第2話 漁火
私(
2人でその固いオレンジ色の浮き輪につかまった
もう秋で海の水は冷たく、体は冷える
乃亜の唇は紫色になり、体が震えている
「だれか助けに来るよね」
マーカーが流れ出して黄色の色が広がっている
海保(海上保安庁)のヘリや船が発見し易いようになっているのだ
辺りはもう暗い
遠くにライトを付けた船が見える
私たちはその船に向けて手を振った
漁船が捜索に協力しているのだろうと思った
「助けてー」
私たちは叫ぶが、気がついているのだろうか
そうしているウチに、チカチカとライトがコチラを向けて光っている
気がついたのだろうか
船がコッチに向かってきた
ポンポンポン……という何か古い船のような音がする
だんだん近づいてくる
「たすかった……おーい!」
漁師は「やっぱり人が浮いてる、おーい大丈夫かー!」
と返答が来た
目の前に古めかしい漁船が来た
漁師は海に漁網を投げた
「そこに捕まれるか」
私と宝剣はその網に2人で必死で捕まったが、手が冷えていてなかなか握れない。
「手を網に絡めて、すこし痛いと思うけど、引き上げるぞ」
漁師とその息子と思われる若い漁師が私たちを漁船の上に引きずりあげた
「刺し網で女が釣れるとはねぇ……それにしても、なんだ変てこりんな服を来てるな」
漁師は
え、この漁師さん、着物を着ている?
それにこの船は木造だし、なんかエンジンの音も、ポンポンポンポンという音だ
「おまえら着ている服をその中で脱いでこれで体をあっためろ」
2人で船室に入ると、とても見たことがないような古いものだ
いまの船ならモニターやら無線機があるだろう
操舵輪と簡単な機械しかない
それに漢字が、台湾の映像で見るような複雑な文字で書いてある
「ねえ、花音、すこし変じゃない?」
「わたしもそう思う」
私たちは毛布に包まって、袢纏を着て、若い漁師に聞いた
「今日は何日?」
「はあ、日にちを覚えていないのかぁ、9月28日だ」
「何年の?」
「おかしなことを聞くヤツだなぁ、紀元2598年だよ」
2598年?何それ?未来の世界?
「昭和?・・・」
「昭和13年だよ、なにをバカなことばっかり」
昭和13年!!!はぁ?マジですか?_
「ねぇ、私たち、アホだと思って冗談言ってない?ことしは令和4年でしょ?」
「れーわ? れーわってなんだよ。昭和だよ」
「昭和って64年で終わって、それから平成が32年で、それから令和になって4年目」
「なにバカなこといってん?おまえら何を言ってんだかわからん」
「ねえ、ホントに昭和13年なの?」
「この船、去年買ったばっかだ。そこの銘板を見て見ろ」
「年二十和昭…………なにこれ反対から書いてある」
「なにが反対だ。おまえらが反対から読んでいるだろが」
銘板がピカピカだから、間違いないのだろう
「とりあえず、おまえらを
漁船は信濃川に入っていく。だが高いビルもマンションもない
低い建物ばかりで、多くの小さい船が、たくさん浮かんでいる
「なに、ここ……」
船倉を除いてみると、イカがたくさん入っていた
この船はイカ釣り船なのだろう
魚市場の建物も見たことないような古い建物だった
「おーい、海で人を助けたぞ、火を焚いてくれぃ」
「なにぃ?何を釣り上げたんだよ」
「若い女が二人」
「はあ、若い女?いいもの、いや、おかしなもの釣れるもんだな」
私と宝剣は船から下りて、漁師さんに、いままでの一生で一番というようなお礼を言った。若い漁師はたき火の前まで連れて行ってくれた
ああ、助かった、助かったって、昭和13年とか死んでしまってあの世に逝ってしまって夢でも見ているんじゃないか?
「ねえ、私たち死んだんじゃない?」
「そうかもね、昭和13年って」
「
「じゃ、一緒にほっぺを」
ぎゅう…………いっててて
「おまえら、なにやってん?二人で抓くりあって」
「
警察官らしい人が来た。見たことない制服を着ている
「おまえらが海に落ちていたって本当か。名前は?」
「本間花音です」
「宝剣乃亜です・・・」
「まあ名字はいいとして、変な名前だな、で住所は?」
「新潟市西区、
「はあ、西区? 区ってなんだ」
「新潟市には区があるでしょ」
「区があるなんて東京市くらいだ。新潟市に区なんてあるもんか、五十嵐と行ったな」
「はい」
「
「ああ、坂井輪中学校ってありますね」
「坂井輪村に中学なんてねぇわ!このあたりで中学があるのは
え、私たち警察署に連行されちゃうの?
◇◇◇
古めかしいコンクリートの建物の中で、二人で取調べをうけることになった。
「おまえら、未来から来た、みたいなことを言っているけど、頭は大丈夫か」
「大丈夫です」
警察官は宝剣の方をチラと見て、
「君は賢そうだけど、こっちの娘(宝剣)は馬鹿そうだな」
「失礼ね!」
※県中とは旧制新潟中学校、現、県立新潟高校のこと
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