第103話 秘密の議定書(プロトコール)(その2)
昭和14年9月某日 長岡市 長岡中学校(旧制)応接室
「支那通の多田中将を飛ばして
大橋熊雄大佐は
「そうだ、飯田近衛中将は(刈羽郡の)
田中菊松大佐は答える
「はい。しかし飯田近衛中将は東条英機と陸軍士官学校の同期。ハンサムでモダンボーイ、天皇陛下の信頼の篤い飯田中将は
「それで良いのか?」と大橋大佐は問う
「飯田貞固近衛中将は、蒋介石が陸軍高田師団に留学していたときからの旧知の仲です。それに天皇陛下と蒋介石のルートが確立できます。今日は『日本がアメリカに負けたとき』の話ですよね?」
右翼の大物、小林順一郎氏が答える
「ああそうだ、なにか田中君に妙案はあるのか?」
田中菊松大佐は、
「中国に駐留している何百万人の将兵、民間人をどうしますか?敗戦したら中国に置いておくわけにはいかないでしょう?日本に戻してくるには何年もかかると思います。飯田貞固中将には蒋介石との交渉ルートを確保しておくようお願いするしかありません。そして戦争を膠着状態に追い込む。特務機関の大橋熊男大佐、もし飯田中将が支那に飛ばされるようなことがあったら、貴殿からご協力いただけますか」
大橋熊雄大佐は答えた
「私はいままで内蒙古と新疆との連合自治政府の樹立を進める立場であったが、そこまでは上手くいった。しかし
「満州駐留の日本人は?」
「我々の力では及ばない。頼みの綱の
「満州の居留民は見殺しにするのか……」
「……それまでになんとか手を考えよう……」
私(
蒋介石総統が日本人将兵居留民を無事に帰国させたのは、この場での計画なのか?
歴史の教科書に載っている話がここで決まったとは……
おそるべし、田中菊松大佐と大橋熊男大佐……
お茶を配っていたはいいものの、肝心の飴最中が一つ足りない……
あ、
最後の一人の分、なにかメガネを掛けたダンディな紳士だ。
私は田中菊松大佐に耳打ちした
「菓子が一つ足らないのですが……あのメガネをかけたジイサンの分が」
「バカモン『ジイサン』とはなんだ、確かに頑固なクソジジイ風だが……あれは小野塚喜平次という東京帝国大学元総長だ!まさかその菓子をつまみ食いするとは……」
「お嬢さん、私の飴最中は?」小野塚喜平次氏は聞いてきた。
宝剣乃亜め、後で覚えておれ……たたっ斬る
それを見ていた右翼の大物、小林順一郎氏は
「まあまあ、お嬢さんの手違いだ。私は辛党だから、私の分の飴最中を回してくれ」
私は右翼の大物に救われた
注・引用
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※蒋介石総統「怨みに報いるに徳を以てす」
八国山には蒋介石が八国山に金銀等の財宝を埋めたという、八国山埋蔵金の説がある。
蒋介石は、国共内戦で敗北(1949年)し、その後、首都南京を脱出し、重慶などを経て台湾へ敗走、事実上台北への遷都を強いられた。
この台湾に逃げる時、蒋介石は台湾に多くの財宝を持ち出したが、台湾も追われることも想定し、妻の宋美麗の家から持ち出した金銀等の財宝(800億)だけは、日本に持ち出して埋めた。
その時、多くに人物が、持ち出した財宝の後を追ったが、何故か八国山の麓にある善根のお滝(不動滝)さんの辺りで見失ってしまった。
また、この時に財宝を運んでいたのは田中角栄ロッキード事件で有名になった児玉誉士夫であった。
(児玉誉士夫は日中戦争で上海に児玉機関という店を出して暗躍し、莫大な資産を得て、戦後も政財界の黒幕と言われた人物である)
次に、蒋介石が日本の中で善根の不動滝を選択した訳は、飯田貞固(サダカタ)陸軍中将という人物が関係していたからである。
飯田貞固は山本五十六や東条英機と同じ明治17年生まれの小国町八王子の人で、昭和天皇の信頼が厚く、八国山の善根城跡に飯田貞固陸軍中将揮毫(きごう)の碑があったが、現在は加納の清龍寺に墓がある。
蒋介石は新潟県の高田連隊にいて、小千谷小栗田原にあった陸軍飛行場に来たこともあり、これが飯田貞固との出会いであった。
1945年、第二次世界大戦で日本が敗戦した時、中国大陸に残された多くの日本人達を救出し、日本に帰した司令官がいて、そのお蔭で中国大陸からの引き上げは満州よりスムーズとなった。
この司令官が飯田貞固であったが、それは蒋介石との信頼が厚かった飯田貞固は蒋介石に援助をしてもらったからである。
その4年後、上述の通り今度は蒋介石が台湾へ敗走するはめになったので、蒋介石は飯田貞固に飯田貞固の故郷であるに善根の不動滝に財宝を埋めることを託したのであった。
しかし、この財宝は、蒋介石が台湾の総統に就任(1950年)し、国内が安定した数年後、日本に来て内密に掘り出して持ち帰ったが、この時、蒋介石はこのお礼としてお滝(不動滝)さんの川に2本の橋(右の写真の護国橋と不動橋)を寄付したとのことであった。
『柏崎日報、「風の戯れ言」(市内加納:石塚 修)、2018年9月22日』参照
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