幕間①【02】『殺られる前に、ヤってやれ!』
――なんだ、こいつの憐れみの視線は!
それがこの金髪ドリルツインテに抱いた、俺の第一印象だった。
人の顔面踏みつけておきながら、まったく矛盾していやがる!
しかも自分から、おパンツ見えるシチュに持ち込んでおきながら、まるで俺が覗いてるかの様な言い草は聞き捨てならない。
まあ確かに、見えた事自体は嬉しかったけどね。
かといって、可愛いからってなんでも許されると思うな!
あー、いろんな意味で頭に血がのぼったら、なんかまた意識が遠のいてきたわ。
いやいや、俺そもそも瀕死だったし、これって顔面踏まれてるダメージのせいだろ⁉︎
「あらららら、また死んじゃうんですかー? 困りましたねー。じゃあ、また特別に私の慈悲を差し上げます。感謝してくださいねー」
半笑いでそう言った金髪ツインテのブーツから、何か波動の様なものが伝わってくる。
それは暖かく安らかで、何か生気を呼び起こされる様な癒しに満ちていた。
とはいえ、顔面踏まれて癒されるのって、なんか複雑だわー……。
ああ、でもこれで生き返れるのなら――と思いきや、
「はーい、おしまーい」
無情の終了宣言。こいつどうやら俺を
敵なのか? いやそれなら、ひと思いに俺を殺すか、見殺しにしているはずだ。
しかも、こいつもこの訳の分からない異世界にいるって事は――転移者なのか⁉︎
調べるしかない――。
俺が気を失ってから、いくらか経っているから、0だったMPも少しは回復しているはずだ。
――スキル『洞察』! よし見えた。
HP:380/380 MP:480/500
な、なんだこいつのステータスは⁉︎
一見、ただの細身の女に見えるのに、HPもMPも俺とケタ違いじゃねえか!
スキル:『魔弾:LV10』『火炎:LV9』『電撃:LV10』『氷結:LV9』『シールド:LV8』『陥穽:LV8』『浮遊:LV10』『念動:LV10』『魅惑:LV10』『再生:LV10』etc……。
って、スキルもパッと見しただけでも、魔法系スキルのオンパレードだ!
しかも、レベルも俺とは段違いじゃねえか……。
ダメだ、まともに戦ったら瞬殺されんぞ、これ。
「どーしたんですかー、人の顔を怖い目で見てー? あー、それとも私のパンツが忘れられなくて、もうワンチャンないかなって、必死に待ち続けてるんですかー? もう惨めですねー」
頭おかしいのか、こいつ?
だが、またパンツ見えないかなーって、ちょっと思ってたのは事実だ。
なぜバレた。こいつエスパーか?
「でも、そんなあなたが……素敵です。ゾクゾクしちゃう」
スカートの裾を少しずつたくし上げながら、金髪ツインテが笑う。
そして悔しいが、俺の目は闇の中でもきらめく肌色に釘付けになる。
同時に――俺は自分のステータスを確認する。
HP:3/85 MP:27/35
たぶんHPは、こいつに生かさず殺さずでコントロールされていたんだろうが、MPはさっき『洞察』が使えた事で大体分かっていたが、問題ないレベルに回復している。
――これは、ワンチャン賭けるしかねえ!
俺は密かに『錬成』の準備をする――。
きっとこのままじゃ、俺はこの金髪ツインテに、なぶり続けられた末に死んじまうだろう。
殺す気はなくても、こいつは獲物を無邪気にいたぶる猫と同じだ。
それなら――殺られる前に、ヤってやる!
俺は必死に手を伸ばした。
「えー、せっかく全世界の男子憧れの、『恥じらう女子が自分からたくし上げ』をしてあげてるのに、我慢できずに自分でめくり上げちゃう気ですかー? もー、欲しがり屋さん」
アホか! 男子の性癖ってのは、てめーが思うよりも多岐に渡ってんだよ!
しかも、どこが恥じらってんだよ! それと、いいかげん足離せ!
おっとあぶねー、熱くなるな俺。この状況を逆手に取るんだ。
こいつがそう思ってくれてるんなら、好都合なんだからな。
あー、でも横っ面踏まれながら手伸ばすのキツイわー……。
「もう必死ですねー。もう少し待ってれば、そのまま私のパンツが見えちゃうのに、スカートの中に手まで入れちゃって……。私をどうするつもりなんですか? こわーい」
言ってろボケが!
よし、スカートに隠れて俺の手が見えなくなったぞ。今だ、『錬成』ーっ!
こんな形の挿入で申し訳ねえが――俺のイチモツは38口径の鉛玉だ! こいつは効くぜ!
――パーン、パーン!
スカートの中で錬成した拳銃――M36を、金髪ツインテの股間目がけてブッ放す。
この奇襲は防げまい。恨むんなら、てめえのド変態ぶりを恨みやがれ!
「あーん!」
あーん? こいつ自分の股関撃ち抜かれて感じてんのか?
おいおい、どこまで頭イッちまってるんだよ⁉︎
「もう、女の子の大事なところに、硬いの発射しちゃうなんて……キ、チ、ク」
ま、まさか、効いてないのか⁉︎ な、なんでだよ⁉︎
さらに、たくし上げられるスカート――。その中に答えはあった。
完全に露出した金髪ツインテのパンツ。
その股間に――魔法陣の様なシールドが張られていた!
「ざーんねんでしたねー。あなたのじゃ、私の膜は破れなかったみたいですー」
こいつ、俺の渾身の策を読んでたのか⁉︎ ダメだ、殺られる!
「ふぎゃっ!」
厚底ブーツの蹴りに、俺は無様な声を上げて床を転がった。
――ドスッ!
そして、今度は仰向け状態の俺の顔面が、その靴底の置き場所となる。
クソッ、なんも見えねえ!
その恐怖が俺に、お決まりの言葉を吐き出させた。
「誰だ、お前は⁉︎」
だが口も踏まれてるので、俺の声はサ◯エさんの、フンガッフッフッよりも聞き取りにくかっただろう。
「私ですかー? んー、困りましたねー。実は名前は思い出せないんですー」
通じてんのかよ。しかも、こいつも名前を思い出せないって事は、やっぱり俺と同じ転移者か!
「でもー、ペンネームだけは覚えてるんですよー。それでいいですよねー」
ペンネーム? って事は、こいつも作家なのか?
「あらためて初めまして。私は――八ツ崎ククルと申しますー」
「――――!」
息が詰まりそうになる程の衝撃。
なぜなら、俺はその名前を知っていたからだ。
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