春祭り
第28話 例大祭
江戸時代、旧暦の3月18日に白山神社の春の祭礼が行われる時に、新潟古町の芸妓が白山神社の参道の古町通りを練り歩き、旦那衆はひいきの芸妓にこぞって高い着物を着せたという。
見物する町人も多数いたというが、この時代(昭和14年)では戦争の色も濃くなり次第に縮小していって、一斉に白山神社に参拝するだけになっていた。
白山神社はもともと、加賀一の宮の
そのため、芸妓衆の信仰をあつめていたのである。
「あやめ」さんは
あやめさんにもパトロンが付いた。お相手は豪農のようだ。
私(
「あやめ」というのは彼女は北蒲原郡新発田町(現在の新発田市)の生まれで、新発田のお城を「あやめ城(菖蒲城)」と言ったから、そう名付けたという。
菖蒲の図柄が入った、なかなか良い着物を
1人客が付けば、次にまたお客がつくそうだ。
なんか令和の時代のアイドルの投げ銭みたいだなと思っていた。
白山神社の古町芸妓衆の昇殿参拝に多くのパトロン、いわゆる旦那衆も見物に集まっていた。
やれ西陣だとか、加賀友禅だとか、ワイワイと多くの人達で人垣が出来ていた。
私(本間)と
その帰りに屋台で何か買って食べようかと話していた時、
その時、おツルちゃんが、
「ちょっと、静かにして」
「どうしたの」
「小声で話すから」
「なにかあった?」
「尾行」
「いつもの『マルトの味噌』でしょ?」
(お互いに特高-特別高等警察をそう隠語で言っていた)
「違う。マルトの味噌じゃない」
「え、じゃ、なに?」
「ケンペイ」
宝剣が言った。
「金平糖?、ねえ金平糖を屋台で買おうよ」
相変わらずアホな宝剣ノアだ。
おツルちゃんは、
「そうね、金平糖かぁ。こう書くのよ」
そう言って、地面に棒で「憲兵」と書いた。
宝剣が言う、
「のりへい?サザエさんはノリスケ……」
私は宝剣はホントにバカだと思った。
「ねえ、おツルちゃん、どうして金平糖(憲兵)なの」
「マルトの味噌が漏れたかも」
(特高から情報が憲兵隊に漏れたかもしれない、という意味だった)
「あなた、何か隠しているの?おツルちゃん?」
「シッ、気づいていないフリして見物して、帰りましょう」
3人で古町通りをソソクサと
おツルちゃんの言うとおり、男が2人、我々を尾行しているようだ。
憲兵は特高(特別高等警察)よりさらに怖いということは知っている。
足がガタガタと震えた。
「ねえ、金平糖は買わないの?」
宝剣ノアは相変わらずお気楽だ。
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