もうこの世にいない君とみた最後の花火

もうこの世にいない君と見た最後の花火

あの日彼女と丘の上で見た花火を俺は一生忘れない。そしてもう恋なんてしない


高校最後の夏休み僕佐藤渉(さとう わたる)は学校に追試に来ていた。夏休み前に合った期末テストで10教科中5教科赤点と酷い点数を取ったからである。

渉は頭は悪くなかったはずなのだがテストの日体調が悪くそのままテストを受けたせいでこんな点数を取ってしまった。僕の右斜め後ろにはここ学校で知らない人は居ないと思うくらいの美少女が座っている。確か2組の名前は朝日陽葵(あさひ ひまり)だったと思う。彼女は追試常連らしい、試験監督の先生が「また陽葵は追試か」と呆れていた。そして夏休みの追試は僕と陽葵の2人だけと言う事を聞かされ「最悪だ!」と思った。

だが、この出会いがまさか僕の高校最後の夏休みを全て彼女のために使うことになるとはまだ知らなかった。

「出席とるぞー佐藤」

「はい」

「朝日」

「はーい」

「お前ら2人だけだぞ追試なのは、夏休みを楽しみたいなら早く追試突破しろよ。暑いから俺も早く帰りたいし」

教員がそんな事言っていいのかよと内心呆れつつ追試の準備をする。すると朝日は何故か追試前に僕の席の横に座った。

「朝日さん、なんで席移動したんですか?」

「別に意味は無いけど、前扇風機あるから少しでも涼しさを求めるため?」

「なんで最後疑問形なんですか、」

「お、いいツッコミするねぇ」

「お前ら喋ってないで早く準備しろ、そして朝日は席ひとつずれろ、佐藤の答案見えるだろ」

「はーいまた後でね佐藤君」

「う、うん」苦手だなこう言う陽キャ

「じゃ問題配るぞ。追試内容は数学、英語、物理、地理の5つだ。制限時間は1科目に付き50分だ。早く終わっても寝るなよ特に朝日」

「なんで私だけ名指しー?」

予鈴がなった。

試験監督の先生の「始め」の合図で問題を時始める。問題自体は簡単だ、授業をきちんと受けていればわかる問題ばかりだ。

試験自体は30分で解き終わり見直しをしようと問題用紙を見返していると隣から「グゥーグゥー」といびきが聞こえてきた。朝日は寝ていた。

別に僕に関係ないからと割り切って見直しをしていると朝日は先生から起こされていた。

その日の追試は終わり後は帰って寝るかと思っていると朝日から「ちょっと待って」と呼び止められ「何?」と返事すると一緒に帰ろうとの事最初は嫌ではあったがどうしてもと言うので一緒に帰ることにした。

校門抜け2人で帰っていると部活をしていた同級生がフェンスまで寄ってきて朝日に声掛けていた。その間僕は朝日を置いて帰ろうとしていた。すると「なんで置いてくの?佐藤君」と大きな声で叫んでいた。朝日との距離は100mも無いのに無駄に大きな声で、すると

「佐藤って誰?」「陽葵の彼氏?」とか聞かれていた。(おい、同級生で確か同じクラスだろ名前ぐらい覚えててくれもう3年も終わろうとしてるのに未だにクラスメイトから名前を覚えられてないとは。、、、まぁ僕も覚えてないけど、)

「ほら1組の佐藤渉君さっき追試で同じだったから一緒に帰ろうって声掛けたの」と朝日が言っていた。(俺のフルネームよく覚えてるな確か同じクラスになった記憶無いけど)

「それじゃ部活頑張って!」

「うん、陽葵も追試頑張れ」とお互いを応援しあっていた。

すると急ぎ足で僕の横に並ぶと「追試どうだった?」と聞いてきた。(寝てたやつが何言ってんだ)と思いながらも「まぁまぁ解けたかな」

と返事をする。すると「私全然わかんなくて開始10分で寝ちゃった。」と笑いながら言っていた。(なんでこの人は追試で寝てたのにこんな余裕あるんだ?)と思っていると顔に出ていたのか朝日が「追試で寝てたヤツのセリフじゃ無いと思ってるでしょ」と聞かれびっくりした。

