16🏠ルナ恋バナ
オカン🐷
第1話 バカあ
玄関の扉を開けるなり座り込んで大泣きするルナ。
「うわ~ん」
「どうしたん?」
ナオは娘の着衣に乱れがないかまず確認し、早く帰宅した一平に大丈夫と目で合図した。
年頃の娘がいると心配事が増える。
「お友だちと喧嘩したん?」
「違う。おっさんがね、見て、見て、言うの」
ルナはしゃくりあげながら、それでも事の顛末を話した。
「許せん」
一平はスマホを取り出すと、パトロール強化の要請を出した。
すると、すぐに一平の声が笑いに変わった。
「ルナ、犯人捕まったぞ。そこの中学校の前で女子中学生にやり込められたらしい」
ルナの反応に気をよくした犯人は、中学校の門から出て来た女子中学生を相手に同じことを試みた。
「ねえ、来て、来て、おもしろいもの見られるよ」
秋の日は鶴瓶落としとはよく言ったもので、あたりはすでに暗く犯人には部活を終えた生徒たちが他にいるのが見えなかった。
ぞろぞろと出て来た女子中学生に囲まれた。
「キャー、ハハハッ」
「そんな粗末なもの、よく見せられるね、おっちゃん」
「うちの弟のより小さい」
「弟って普通の状態で?」
「決まってるじゃん」
笑いの渦の中、消え入るように身を縮めているところを現行犯逮捕された。
二度といたずらっ気を起こすことはないだろう。
「ルナ、どうした?」
「露出狂に遭遇したんやて」
遼平は道場から持ち帰ったばかりの竹刀を握り締め飛び出して行こうとした。
「おい、待て。そんな険しい顔して竹刀を持って行くな。おまえが捕まっちまうぞ。犯人はもう検挙された」
一平が慌てて止めた。
「ルナ、だったらどうして泣いてる?」
「どうして? どうしてだかわかんないよ。涙が出てくるんだもの。お兄ちゃんのバカあ」
「おい、俺何か悪いこと言ったか?」
「言ってないよ。うわ~ん」
「ルナもまだ子どもね。ヨッシーと一緒にベッドで寝てたときは驚いたけど」
「ああ、あれはミオさんが夜勤でヨッシーが家の鍵忘れたときだろ」
「そう遼平たちが寝てるみたいで起こすの悪いって。ルナの部屋のカーテンの隙間から明かりが漏れてて、リビングのソファーで寝るって言うのを風邪ひくって言って」
ナオはベッドの上の枕の位置を直しながら続けた。
「本当に仲がいいんだから」
「ぼくたちみたいにな」
「あったかいってヨッシーにしがみついて」
「そりゃ、ヨッシーには気の毒にな。ナオさん、もっとこっちに来て、ぼくをあっためてよ」
「もう、一平さんたら。ウフッ」
大谷家の温かい夜は更けていくのだった。
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