第19話 まさかのラスボス


「そろそろいいかしら」


「まぁどこからでも構わんが」


 街から出て少し歩いたところでそんな会話を交わす。


 ヒュウランの意図としては、「人もいないし、空を飛んでもいいだろうか」だろう。

 対して俺は「どこから飛び始めても構わない」だ。


「そう。じゃあ行きましょ」


 ヒュッそんな効果音が合うくらい華麗に飛び立つ。飛ぶ姿も絵になるな、あいつは。俺なんてしっぽで舵を取っているから少し不格好に見えることだろう。まぁ、誰も見ていないので気にすることでもないが。


 ◇


「さて、昨日よりも早くついたわね」


「そりゃ、正確に場所を把握していれば早くもなるだろ」


「それもそうね」


「それもそうなんだよ。それじゃあチャチャッと踏破するぞ」


「えぇ」


 こうして、俺たちは上級ダンジョンに再度入ることになった。


「……魔物は変わらずか」


「それはそうでしょう。1回1回変わってたら人間じゃあ攻略できないわよ」


 それはそうだ。とりあえず最初の階層はオーク将軍ジェネラルが跋扈する階層。


 もう既に、1度通っている道なので、記憶している。1階層から100階層まで。


 100階層のアースドラゴンは前回のように遊ぶのではなく、瞬殺する。


「えぇ、。瞬殺なの……」


ドラゴンこいつらを見てると気分が悪くなる。人間がゴブリンを見て嫌悪感を抱くのと同じだ」


「そうなのね。まぁとりあえず行きましょ」


「あぁ」


 100階層のアースドラゴンを倒しいよいよ101階層。


 そこは今までの階層と大差ない魔物ばかりだった。


「オークキングの群れにゴブリンキングの群れか。人からすればキング系一体いるだけでも街や国が破壊されるんだっけか」


「そうよ。その街や国に実力者がいるならともかく、キング系の魔物が攻めてきたら人間は負けるわ」


「そうか。103階層まで攻略した人間は相当な実力者だったと言うわけだな」


「そうね。1人で攻略した訳ではないだろうけれど、キング系の魔物の群れを倒すのは至難の業よ」


「……もしかしたらその人間たちは闘っていなかったのかも知らないな」


「……どういうこと?」


 俺の発言に疑問を抱いたヒュウランは自分で思考を試みるも、予想もつかないらしく、俺に聞く。


「簡単だ。着いてこい」


「えっ――」


 ヒュウランが何か言おうとしていたようだが、無視し、全力疾走を試みる。


 ほんの数秒もすれば102階層への入口にたどり着く。


「なるほど。確かにこれなら誰でも出来そうね」


「だろ? だが、相当スピードに自信がなきゃ出来ない芸当だ」


 キング系、それもオークとゴブリンの王系は攻撃力防御力に特化しすぎてスピードがとてつもなく遅いのだ。


 遅いと言ってもその辺の人間なんかよりは圧倒的に早いが。


「こんな裏技使ってたなら103階層までしか行かなかったのも納得ね。人間がこれくらいのスピードを出すと恐ろしいくらい疲れそうだし。103階層辺りで疲れが来たのでしょうね」


「あぁ。だが俺らの目標は踏破だ」


「えぇ。そうと決まればさっさと行きましょ」


 その後は嘘のようにスムーズに攻略が進んだ。


 俺たちが連携を取り始めたのだ。今まではどちらかが戦い、片方は静観。


 しかし今回は俺が前衛として戦い、その補佐をヒュウランが魔法で務める。非常に戦いやすいのだ。俺が求めていた場所に求めていたタイミングで攻撃を敵に当ててくれるので俺としても周りを気にして闘う必要が無くなった。


 例えば。


「ブヒィィ」


 気配を消して俺の背後から現れたオークキング。気配を殺していても俺は気づいていたが、あえて攻撃しなかった。そしてそのオークが俺に襲いかかる郎とする瞬間。


 ――ザシュッ


「ブッ、、フッ」


 ヒュウランによる氷の矢で脳天を撃ち抜かれたオークはその場で倒れる。このように、ヒュウランはピンポイントで敵を倒してくれるから俺の方に被害が及ばない。ここで神の使徒による広範囲攻撃でも受けたら死ぬからな。


 こうして進むこと200階層。


 ――200階層。


「ふむ、次は緑か」


「グリーンドラゴンね! 不味そう!」


 ――300階層


「赤、か」


「レッドドラゴン! 美味しそう!」


 ――400階層


「今度は青か」


「ブルードラゴン! 脂身が少ないから多くの肉が食べられるわ!」


 その後100階層ごとにドラゴンが出てきて。

 その後はホーリードラゴンにブラックドラゴン。


 万策つかたか? と思ったら今度はドラゴンが2体出てきたり。


「……流石に飽きたぞ。ボスドラゴンも対して強くないし、それまでにいる魔物達も弱い。こんなのが上級ダンジョンでいいのか?」


「もう! 人間基準で作られたダンジョンなんだから当たり前でしょ! ほらようやく1000階層よ」


「あぁ」


 999階層を踏破し、1000階層のボス部屋の扉を開ける。


 ――ギィィィン


「あれは……狼か」


「ワォォォォン!」


「ち、違うわ。あれは狼なんかじゃない。神獣フェンリルよ」




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