「うん、正直」

「正直でよろしい、別に追試通らなくていいんだ」と言っていたので「どうしてですか?」と聞くと「私今年で死んじゃうの、後何ヶ月生きられるかわかんない、だから追試通らなくてもいいの」と、言ってきて最初は冗談だと思って笑ってやろうと思ったけど彼女の表情からは冗談ではなく本気だと言うことが伝わってきた。

「なんでそんな大事な事僕なんかに言うの?」と尋ねると

「なんでだろうね、なんか君にはスって口から出てきた。私まだ誰にも言ってないし、言うつもりもなかったんだけどね」と笑って見せた。

「なら尚更なんで僕なんだよ、もっと君に親身になって相談に乗ってくれるやついるでしょう?君と話したのも今日が初めてなんだ、それなのにたった一日少し喋った相手にそんな重要な事言うんですか?」

「だから分からないって」

「僕をどうするつもりですか?」

「どうするって?」

「君がみんなに隠してきた秘密を知ってしまった。僕を口封じしなくていいんですか?」

「そんなことしなくていいよ。君は見た感じ友達少なそうだし、君は口が堅いって信じたい」

「友達少なそうは余計です。事実ですが」

「その敬語辞めない?なんか他人行儀な感じする」

「そうですか?というか僕たち今日初めて喋ったんですから他人では?」

「細かい事は気にしない。まず佐藤君は敬語をやめてタメで喋ろ」

「分かり、わかった。」

「そう、そんな感じ、後一人称僕じゃなくて俺にしよう」

「分かり、わかったよ」

「分かればよし、じゃ今からゲーセン行こっか」

「え?」

「え?まさかこの後予定あるとか?」

「特にする事無いけど家に帰って勉強しようと思ってた。」

「勉強より遊び行こうよ」

「わかった。今日は遊び行きます。家に帰っても勉強しかしてないのでたまには気分転換です」

「まだ敬語抜け切ってないなぁ。まぁ、こればっかりは徐々に慣らしていくしかないね」

「そう、だね」

「よしゲーセン行くぞー!」

「はい!」

「そこははい!じゃなくておーうだよ」

「わかりました。今後気をつけます。」

ゲーセンにて

陽葵と俺はカーレースゲームをしていた。

最初遊び方が分からずにいた時は丁寧に教えてくれたのに対戦となると初心者に優しくなくなった。

「あぁ楽しかったね」

「練習の時以上に上手く行けて良かったんですけど朝日が手を全然抜いてくれなくてボコボコでしたけどね。」

「勝負は本気でやらないと意味無いでしょ?」

「それはそうですけど、少しは手加減と言うものを知らないんでですか?」

「私の辞書に手加減という文字は無いよ」

「そうですか」

「じゃ次あれやろっか!」指さす方を見るとプリクラが合った。

「絶対嫌です。」

「なんでそこまで嫌がるの?」

「陽葵こそなんで俺とプリクラ撮ろうとしてるの?彼氏と撮りなよ」

「私彼氏今まで出来たことないよ」

「嘘だよね?」と聞き返そうと彼女の顔を見ると本気だったみたいだ。顔が真っ赤になっている。

「それなら尚更取っておきなよ、俺なんかと撮ってもなんの意味もないよ。」

「別に意味を持たせる必要ないよ、私が一緒に撮りたいって言ってるんだから、素直にうんって言えばいいのにまさか、彼女いるとか?」

「いないよ。俺なんかに彼女なんて出来るわけないでしょ。普通に考えて」

「そんな事無いと思うけどなぁだって多分君もう少し人とコミニュケーション取れば多少なりとも友達増えそうなのに、そんでもう少し明るかったら彼女ぐらいできるよ、君顔いいし」

