第18話 束の間の休息
「てめぇ、次、龍人族と間違えたらぶち殺す」
「あっ、………」
司会の男は恐怖で言葉を失った。
「さ、行きましょ。相手は壊滅、戦闘不能。私たちの勝ちよ」
「そうだな。じゃあ行くぞ」
「ええ」
俺たちが入ってきた入口から戻る。
「凄いですね。良い戦いぶりでした」
「受付嬢か」
「その呼びたはって、はぁ、いいです。それよりエルガさんは魔法使いではなかったてすか?」
「あぁ、武術は初めてだ」
「その割にはAランク冒険者を圧倒してましたね」
「さすがに人には負けん」
そう言って歩き出す。横をヒュウランが歩き、後ろを受付嬢が歩く。
「そうですか。龍人族と言われると怒るんですよね。理由を聞いても?」
「簡単な話だ。龍として誇りを失ったあんな劣等種と一緒にされたくないだけだ。貴様ら人間もゴブリンと一緒にされると怒るだろ。同じだ」
「そ、そんなに違うんですか」(てっきり龍人族であることに辟易しているのかと思ったわ)
「そういえばちゃんと俺らのランクはAランクになるんだよな」
「えぇもちろん。既に上には話を通しております」
おぉ。なかなかやるな、こいつ。
ちゃんと確認はできているとのことで、安心して戻ることが出来る。
「ちゃんと仕事はできるみたいね」
「えぇ、任してください! これでも受付嬢リーダーをやっていますので! それにしてもヒュウランさんの魔法凄かったです!」
「そう? あれくらい普通よ。ただ相手が弱かっただけ」
ヒュウランが言っていること正しい。俺達がやっていることは俺たちからすれば普通のこと。しかし人からすればその力は計り知れない。
まぁなんでもいいが、早く戻りたい。
戻ってAランクに昇格すれば上級ダンジョンにも心置きなく挑める。
◇
「こちらがAランクの冒険者カードになります」
「ふむ、金色になったか」
「ありがとう。ほら、エルガ行きますよ」
「あ、ああ」
居酒屋と化しているギルドに戻ると色々な人間から声をかけられたが全て一蹴し、早速ランクを上げてもらった。
「そういえばAランクになったし、上級ダンジョンに行って攻略しても、誰も何も言わないわね」
「あぁ、そうだな」
まだ街を出ていないから周りの目もあるのヒュウランの口調がフランクなものになっている。が、気にせず会話を続行することにした。
「それにしてもエルガが実力を証明してから攻略に進むとは思わなかったわ。てっきり『人間がほざいたところで事実は変わらん』とか言いそうなのに」
「……。くくっ、ははははっ」
「ちょ、ちょっと、何がおかしいのよ!」
「いやなに、何もおかしいことは無い。ただ俺は自分の成したことを人族なんざに否定されたくないだけだ。上級ダンジョンを踏破した事が事実だとしても偉い人間が嘘だと言えば嘘になってしまう。たかが人間に我々が成したことを否定させないためにわざわざ実力を証明しただけだ。ヒュウランの予想は俺の本質を捉えている。まぁ80点ってとこだな」
「ふぅん。高いのか低いのかよくわかない点数ね」
「まぁな」
と、下らない話をしていると、
「そこの別嬪さんを連れてる兄ちゃん! 串焼き買ってかないか!」
へぇ、串焼きか。やけにいい匂いが漂っていると思えば串焼きが売っているらしい。
「ふむ、いいだろう。ちなみになんの肉を使っている?」
「おっ、買ってくれるのかい? うちは普通のオーク肉を使ってるぜ! オーク肉を使ってるとこは他にもあるが多分ウチが1番売れてるな! なぜならタレが美味いからだ」
「ほぅ、そこまで言うなら買おうではないか。ヒュウラン、金くれ」
「はぁ、まあいいけど。私は一本くださる?」
ヒュウランのことだから「無駄使いはダメ」なんて言ってくるかと思ったが、お許しを貰えたらしい。
「じゃあ俺もいっぽんで。いくらだ?」
「まいどー! 2本で200ネガだ!」
「はいよ」
ちょうど200ネガ渡すと串焼きを手渡される。
「感想は帰ってきた時にでも言う。じゃあな」
「ありがとなー!」
その場を離れ、串焼きを口に放り込む。
「んん!」
「んん!」
「美味いな!」
「美味しいです」
「こりゃ、帰りに大量に買うことになるな」
「そうね……」
さて、束の間の休息も終え、串焼きを食べて小腹も満たしたことだし上級ダンジョンまで行くぞ!
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