第6話 悪友共の食事会

 連日の大雪で道路と歩道の境目には大量の雪が寄せられていた。


 私は先ほど観たかった映画を観終え、帰宅するために歩いて駅へと向かっていた。しかし、そのまま真っ直ぐ帰ろうとしていた私の足は駅を通り過ぎる。この近くに焼きたてのパンをを食べながらコーヒーを頂ける店があるのだ。たまには外食もいいだろう。クロワッサンが食べたくなった。




 「CLOSED」

 …マジかよ。そういえばこの店は朝早くからやっている代わりに閉まるのも早いんだったか。…仕方がない、少し歩いた先ににファミレスがあったはずだ。そこで温かいものを食べて腹を満たそう。私は再び歩き出した。




 ファミレスはあまり混んでなかった、だが……。


 「いらっしゃいませー。お一人様ですね」


 「…なぁ、木倉よ。なぜお前がいるんだ…」


 我が悪友、木倉浩輔は肩をすくめて言う。


 「バイトだよ、アルバイトだ。わかるだろ?ところでお客様、こちらの席にご案内いたしますぜ」



 入店したばかりだというのに、なんか疲れたな。私は木倉に指定された窓際の席に座りメニュー表を開く。気を取り直して…さてと、何を食べようか。ハンバーグかステーキか、味噌汁が付いてくる丼物もいいな。三十秒ほど迷って和風ハンバーグに決めた。タッチパネルで注文する、程なくして愉快な音楽と共にロボットが料理を運んで来た。


 ほえー。最近のファミレスってすごいな。少なくとも私が小学生のときにはこんなシステムなかったのに。


 そんな感想を抱きつつ料理を持ち上げようとすると、ロボットは再び音楽を流しながら動き出した。


 なっ!?誤作動?料理を取るのが遅かった?いや、今届いたばかりだぞ。まさか…木倉の野郎が!?


 私は走り去ろうとするロボットに小走りで追いつき、急いで料理を持ち上げる。ため息をつき、席に戻ろうとするとやつがニヤニヤとこちらを見ていた。


 「お前の差し金か?」


 「いや、俺はロボットエンジニアじゃないからなぁ。しっかし、なかなか面白いランニングだったぞ立川」


 「ほっとけよ。早く戻れよ、バイトしろ」


 「ほーい」


 やれやれ、さてと…和風ハンバーグをいただくとしますか。ネギや大葉などの薬味と大根おろしが乗ったハンバーグをポン酢で食べる。さっぱりとしており、とても美味い。小さい頃は断然チーズinハンバーグ派だったが年齢の変化だろうか、近頃はさっぱりとしたものを好む。


 私が和風ハンバーグを味わっていると窓際から離れたボックス席のから大きな声が聞こえた。


 「大変申し訳ありません!すぐに拭くものをお持ちしますので!!」


 「ハハハ。いいっすよ、ゆっくりで。別に気にしてませんから」


 若い女性定員がボックス席の三人組の男性に謝っていた。三人のテーブルには料理がぶちまけられている。


 女性定員は謝りながらその場を離れた。しかし、当の三人は散乱した料理を見て顔をニヤつかせている。その内の一人が手に握っていたスマホを二人に見せた。


 何やら嫌な感じがするな…。



 私は入口の方角に顔を向ける。いつもの邪悪な笑みが消えた木倉と目が合った。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 




 


 

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