第42話 通城県進攻
こうして、一人、また一人と故国に帰り、靖国に眠る。
それがいつ自分の番になるのか。
それよりも、夜の暗闇に歩哨に立ったとき、いつ狙撃されて彼らの後を追うのか。
歩哨が終わる時間が近づくと、はやく交代したい、はやく交代したいと足が震えた。
戦場で見た敵兵の遺体が目に浮かぶ。うつぶせになって死んでいたが血が流れておらず、いまにも首を
彼にも、親兄弟、妻子供はあっただろうし、あったかもしれない。
敵兵の遺骸は、ときどき消えていることがある。
こっそりと住民が持って行って葬る。我が国は火葬が普通だが、どうもこの国は火葬は「二度殺す」として好まれないところもあるそうだ。
立哨している時に、ザワザワと
たいていは風の音だが、恨みを晴らしに復讐に家族が来たのか、遺骸を回収しに来たのか、その音も恐ろしい。
楠林橋を出発し、行軍していく途中にはありとあらゆるところに敵の妨害がある。バリケード、橋を落としてあるなどだろうが、住民も不便だろう。
中国大陸でも南京米(長粒種の米)の稲刈りが始まっているが、戦場になったところは手つかず、刈り取り途中で放棄された田がある。
新潟にくらべて、はるかにクソ暑いと思った湖北省の空も高く秋空に変わってきている。
夜は、半壊となって主のいなくなった建物で夜露をしのぎ、または露営した。
そうしているうちに通城県に到着し、一息入れるまもなく、次の命令が下る。
「第3中隊は山砲第3大隊長三宅少佐の指揮下に入り、通城県南方8キロメートルの地点に至り、部隊集結の援護に任ずべき」
休む暇もなく、次の行軍である。
連日の行軍で疲れ切った中隊がその地点に到達すると、
ドーン、ドカーンと砲弾の着弾音が炸裂する。
敵は我々の到着を待っていたかのように、迫撃砲を我々に撃って来たのだ。
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