第85話 罠

第三艦隊旗艦翔鶴 南雲忠一司令官


「熊野から信号、『敵機らしきもの見ゆ、方位160、距離20,000、高度800』とのことです」

「全艦変針270 直掩ちょくえん機 向かえ」

「了解」


◇◇◇


重巡洋艦熊野 艦橋 田中菊松たなかきくまつ艦長


「翔鶴から信号、変針270とのこと」


「わかった面舵90」

「おもーかーじ 90」


「両舷前進 第三戦速 左舷ひだりげん高角砲 撃ち方用意!」

 

「距離2000!方位270」

て!」


熊野の左舷高角砲が一斉に火を噴いた。

ボン、ボン、ボン…………と空中で時限式砲弾が炸裂し

バババババと機関砲が発射された


◇◇◇


アメリカ海軍USSエンタープライズ 第三偵察隊

J.R.”バッキー.リー SBD-3ドーントレス


「9時の方向、空母2,護衛の艦艇8!南緯7度5分、東経163度38分」


「後ろの空母を狙う、急降下DIVE!」

「前の巡洋艦クルーザーから弾幕来ます!」

「ちくしょう!突っ込め!邪魔だ、あの野郎CA!」


◇◇◇

重巡洋艦 熊野甲板 九六式高角砲


「艦爆、まっすぐ向かって来ます!」

「撃ち続けろ!」


バババババ……


「コッチに向かってくる!あ、逸れたか」

「空母に向かうぞ!」


「撃ち方、止め!」

「なに!」

「撃ちかた、止めろ!」

直掩ちょくえん!友軍機が来た」


「瑞鳳に突っ込むぞ」


零戦はドーントレスを追っていく。


しかし間に合わない。SBDはスッと上に上がると

瑞鳳の後ろに火柱が見えた


「瑞鳳がやられた?」

「ちくしょう!」


空母瑞鳳の後ろの方からキノコ雲が立ち上がった。


◇◇◇

第三艦隊 旗艦 南雲忠一司令官

「瑞鳳が被弾、後部甲板に敵、艦爆の爆弾が命中した模様!」

「被害は?」

「火災は小規模、消火できる模様。負傷者数名、甲板後部で致命傷ではありません」

「瑞鳳を退避、トラックへ向かえ。護衛の駆逐艦舞風と初風をつけろ」

「了解」


◇◇◇


アメリカ海軍USSエンタープライズ 

J.R.”バッキー.リー SBD-3ドーントレス


「フウ、やったか……」

「機長、空母CV艦尾甲板、小破の模様です……、! 6時から零戦ZEKEが追ってきます!」

「全速力で退避だ、機関銃を撃ちまくれ!」


◇◇◇


重巡洋艦熊野 艦橋 田中菊松艦長


「瑞鳳が退避するとのことです」

「了解!」

「本艦艦の被害を報告せよ」

「被害はありません」

「わかった、舵戻せ」


「もどせ!」 


◇◇◇


熊野甲板、九六式高角砲

「磯貝、よくガマンできたな」

「山田先任のおかげです」

「油断するな、敵は今度 本艦を集中的に狙ってくるぞ」

「了解!」


◇◇◇


米領ハワイ オアフ島真珠湾

アメリカ太平洋艦隊司令長官兼太平洋戦域 チェスター・W・ニミッツ最高司令官


「司令官、ハルゼーは2隻の空母を北上させた模様です」

「ハルゼーは、ガダルカナルの作戦でしびれをきらしたのか?これは日本の罠のような気がするが…」

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