第23話 玄界灘
船(
博多の港に出入りすると思われる船や、漁船が見える。
漁船の名前から九州のものだろう。
この船は、
もともと貨物船だった船を兵員輸送船に改造したものであるから、船の揺れで、あちこちがギシギシと
新潟港で別れの時に、私(
いまの流行歌ではない、見たことも聞いたことがない曲だ。
「オフィシャル髭ダンディズム」?「レミオロメン」?
意味がわからん名前がならんでいる。
「キング・グニュー」てなんだろう。
私は体操などをした後に、昼休みにハーモニカを出して吹いてみた。
みんなには、「佐渡おけさ」「旅愁」などの曲が好評で、集まった時に吹いてくれと言われるようになったが、この帳面に書いてある楽譜はこっそりと練習と言って吹いた。
蚕の棚のような寝台(カプセルホテルみたいなものですね)に寝そべり、ゆらゆらと揺れる船室でその楽譜を眺める。
ふーん、これらはなかなか良いメロディだ。
聞いたこともない曲ばかりだが。
船室はだんだん北国から離れて温かくなっていった。
◇◇◇
新潟港で停泊している船の上で、
手を握りしめてそっと渡され、クシャクシャになっていた。
私(
「宝剣ノアさん、貴女は
「ちょっと、ノア、貴女の家って宝剣建設株式会社だったよね?」
「……
「信一ってお爺さん?」
「まさか……昭和14年ってお爺ちゃんがまだ生まれてない年。だから、ひいお爺ちゃん、あっ……」
「糸魚川の実家に行ったときに、仏間に兵隊さんの写真が……」
「まさか!」
「でもウチの社長は代々『
「巳之助さんというと巳年生まれ? 計算すると……うーん」
私は西暦と元号を照合して計算してみた。関東大震災が大正12年で、小説で「亥年」と聞いたことあるか、へび年は……大正6年か。
「あの二人、大正6年頃の生まれだと考えると、「ひいお爺ちゃん」だと考えると、だいたい一致するわよね」
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