「そんな事無いと思うけど、学校一の美少女が言うんだからそうなのかもしれないなぁ」

「学校一の美少女?誰の事?」

「君だよ」

「わ、私?!」

「なんで本人が気づいてないんだよ」

「いつの間にそんなあだ名着いたんだろ?」

「知らない、僕もこの前友達から聞いただけだから」

「そうなんだ、あ、だからかさっき「彼氏いるって思った理由」はそれかぁ」

「うん」

「みんなからそんな風に思われてるなんて知らなかったなぁ」

「それがわかったところで僕たちはさっさとわかれた方がいい」

「なんで?」

「なんでって学校一の美少女と冴えない僕が一緒にいるとこなんて学校のやつが見たらなんて言われるか分からないから」

「君さっきから一人称がコロコロ変わってるよ」

「そうですか?」

「また敬語使ってるし」

「すみません」

「だから敬語、笑い過ぎてお腹痛い」

と彼女はお腹を抱えて笑っていた。全く失礼な人だ。

「俺なんかと一緒にいちゃ陽葵に迷惑かけるよ?」

「別にたまたま追試の帰りが一緒で帰りに遊んでるだけだよ?」

「君はそのつもりかもしれないけど周りから見たらそのつ、」

「つ?」

「付き合ってる見たいじゃないですか、違うな陽葵からたかられてる可哀想な人か」

「君失礼だと言われたことない?」

「ないですね」

「前半の付き合ってるみたいなのは何となくわかるけど、後半の言ってることは流石に怒るよ」キレてる確実に

「すみません」謝っとこ調子に乗りすぎた。

「私がなんで君にたかってるように見えるのか教えてくれないかな?」と顔は笑っているが目が笑ってない、まじで怖い目からハイライト消すのやめましょ怖いから割とまじで

「怒ってる?」

「ううん、怒ってないよ?」

怒ってる人に怒ってる?って聞いても反対怒らせるに決まってる

「理由はまぁ学校一の美少女とデートしてるんだからまぁ全部俺が奢ってるみたいに見えると思ったので、」

「へぇーそんな風に思ってたんだ?」

「一部の人から見たらだよ。」

「ふぅーん」

「機嫌直して貰えませんかね?」

「別に機嫌悪くないよ」

(ウソつけ内心めっちゃキレとるやろ。)

「そ、それじゃあれ撮りましょうか、プリクラ」

「そうだね」

その後プリクラを撮りお互いに加工し合って誰が誰かわかんなくなってる写真が出てきた。

(うん、これならもしどこかで落としても僕と陽葵なんて分からないだろう)

「これ無くさないでね」

「うん」と笑顔で答えているがほんとにわかっているんだろうか?まぁいいかどうせわかんないんだし、そう思っているといきなり陽葵が肩をぶつけカシャッと音とともに俺と陽葵のツーショット写真をスマホで撮った。

