第7話 これだけなん?
ふだんは
今日だって有名な神社やお寺に較べれば
本殿と、脇殿と、あとはお稲荷さんと、
「で、これだけなん?」
黒と白と赤で
やっぱりあんまり格好がつかないというのか。
「何が?」
八個入りのたこ焼きのうち五つをその
「ここの神社、お参りするとこはこれだけなん、て」
「て」で終わったのは、そこで丸いたこ焼きを口のなかに入れたからだ。
「これだけやけど」
「なんやあっけないなぁ」
まだ熱いはずのたこ焼きを口の奥のほうで
なぜたこ焼きを買い食いなんかしているのかというと、これが
出店には紘くんはいなかった。店は三が日は開けて、それから次の週末の手前まで休むと言っていたから、いまはきっと店のほうで働いているのだろう。
亜緒依はこの出店を出しているのが紘くんのところの店だと知っていて、わざと出店の前で足を止め、せがむようにたこ焼きを買おうと言った。
ええとこのお嬢様の亜緒依は、たこ焼きの買い食いなんか普通はしないのだろうと思って、朱実は横から見ている。
「神社て、本殿からずーっと山のほうまで上って行ったらまた別のお
横から朱実にじっと見られているのを気にしたのか、亜緒依が言う。
「そういうのは大きい神社だけやろ?」
横を見ると自分の服の肩のところが目に入る。それが白くてふわっとしていて、何か落ち着かない。
「ここは、昔、この近くで合戦があって、そのとき亡くならはった武将の人と、そのお母さんとか一族の人らとかを祀ったお宮さんやから。お墓がこの下をずっと行ったところにあるんやけど、その
たこ焼きを口に入れたところで、楊枝を唇の横から突き出させて朱実を横目で見ている亜緒依の顔が何かおかしい。
「この高いところからやったら、合戦場だけやのうて、平野のほうがずっと見えるやろ」
朱実は白いソックスを
「武将の人もそのほうが気ぃが安まるやろうし、それに、ここやったら平野全部の守り神さまにもなってもらえるしな」
「たしかにそうやな」
たこ焼きをむしゃむしゃ噛むのを途中で止めて、亜緒依が朱実のほうを見て言う。
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