第2話 アップルパイ事件
「キャー、ユイちゃん、本当にシュークリーム作って来てくれたの。ルナ嬉しい」
「えー、嬉しいのはシュークリームだけ?」
「もちろん、ユイちゃんに会えて嬉しいよ」
中学までクラスが一緒だった結音。高校が別々になって疎遠になっていた。
ティーセットをリビングに運んで来ると、ルナは慎重な面持ちでお茶を煎れた。
「ルナちゃん、進路は決まった?」
「全然、何になりたいのか、何をしたいのかわからない。ユイちゃんは?」
「美大受けることにした」
「わあ、すごい、ユイちゃん、絵が好きだったものね」
そこに遼平が通りかかり、
「おお、シュークリーム」
と言いながら、一口で食べてしまった。
「ユイちゃんの手作りシュークリーム、美味しいでしょ」
「ああ、アップルパイも旨いぞ。ルナの作るなんちゃってアップルパイと違って」
「えっ、ユイちゃんのアップルパイ食べたことない」
遼平はしまったという顔をした。
「お兄ちゃん、どこで食べたの?」
「うん、いや剣道場に持って来てくれて……」
「どうして、ユイちゃんが剣道場に行ったの?」
「それはミミーランドへ連れて行ってもらったお礼で」
ユイはしどろもどろ。
もはやルナの追求の手から逃れられなくなってしまった二人。
「ミミーランド、ルナも行きたかった。どうして誘ってくれなかったの?」
「いや、デートに妹は連れて行かんだろう。普通」
「えっ、デ、デート。二人は付き合っているの?」
遼平は照れ笑いを浮かべ、
「まあ、そういうことだ」
「うそー、信じらんない。それでいつからなの?」
「ああ、もう、だからルナに知られるのが嫌だったんだ」
「あっ、服装チェックしたときね。何回も服を着替えて見せに来て、あのときね?」
ルナが大事そうに抱えて、鼻歌交じりに通り過ぎるところだった。
「ルナ、レンジでチンしてこんな夜遅く、何を食うんや?」
「食べ物じゃないよ、ほら」
「いいもの持っているな」
「いいでしょ、あげないよ」
「おれもああいうの欲しいな。寝てると足元がスースーして」
食後のフルーツを食べながら夕刊を読んでいる一平が言った。
「大きなカイロがあって温いぞ」
「そりゃ、パパはママと寝てるから」
「遼平もイチと抱き合って寝たらどうだ」
「もう、そんな気持ち悪いこと言うのやめてくれよ」
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