「何してんの?」

「何って?」

「なんで今写真撮ったんだよ」

「別に良くない?」

「ダメ、もし誰かに見られたら俺多分精神的に殺される」

「そんな事みんなしないって」

「するだろ、学校一の美少女とツーショットなんて他のやつから見たら羨ましいだろうからな」

「私そんなに可愛くないよ?」

「はぁ〜なんで自覚してねぇんだよ」

「なんでみんな私を特別視してんのかなぁ他に可愛い子いっぱいいるのに」

「例えば?」

「君と同じクラスの香葉ちゃん」

「誰それ?」

「君自分のクラスメイトの名前覚えときなよ」

「別に覚えてなくて困った事ないよ」

「それでもさぁ、これ以上言ってもわかんないか」

「そんな哀れな目で見ないでよ」

「君口調も変えようか、さっきみたいに丁寧な言葉遣いじゃなくてさぁもっと普通に」

「わかった?」

「まぁそんな感じ?」

「と言うかなんで俺今こんなとこいんだっけ?」

「君は私の秘密を知りゲーセンに来ています」

「そうだよね、なんでこうなった?」

「さぁ?」

「君の秘密は誰にも言わないから俺もう帰っていい?」時計を見るともう5時を回っている

「もうそんな時間かぁ、時間の経過って早いね、ちょっとスマホ貸して」

「別にいいけど何するつもり?」

「連絡先交換しとくの夏休み中は君と過ごす気でいるから、予定全部空けといてね。」

「え、普通に嫌だけど」

「なんで?」

「付き合ってもないのになんで俺が君に夏休み中付き合わなくちゃいけないのさ」

「じゃさっき撮った写真みんなにバラす」

「脅迫かよおい、」

「これで少しはわかってくれた?」

「わかったよ」

「よし、言質とったからね。」

「あぁ二言は無い」

「じゃ追試明けから開始ね」

「うん」

「それじゃまたあした」

「うん、それじゃ」

僕たちはそれぞれの家に帰る。

その時に僕の胸の中に確かな感情が浮き上がってきた。それがなんで言う感情なのかまだ気づいていなかった。

次の日また学校に追試に行くと陽葵はいなかった。次の日もその次の日も陽葵は追試に来なかった。流石に心配になって追試が終わった日に陽葵に電話した。

すると彼女は入院していた。

僕は急いで彼女が入院している病院に走った。

最初は来なくていいと言われたが「君のせいで最近勉強に集中出来ないんだ。」と言うと「心配させちゃったかぁなら仕方ないなぁ。私が入院している病院は〇〇〇病院だよ」と言われ病院まで走った。

彼女が入院している病院は僕たちの住んでいる県で最も最新の医療技術がある病院だった。

病院に着くと彼女から聞いていた病室まで行った。そして扉を開けると彼女はいなかった。

「は?なんでいないんだよ。」と少しイラッとしていると「ばぁ!驚いた?」とカーテンの裏から出てきた彼女を僕は睨んでいた。

「そんなに怒んないでよ。」

「俺の心配を返せよ。せっかく心配してやったのに」

「私の事考えて勉強に手が付けられなかった君から言われたくないなぁ」とニヤニヤしていた

軽く頭に手刀を落とすと「ふにゃ」と言って頭を押さえている。そんな彼女をよそに僕は病室を見渡した。彼女は「こら、女の子の部屋をジロジロ見ないの」とお返しに僕に手刀を落とした。手加減無しの本気の手刀だ。「痛っ!」

「さっきのお返しだよ」と笑っていた。

「ここは君の部屋じゃないだろ?それと俺は手加減したのに本気で叩くのはやめてくれない?割とまじで痛いから」

「ふふん、君はまだまだだね」と上から物を言ってきた。「元気そうだね。じゃもう帰るね」と病室を後にしようとすると「待ってよ〜」と言ってきたので待つことにする。すると後ろから抱きつかれ、「今日は来てくれてありがとう。」といつもの彼女からは想像も出来ない心細い声が聞こえた。振り向くと彼女は泣きそうな顔をしていた。

