第8話 尾行
3日後、くらいだった。
私(
台所や野菜、生ゴミなどを
そして、帰って行った。
「どうしたん?」私はおツル(二瓶ツル)ちゃんに聞いた。
「
「そういん?」ひひひ……
「いやね、となりの宴席は
「はあ、店はお咎めなしってことらけ?」
「そうなったみてぇらよ」
しめしめ、あのバカな役所の連中、ノロウイルスで地獄の苦しみを味わったようだな。小作人に見境無く召集令状を出したバチがあたったんだわ
コレがホントの「メシテロ」
ノロウイルスの発見は戦後の話だから、保健所の医者でもわかるまい、ひひひ
「ねえ、花音、あなたやっぱり」
「いい気味よねぇ」
置屋の女将がやってきた
「おめえら、なんか、
「いいや、わった(私たち)なんも」
「んなこといって、ウチが解らんとでも思ってるんかいね」
「ああ、お見通しですかねぇ」
「罰として、『
ひえー、また汲み取り作業をするのかよ!
◇◇◇
「ちょっと、花音、なんで私も一緒に罰を受けんのよ」
鼻にマスクをした
「いいじゃんか、あなた、汲み取り得意でしょ?」
「うっさいわね。さっき
宝剣が肥柄杓で便槽の中のモノをぐるぐるとかき回した。
便所の中に人が入ってきたみたいだった
「おら、おめぇら、
怒られた。
私たちは、便槽から
◇◇◇
作業の後に、風呂屋に行ってこいと言われ、着替えてなんとか臭いが取れたのだが、まだ
おツルちゃん(二瓶ツル)が、
新潟の町の中心から外れに白山駅がある。
ちょうど汽車が到着したようで、黒い煙がモクモクと上がっているのが見えた。
大勢のお客さんが降りてきて、たくさんの家族連れのようだ。
一番先頭に「長野縣下伊那郡…町…満蒙開拓団」という旗を持っていた。
宝剣がその姿をジッとみていた。
「ちょっとノア、あまりジロジロ見ないこと!」
「だって……」
「だってもヘチマもないわよ。まっすぐリヤカーを押しなさい!」
二瓶ツルは私たちをじっと見ている。
なにか、この子は隠しているのだろうか。
野菜をリヤカーに積んで帰る時だった。
おツルちゃんは、私たちが汲取り作業をしたことを知っていた。
白山の
「会津から出てきてすっかりコッチの言葉を覚えたけど、これなんて言うかわかる?」
「カリントウでしょ」
「まあね、でも『ねんぼ菓子』ってコッチの人は言うのよ」
「ふーん、ねんぼ菓子ね」
「『ねんぼ』の意味わかる?」
「さあ?」
「硬い大便のこと」
ぶっ……、ゲホッゲホ…
「おめさん、知っててやったわね、『ねんぼ菓子』って
「
「もう!」
なんて汚い話をしているだ?私たちは。
すっかり昭和初期に溶け込んでいるじゃねーか。
そして、おツルちゃんが私に近寄って、耳元でささやいた。
「あなたたち、つけれているわよ。ほら、あの
たしかに黒い着物姿の帽子を被った男性がいる。
「しっ、ジロジロみて、気がつかれねぇようにせえて(しなさい)」
私もささやいた
「なんで?」
「あれは特高よ」
「トッコウ?なに?」
特攻隊のこと?
「特別高等警察」
まじか!
「
「そんな、なんで私たちが警察から睨まれるのよ…」
「それ以上言えない。私も睨まれたら終わりだからね」
宝剣はボケ-と花林糖、いや、『ねんぼ菓子』をポリポリと美味そうに食っている。
あいつは、ホントにアホの子だ
「さ、尾行に気づいたのを悟られないように帰りましょ」
「わかったわ、ほら、ノア、帰るわよ!」
「ねえ、『ねんぼ菓子』もう、ちっとちょうだい?」
アホだ……ねんぼ、ねんぼ言うな!
「ほら、野菜が重たいんだから、リヤカーを押して手伝いなさいよ!」
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