幕間①【04】『赤ちゃんプレイは、いざやるとなると勇気が必要』
あー、やべーなー。
これ地雷、踏んじまったってやつ?
ククルが、はしゃいでる隙を突いたつもりだったが、ステータス覗いてるのモロバレだったか。
しかもダーリンとか何よ……。
「さー、お仕置きタイムですよー」
また顔面踏む気ですか?
あれ地味に痛いんですけどー。
と思ったら、今度は足を掴まれたぞ?
なになに、ここからまさかの四の地固めとか、
いやー、ククルさん、立ち技だけじゃなかったんですねー。
って、あれれ? 今回はなぜか手つきが優しい気がするんだが、気のせいか?
「はーい、できましたー」
うん、上手にできましたねー。って、何よこれ?
なんか俺の右足首と、ククルの左足首が結ばれてるんだが⁉︎
「ダーリンは、私の大事なとこを覗き見しちゃったので、ここからはHPの補充なしでミッションに挑んでもらいまーす」
まったくもって、言ってる意味が分からんわ。
あと、なにげに人を変質者みたいに言うのやめてくれ。
それはともかく、HPの補充なしでミッションって……?
『◯◯◯しないと出られないエレベーター』
ああ、あれですか。やっぱり、あったんですか……。
この部屋で気が付いてから、ずっと顔面踏まれたまま這いつくばってたから、今まで表示に気付かなかったよ。
最初が『大願成就しないと出られない部屋』、前回が『一発必中しないと出られない回廊』で、次はエレベーターとは……。
で、伏せ字になってる今度のお題はなんなのよ?
ちょうどMPが3余ってるから、全文字見れるか。
――よし、スキル『洞察』!
『仲良くしないと出られないエレベーター』
…………はい?
仲良く? 誰と? まあ、なんとなく分かりますけど。
でも、仲良くったって、相手は俺の顔面笑顔で踏み続けてた訳だし、俺はっていうと命の危険があったとはいえ、迷わず股間に弾丸撃ち込んじゃったんだよ……。
い、ま、さ、ら、できるかー!
しかもエレベーターって何よ? あっ、あったわ。
ほんと顔面踏みつけプレイのせいで、周囲の状況がまったく把握できてなかったわ。
見た所、屋根部分にロープが繋がってるけど、エレベーターっていうより、横一面だけがぽっかり空いた四畳半ぐらいの『箱』って感じだな。
あー、不安しかないわー。
どうせあのクソ運営が用意したミッションだから、まともな内容な訳がねえ。
「じゃあ行きますよ、ダーリン」
ってククルの奴、何勝手に進行しようとしてんだ⁉︎
「おい、いったい何をする気だ? ちゃんと説明しろ」
「んー? あー、そうですかー。ダーリンは低脳だから、まだ状況が理解できてないんでちゅねー」
赤ちゃんプレイで、ディスられるのって腹立つわー……。
あと状況が理解できてないのは、お前が顔面踏んでたせいだよ!
まあいい。ここでまたククルを刺激して話がこじれるよりも、事態を整理する事が先決だ。
「じゃーあー教えてあげますから、『おちえてくだちゃいククルちゃまー』、って言ってください」
ああん⁉︎ このクソ女、完全に俺をコケにしてやがるのか⁉︎
いやいや落ち着け、俺――。ああ、この世界で俺はレオか。
いいかレオ。一時の屈辱で大局を見誤るな。
事態を穏便に済ます方が、最終的にプラスが大きい時もある。いや、ほとんどの場合がそうだった。
そうやって俺は、これまで――上手く生きてきたんじゃないか。
受けた屈辱は、いずれ己の実力で百倍返しにする。
そう自分に誓いを立てて、今まで下げたくない頭を何度も下げてきた。
親、兄弟、職場……。くっ、今回も同じだ。
どうしようもなく腹は立つが、赤ちゃん言葉でお願いくらい……お願いくらい……お願いくらい……、できるのか⁉︎
――お、おちえてくだちゃい。
言おうとしても唇が動くだけで、声が出ねえ。
くわーっ! これ予想以上に難易度
いやいやいや、これって人間としての尊厳に関わる部分じゃねえか?
でも世の中には、これをお金を払ってまで実行する人もいるんだよね。
うん。なら大丈夫。これは普通の事だ。
って、少なくとも普通じゃなーい!
「クスクスクス」
ククルの奴が、俺が金魚みてえに口パクパクさせてるの見て、笑ってやがる。
クソッ、確かに滑稽極まりない姿を見せたのは確かだ。
だが顔面踏まれた俺に、もう怖いものなどない!
ディスりたければ、好きなだけディスるがいいさ――。
「あー、やっぱりレオさんって最っ高!」
えっ? なんだよ突然、手のひら返しで褒めやがって?
しかも今度はダーリンじゃなくて、わざわざ俺のペンネームで呼ぶなんて、どういう事だ……?
「才能もない。運もない。当然、居場所はド底辺!」
お……おい、何を言ってるんだ、こいつ?
「ブクマも付かない、ポイントも入らない、それでも根性だけで上を向いて、何度も何度も必死に這い上がろうとし続けてる――」
それって俺の――⁉︎ やめろ、それ以上言うな。言わないでくれ!
「今のレオさんの姿って――、あなたが書いていた報われない小説と、おーんなじ!」
目の前が――真っ暗になった。
「ああ、その惨めに足掻く姿がリアルに見られるなんて……本当にゾクゾクしちゃう」
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