「何かあったの?」

「う、ううん何にもないよ」

「でも、」

「それじゃあ明日私退院だから明後日から遊びに行こう。」

「追試はどうするのさ。君は入院してた間追試受けてないだろ。」

「だから別に追試しなくても来年私はいないんだって。」

「そんなのわかんないだろ?もし病気が治っても単位取れなくて留年したら笑えないよ」

「まぁ治る確率がないって訳じゃないからなぁ君は私の事好きすぎでしょ」

「なんでそうなるんだよ」

「だって君〜私が入院してるって言ったら走って病院まで来るし私が残り少ないって言ったらもしかしたら治るかもなんて言ってくるし」

「ち、違うそんな事思ってない」

「顔めっちゃ赤いよ」とまたニヤニヤしながら言って来たのでお返しと

「君も俺の事好きだろ?」

「な、なんでそう思うのかなぁ?」

「だってさっきいきなり抱きついて来るし前ゲーセン行った時もいきなりプリクラ撮ろうとか言い出すし」

「な、なんの事かなぁ私そんなの知らないなぁ」ととぼけ始めた。

「じゃ俺もう帰るね」

「えぇもう帰っちゃうの〜?」

「君今何時か知ってて言ってる?」

「今は5時だね」

「もうすぐ病院の面会時間が来る、そしたらどの道帰らなくちゃ行けなくなるからもう帰るって言ってんの」

「わかったよ」

「じゃまた明日学校でね」

「やっぱ明日行かなきゃだめ?」

「だめ、でも学校来ないなら俺は君と会うことないから夏休み中君に付き合う必要ないなぁ」

「意地悪だね君」

「そんな事ないよ」

「わかった。明日は学校行くよ」

「なら、別に君に夏休み中付き合ってもいいかもね」

「君ってツンデレ?」

「黙れ」

「きゃ〜怖い」

「はいはい、またね」

「うん」

病院からの帰り道俺は自分が陽葵に言った事を思い出して死にそうだった。何が君こそ俺の事好きだよねだ、自意識過剰にも程がある。明日陽葵とどんな顔であったらいいんだよと考えている。

その頃の病室でも同じ事を考えている人が一人、なんで私あんな事言っちゃったんだろ君私の事好きすぎでしょとか自意識過剰私ー明日どんな顔で渉と会ったらいいんだろと考えている。

