王妃教育

みちのあかり

婚約破棄は大変です

「エマ・ガーデン。貴様との婚約は破棄させてもらう」


 卒業パーティーで婚約破棄をされた。えっ? 本気ですか?


「貴様の悪行の証拠はそろっている。俺の運命の相手リズを階段から突き落としたことを筆頭に様々な悪行三昧。貴様はこの王国から追放する」


「あの……私はそのリズさんと面識すらないのですが。そもそも王妃教育で手一杯の私が、どうやって学園で悪行を行えるのでしょうか?」


「そんなもの何とでもなる!」

「では俺がもらい受けても良いか?」


 帝国の第三王子が名乗りを上げた。


「ガーデン辺境伯は新たに王国を樹立する。婚約破棄は保護者として正式に受け入れよう」


 お父様が宣言した。


「アド王子。残念です。私は16年王妃教育を受けたのですよ。王の派閥と中立の貴族の女性のほとんどは私の派閥です。王室、貴族の不正の証拠、暗部との信頼関係、さらには軍の掌握も王妃教育には組み込まれておりますわ。他国との外交も、義理の母、亡くなった王妃様から私が受け継ぎました。仕方がありません。貴族の婚姻は父の権利でございます。父が独立して、帝国の第三王子が我が伴侶となられるのであれば、私が出来る事は我が国の繁栄のため、貴国の崩壊に全力で当たるだけでございます。今を持って、ガーデン辺境拍は隣国イオン帝国と手を結ぶことを宣言いたします。まずは情報戦から始めましょうか。民衆を扇動する情報など、王妃教育を受けた私には、赤子の手をひねる程度のこと。どこの領地から潰して差し上げましょうか。私と敵対したくなければ、我がガーデン王国に忠誠を誓う事ですね」


 パーティーに参加していたほとんどの領主が、エマに跪いた。


「反逆者を捕まえろ!」


 王子が叫んだが、騎士団長は「動くな!」と命じ、「我々騎士団はガーデン王国に忠誠を誓います」と誓った。


 不正だらけの騎士団長。証拠隠滅とこれからの安定を計りにかけ、エマにつくことに決めた。この瞬間、ダイナ王国は領地と戦力のほとんどを失った。


「王子教育も王妃教育と同じくらい行っていれば、こんなことにはならなかったのです。私は提言したのですが、王が反対なされて。身内に甘いのは崩壊のもとですわね」


 もはや誰も止めることができない。正しい王妃教育のおかげでエマ・ガーデンはダイナ王国を崩壊させ最終的に吸収した。


 王妃教育を施した女性を敵に回すな。


 全世界に、婚約破棄の恐ろしさを知らしめした婚約破棄は、その後500年間語り継がれたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

王妃教育 みちのあかり @kuroneko-kanmidou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画