二回戦【03】『錬成リトライ』
あー、死ぬとこだった。
いやいや銃の暴発って何よ⁉︎
そりゃ、リアリティ重視の小説書いてた俺だけど、異世界まで来て銃の暴発事故で『完』――って、そんなん次回作もへったくれもない終わり方だわ。
せめて、俺たちの戦いはこれからだ! ぐらい言わせてくれよ……。
あー、冷や汗かいたから、HPも減ってるわ。
HP:75/85 MP:0/35
アチャー。せっかく回復したMPも、またゼロになっちまってる。
うーん、スキルレベルが上がったからって、いきなりオートマチック拳銃の錬成は無理があったかー?
しかも暴発する不良品作るなんて、これは設計図である『創造』のスキルがまだその域に達してないのか、MP不足で『錬成』が不十分だったのか……?
いやその両方だな。心なしか重量が軽いと思った時点で気付くべきだった。
結局、まがいものの設計図と、品質の悪い材料で銃を作ったんだから、暴発というこの結果は必然といえる。リアリストとして、これは認めなくてはならない。
あー、でもMPなくなったから、今日はもう『錬成』はおろか『洞察』も使えねー。
そういえば空中に表示されている、
『◯◯◯◯しないと出られない回廊』
も、まだ解決できてなかった。
とりあえず迷宮みてえな一本道だから、ここは行けるとこまで進むか……。
しっかし、屋内で日付という概念がないから、やめ時が問題だな。
とはいえ、ログインボーナスのカ◯リーメイトを美味しく食べるために、水場は確保しなければならない。
なんかカ◯リーメイトに行動を制限されるなんて、どんな異世界物語だよって感じだが、よし決めた。歩いて疲れて、水場に行き当たったらそこで寝よう。
で、眠って目覚めたら、ステータスが全回復してた訳だが、今日はまず実験だ。
あっ、ちなみに今日のログインボーナスは、チョコ味と読んだ俺の予想に反して、メープル味だった事に少しイラッとした。
それはともかく、
――スキル『錬成』ーっ、M36!
俺は初日に錬成したリボルバー式拳銃のM36を再び錬成した。
そして、ステータスを確認する。
MP:11/35
やっぱり余ってる! 消費MPは24だから、おそらくM36を作るのに『創造』と『錬成』を12ずつ消費したんだろうな。
続けて、
――スキル『洞察』!
を発動させて、空中に表示された文字の正体を見極める。
おっ、◯◯◯◯の部分が透けてきたぞ。なになに……。
『一発必中しないと出られない回廊』
なんじゃそりゃ?
最初の、『大願成就しないと出られない部屋』といい、謎かけが多過ぎるぞ。
まあいい。それよりステータスの確認だ。
MP:7/35
4減ってる。って事は一文字あたり1消費すんのか?
さあ考えろ。初戦で美少女とバトルした時、俺のMPはMAXで30だった。
で、あの部屋の伏せ字も四文字だったし、バトルが終わった後、俺のMPはゼロになっていた。
という事は、同じ『洞察』でも、美少女のステータスを見るのには、2消費したと考えるのが妥当か――。
まあ見抜く内容や『錬成』の難易度とかで数値の増減はあるんだろうが、大体概要が分かってきたぞ。
特に、今回重要なのはM36の『創造』と『錬成』をした後、MPが余っていたという事だ。
これが意味するところは、暴発したM92Fと違って――M36の『錬成』は完璧だったという事だ。
――パーン、パーン、パーン、パーン、パーン!
ちょっとドキドキだったが、全弾連射してみた。
まったく問題ない。これは今の俺に、完全に、安全に使える『武器』だ!
まだ試してみたい事はある――。弾丸の補充ができるかどうかだ。
銃本体を錬成した時点で、全弾装填されているのはありがたいが、やはりM36の五発というのは少ない。
――『錬成』ーっ!
おおっ、五発錬成できたぞ。MPの残りは2だから、一発あたりMP1消費か。
装填のために弾倉であるシリンダーを出し、エジェクターロッドを押して、薬莢を排出する。
アチッ! 知ってはいたけど、ほんと実銃って撃つと熱くなんのね。
これ実戦の場で、熱がりながら弾丸装填とか、マジありえないわ。
うーん、やっぱオートマチックみたいに、マガジンごと変えられないと不利だな……。
俺はミリタリー小説家としての知識と、リアルの違いに考え込んでしまう――。
――うん。今は考えても仕方ない!
開き直った俺は、せっかくなので残ったMPで『錬成』した七発の弾丸で、射撃トレーニングをする事にする。
『射撃』のスキルがレベル4だから、おそらく素人よりかは上手いんだろうけど――、ログインボーナスのカ◯リーメイトの空き箱を的にした、距離約二十メートルの試し撃ちは、七発中二発を外してしまう結果となった。
命中率七割。この数字を高いとみるか、低いとみるか……?
――ゾワッ!
思案の最中に、とてつもない悪寒が、背中を駆け巡った。
……この感覚は知っている。そう、あの『出られない部屋』で俺を色仕掛けで殺そうした、美少女の企みを暴いた時の悪寒だ!
美少女の――『この世の男を全員殺す』という願い。
そういえば俺、なんでそれを見抜く事ができたんだ?
『洞察』のスキル? いや違う。あの時、俺はステータスの最終ページにあった、固有スキル『裏読み』を発見した――。おそらくあのスキルの力に違いない。
疑り深い俺らしいスキルだが、それにしてもあれは、いきなりレベル99とかいう、ふざけた数値だった――。
それがどうして、今のタイミングで……。
なぜだか分からない。
だが直感で、先を急いだ方がいい気がした俺は、その場から全力で走り始めた。
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