「「こんなことになるなら最初から言い返さなかった方が良かったぁー」」と場所は違えど同じ事を思った2人だった。

次の日

「お、おはよう、陽葵」

「お、おはよう渉」

なんか気まずい雰囲気のまま追試が始まり終わった頃にはお互い昨日の事は忘れて一緒に帰っていた。

「ねぇ渉」

「何?」

「なんか私達付き合ってるみたいに見えない?」

「なんでそうなる?」

「だってお互い呼び捨てだし、一緒に帰ってるし休日は一緒に遊んでるし」

「なら辞める?」

「いやこのままでいい」

「周りからどう思われようと実際は違うんだから気にすることなくない?」

「君最初会った時と言ってる事違うよ」

「そうだっけ?」

「うん、最初は僕と一緒の所誰かに見られたらなんか言われるとか言ってた人が今じゃ呼び捨てだしね敬語も抜けてるしまぁこの数週間で成長したね君」

「その君って言うの辞めない?」

「なんで?」

「なんかやだ」

「わがままかい」と笑う彼女

「別にわがままじゃないよでもなんか他人行儀な気がして」

「ふーんそうなんだ。私が他人行儀な話し方は嫌なんだ」

「うん」

「やけに素直になったね」

「もうなんか諦めた。君に反抗しても意味がないってこの数週間でわかったから。」

「でも君も私の事君って言ってるよ」

「じゃ呼び方変えて今日から陽葵って呼ぶことにするよ」

「じゃ私も渉って呼ぶ。なんか付き合ってるみたいに見えてきたね。」

「実際は違うけどね」

「もう、そうゆうとこだよ渉。モテない理由」

「余計なお世話だ」

「私が居なくなったら君はまた1人になるのかなぁ」

「別にぼっちじゃない」

「へぇーそうなんだ」

「僕をぼっちだと思った経緯を説明してもらおうか」

「嫌だよー」と走る陽葵を追いかける僕あぁなんか楽しいと思った。

その日の夜陽葵から電話があった。

「ねぇ明日花火見に行こう」

「花火?」

「うん。花火大会が明日あるんだって行こうよ、どうせ明日も暇でしょ」

「勝手に暇人扱いするな」

「暇じゃなかった?」

「いや、暇だった。」

「図星指されたからって言い訳しないの」

「はいはい、明日何時集合?」

「7時頃で花火自体は8時頃からだから少し早く行って場所取れたらいいね」

「わかった。」

「それじゃおやすみ」

「おやすみ」

電話を切り俺は布団に倒れ込むと夏休みに入ってからの日常を振り返っていた。

夏休みに追試があり、追試終わりに陽葵と会いゲーセンに連れて行かれプリクラを撮り彼女が入院したら急いで病院まで行ったりとここ最近は彼女に振り回されっぱなしだ。でもそれはそれで楽しい、彼女が居なかったら今頃は家でゴロゴロしてるだけの夏休みを過ごしていただろうから、彼女には感謝している。明日の花火大会の時に彼女に今思っていることを伝えよう。と心に決めた。

だがそれを彼女に伝えることは出来なかった。

彼女は死んだからだ

次の日

雨が降っていて今日の花火大会は延期され来週の金曜日に開催となった

彼女は朝早くから俺に電話してきて今日は花火大会がないから普通に遊びに行こうとの事

当然暇な俺は頷きどこに行けばいいのか聞いた

「今日は水族館行こう」と言った。

「わかった。」

「じゃ今から渉の家行くね」と言ってきたので

「俺の家教えた事ないのになんで知ってるの?

」と聞くと「内緒」と言われた。家に来た時に聞こうと考えているとインターフォンがなった。

誰だと思いドアを開けるとそのには陽葵の姿が合った。早くね?

「おはよう渉」

「お、おう陽葵、質問いいか?」

「何?」

「お前さっき俺に電話してから5分しか経ってないのになんでもう俺の家の前にいる?」

「理由は私の家から君の家が近いからだよ?気づいてなかったの?」

「うん、今までなんで気づかなかったんだろ」

「私が家まで送ってって言ってる時に送らないからだよ」

「いや、普通気づくだろ俺って注意力散漫なのかな」

「いや、多分渉は朝学校行く時は自転車だし帰りも私を置いて帰るから私の家近い事に気づかなかっただけだと思うよ」

「まぁいいや今日は水族館行くんだろ?」

「うん。」

「やけに嬉しそうだな」

「うん、めっちゃ楽しみにしてたから」

「水族館なんて友達と行くだろ?」

「行かないよ水族館なんて」

「へぇー」

「興味無い事はわかってるけどそれを表に出しちゃだめだよ渉」

「以後気をつけるよ」

「なら家あげてよ暑いから」

「いやだよ」

「なんで?」

「すぐ準備するからちょっと待って」

「・・・」

着替えをしに部屋に戻ると後ろから着いてくる気配がした。振り返ると陽葵がいた。

「待っててって言ったよね」

「私頷いてないし」

「だからって勝手に他人の家入っちゃダメでしょ」

「いいじゃん別に知らないわけじゃないんだし」

「だったら今度君の家に言った時勝手に上がるからね」

「そ、それはだめだよ」と慌てる陽葵

「なんでだめなんだよ。」

「渉の家に私が入るのと私の家に渉が入って来るのは意味が違う。」

「はいはいわかった。」冗談のつもりで言ったのにまさか本気にするとは思ってなかった。

なんだかこんな会話するなんて僕は変わったなと第三者視点で見ている僕がいた。

「も〜渉ってデリカシーないよね。」

「急にディスるな」

「別にいいじゃん、私と渉の仲だし」

「はいはい、じゃ俺が今度陽葵の家行ってもいいよね。俺と陽葵の仲だから」

「だから、ダメだって〜」

「はいはい、わかったから。水族館行くんだろ?早く行くよ。」

「うん!」

どうやら機嫌を直してくれたようだ。なんだかんだ言って陽葵不機嫌だと怖いからなぁと考えてると「今私の事面倒臭い女の子って思ったでしょ?」図星だった。なんでわかったんだよ!?

