が強烈で目を引いた。表にはショーケースが出ている。いっぱいのクリームの上に、赤、黄、緑のだんごを載せたパフェが出ていた。店名の看板は古めかしく、毛筆で書いたような「
「こんな店あったかな」
独り言を言って、ふと亜緒依が聞いて答えるんじゃないかと振り向く。でも亜緒依は気がついているようすではない。
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