「そ、そんな事ないよ?」

「怪しい〜」

「ほら行くよ。」

「うん!」

水族館に着くまで僕らはずっと喋っていた。いや、陽葵が1人でずっと喋っていた。

「ね、渉」

「何?」彼女の口から聞く初めての真面目なトーンだった。

「如何にも面倒臭い女の子見る目だね」冗談っぽく言ってるけど目は笑ってない。

「そんな事ないよ?それで要件は?」

「要件は残りの夏休みは渉を自由にします。」

「いきなりなんで?」

「理由は教えないよ。」

「理由もなく陽葵がいきなりこんな事言い出すなんて理解できない。何があったんだよ。」

「渉には絶対教えない。」

「なんでだよ」

「渉が知っちゃうときっと後悔するから。」

「そうかよ」

「納得してくれた?」

「納得するもしないも理由もなく陽葵がこんな事いきなり言うなんてだいたい予想つくから」

「君は私が話さない理由もわかるのかなぁ?」

「それはまだ分からない。」

「鈍感だね」

「うるさい。ほら水族館着いたよ。」

「あ、言い忘れてたけど今日の花火大会見に行こうね。」

「あぁ」

これが最後の陽葵との会話になるなんてこの時は思いもよらなかった。

水族館に来てしばらく歩いていると大きな水槽があり,2人で眺めていた。すると、突然陽葵の身体が傾き倒れた。

突然の事に対応できず、混乱していると、近くの人が救急車を呼んでくれて、陽葵は救急車で運ばれた。そして俺もその救急車に同伴した。陽葵が何か言っている。耳を近ずけ陽葵の声を聞くと彼女は

「今日、まで、ありがとう、渉、」

「何言ってんだよ!花火見るんだろ?」

「ごめん、」彼女は泣きながら謝っている。そんな顔するなよ、陽葵はいつも笑ってろよ。

「簡単に謝んなっ」

「ごめん、」

「ここで、お別れとか許さねぇからな、」

「ごめん、もう、無理っぽいや、」

「諦めんなよ、」

「もう、無理 、っぽいから伝えたい事だけ、言うね、」

「そんなのは後でいい、今は喋らず呼吸を整えろ。」

「渉、」

「喋んなって」

「渉っ!」彼女がこんなに感情を表に出すのは初めてだった。

「・・・」

「渉、す、好きだったよ、」

「過去形かよ」と強がって笑って見せた。

「だって、私はもう、、」と泣き出した。

「きっと助かるよ、」なんの根拠もない、ただ今の状況で陽葵を勇気づける言葉がなかった。

「俺も、陽葵の事好きだよ。」

「渉も過去形にしないとだめだよ。私の事忘れないで欲しいけど、忘れて幸せにならないと」

「そんなの僕は望んでないっ!」いつの間にか僕も泣いていた。

「また、敬語になってるし」と彼女は笑っていた。その数分後彼女の容態が悪化し最寄りの病院に着く頃には彼女は息を引き取っていた。

死因は持病の悪化だった。

彼女の葬儀は翌日行われた。だが僕は行かなかった。高校生の僕なら、誰かに誘われなくても行かなければならないのだが、今は夏休みだ。僕を彼女の葬儀に引っ張り出すようなやつは僕の周りにはいない。唯一僕を引っ張り出す友達ももういないのだから。

だが、ずっとこうしている訳にもいかない、彼女には生前お世話になったのだから線香ぐらいはあげないと、と思い今日彼女の家に行く事にする。彼女の家は僕の家から歩いて5分の距離にあってほんとになんで今まで気づかなかったんだろ。と思いながら彼女の家のインターフォンを鳴らす。すると、彼女の母親だろうか、「はい、どちら様でしょうか」とインターフォンから声が聞こえ、

「陽葵、いえ、朝日さんと交流があった、同級生です。」

「はい、」と一言だけ返事をされ、彼女の家の扉が開いた。

「こんにちは」

「こんにちは、急に来てすみません。陽葵さんの葬儀に顔が出せずすみません。少し用事があり、遅くなりました。」

「いえいえ、来てくれただけでも、陽葵は喜ぶわ」と彼女の仏壇に案内してくれた。遺影は生前彼女が笑顔で撮られている写真だ。

彼女の仏壇の前に座り金属の音を鳴らす道具で拝む。彼女は天国でまた笑っているのかな、と思いながら拝み終えると彼女の母親が近くに座っていた。彼女の母親は何か小さいものを持っている。

「これ、君と陽葵よね」

彼女の母親が持っていたのは僕と彼女がこの夏休み中遊ぶきっかけになったプリクラだった。

「はい、そうです。」

「ありがとう、来てくれて。」

どうゆう事だろう。高校生なら当然行かないとだめなんだろうけど、僕が困惑していると

「陽葵から君の話は聞いていたわ。毎日のようにあの子は君の話をしていたわ、もう聞き飽きるほどね」

「そ、そうなんですか。」彼女からそんな事は聞いてない。ましてや僕なんかの話を親にするなんて想像出来なかった。

「陽葵からもし、私が死んじゃったらこれを君に渡すようにって言われてるの。」と封筒を渡された。

「読んでいいんですか?」

「いいわよ、君のためにあの子が書いたんだもの。」

「拝啓、渉へ

私たちが最初に会った時の事覚えてる?私は鮮明に覚えてるよ。私が声掛けた時にビクついてたし、同級生なのに敬語だし、で君を気に入った。それから2人でゲーセン行ってプリクラ撮ったよね。(無くしてないでしょうね?)渉は最初私のことを怖がってたよね?でも今は全然怖がってない渉は変わったんだよ。渉のおかげで私も変われた、ありがとう。渉には感謝してもし切れないぐらい沢山の思い出を貰って成長させて貰えた。渉は他人を成長させる力があるんだよ、自信もってクラスメイトに話しかけて見て、みんな渉の凄さに驚くと思うから。

長くなりそうだから、ここまでにしとくね。

最後に、渉大好きだよ。

(過去形にしないと渉には足枷になるかもな〜だから書き直すかも)

朝日 陽葵 」

と書いてあった。その瞬間僕の中で蓄積されたものが流れる気がした。彼女の母親は僕に

「泣きたい時は泣いていいのよ。泣いてスッキリすればまた明日から進めるから」と言われ僕は泣いた。人前で泣くのは初めてだった。

僕は彼女から沢山のものを貰った。彼女が僕に感謝するなら僕は彼女より感謝しなければならない。そうすれば君から貰った沢山のものを返せるから。僕が泣き終わるまで彼女の母親は静かに待っていてくれた。

「すみません。取り乱してしまい。」

「子どもは泣くものよ。そして次に進むための力になるから。」

「その通りだと思います。」

「陽葵との思い出を聞かせて貰っていい?」

「はい、僕なんかで良ければ。」

「こら〜渉。僕じゃなくて俺、でしょが」と笑って言っている彼女の声が聞こえた気がした。

咄嗟に振り向くとそこには何も無かった。きっと彼女が(俺)の背中を押してくれたんだな。と思いながら、彼女の母親と話をする。

「では、今日は突然きてすみませんでした。」

「いいのよ。また遊びに来てね、そしたら陽葵も喜ぶから。」

「はい!」




2年後俺は地元の大学に進んだ。俺は陽葵の死から目御逸らすのをやめ、前向きに進んだら生前陽葵が言っていた通りになったからすごい。

今年は2年前見れなかった花火大会に来ている。花火が打ち上がり始めると

「た〜まや〜」と、隣から聞こえ、横を見ると彼女がいた気がした。

「かーぎや〜」と僕が言うと隣から笑い声が聞こえた気がした。花火綺麗だな、「 来年も来るね。」とその場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もうこの世にいない君とみた最後の花火 @Kouga0509

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る