第15話 決闘
「いや、俺はギルドの介入を要求する」
「……は?」
どうやら、ザッツくんは俺の言ったことを理解出来ていないようだ。
「だから、俺はギルドの介入を要求すると言っている。いいだろ、受付嬢」
「内容にもよりますね。あと受付嬢って呼ばないでください」
俺に話を投げられた受付嬢は内容次第ではギルドが介入してくれると言ってくれた。
「じゃあ、端的に話せば、もし俺らがこのアホに勝てば俺らの冒険者ランクをAランクまであげてほしい。それが俺たちが決闘を受ける条件だ。お前らだって、俺たちに要求してきたんだから俺達も要求してもいいよなぁ?」
「べ、別にボクの方は構わないさ。なんせリスクがないからね」
「あぁ、そうか。じゃあ言い変えよう。俺たちが勝てば、お前たちのパーティーの冒険者ランクと俺たちの冒険者ランクを交換する。つまりお前らはFランク冒険者になるわけだ」
冒険者は実績を積み重ねて、ランクをあげる。俺達ととザッツのパーティーランクを入れ替えれば、どうなるか。実績のない俺たちと変わるんだ、1から稼げない依頼を受けてコツコツと頑張らなければならない。
「……」
「……ギルドの方はその条件を飲めます。ザッツ様の素行は目に余るものがありましたが実力は確かなので降格など出来ないでいました。しかし、ザッツ様のパーティーより明らかに上であると判断した場合、こちらにも得がありますので、こちらは介入致します」
よし来た。龍である俺が人間の、それも冒険者などという小さい括りのヒエラルキーの最下層に居ることは許さない。Aランクは上から2番目ではあるが、簡単にSランクに昇格出来るだろ。
「あなた、結構どうでもいいところも気にするのね」
「お前は悔しくないのか? ヒュウラン。神の使徒なんだから、人の頂点にくらい立っていたいものだろ」
「別にそんなこと思わないわ。とりあえず行きましょ」
受付嬢に案内されながらギルドの奥部に行く。
途中から左右に別れる通路を右側に行ったので、ザッツ達は左側に行ったのだろう。
そこからもう少し歩けば、左側の扉から控え室に案内された。
「こちらで準備してお待ちください」
「あい」
受付嬢はこんな業務もするのか、などと考えていると、受付嬢は戻って行ってしまった。
「なんだか魔法的な圧があるな、ここ」
「? ここ、空間魔法が適用されているじゃないですか。外から見たギルドよりも明らかに広く感じませんでした? 途中で別れた通路、あそこからですかね」
「へぇ」
空間魔法、ね。決闘をする模擬戦場にもなにか魔法がかけられていたりするのだろうか。傷を負わない、とか。
「こういった決闘は人気らしいですよ。暇を持て余してる冒険者達が居たでしょう? 彼らはこういう決闘を楽しみに待っているんです」
確かに、ギルドって依頼を受けて完了報告するための受付だけじゃなくて、明らかに酒持ってるやついたから居酒屋も併設なんだろうなと思っていた。だからまぁ、戦線を離れたヤツら達はあぁやって昼間のギルドで酒を飲んで、面白そうなものがあれば集るんだろうな。
――ガチャ
「準備が出来ましたので来てください」
さっきの受付嬢が入ってきて、着いてくるよう指示してきた。
先程入ってきた扉から出て、左折する。そのまま歩き突き当たりを左に曲がると、広がった空間が見えた。
「ここです。彼らも向こう側にいますのでさっさと行ってボコしてきてください」
「ハッ、なんとも殺意のこもった言葉だな」
「私顔はいいのでよく彼に口説かれるんです。めんどくさいので断っているのですが、しつこくて。なのでボコボコにしてきてくださいっ」
うん、そんなこと笑顔で言うことじゃないんよ。まぁ言われなくてもするけどね。ザッツ達は一応実力者らしい。だから圧倒的な差を見せつけてやれば見学者全員、俺たちの強さを理解する。
そうすれば上級ダンジョンを踏破しても怪しまれない!
我ながら完璧な考えだな。
「馬鹿なこと考えてないで早く行きますよ」
「おう」
ヒュウランは面倒くさそうに、胸の辺りで腕を組みながら面倒くさそうに歩き出す。
……なるほどっ!ヒュウランの意図を受け取った俺も精一杯面倒くさそうに歩き出す。具体的には頭をポリポリかきながら、欠伸をして。
(なんだか変な勘違いをされている気分ね。私は本当に面倒臭いからこの態度だけれど、エルガはきっと違う考えなんでしょうね)
面倒くさそうにしているやつがイキイキしているやつをボッコボコにするとより強そうに見えるからな! ハハッ!
(あぁ、やっぱりダメですねこりゃ)
そうして少し通路を進めば広がった空間にたどり着く。屋外にでも出たのかと思ったが、上を見れば天井があるので室内なのだろう。特に闘技用のリングなどはない。普通に戦えってことか。
「新人冒険者頑張れよぉ!!」
「俺はお前たちを見込んで全財産を賭けた! 勝ってくれよ!」
「ボーデン貴様、負けたら許さないからな! 俺はお前に全財産賭けたぞ!」
「キャー! ボーデン様カッコイイ!!」
「ねえねえ! あっちの人もかっこよくない!?」
「あぁ、ダメダメ。隣が美人すぎるわ。ボーデン様は可愛ければ誰でも囲うけどあの人はあんなにイケメンなのに美女を1人しか連れてないでしょ? 私たちに勝ち目はないわよ。さ、ボーデン様を応援しましょ!」
どうやら、居酒屋と化していたギルドに居た連中以外も観戦しているらしい。
それに、全財産を賭けてるアホが数名いるが、確定で全財産失うやつがいるのも哀れだ。俺の方に賭けておけば良かったものを。
「相手は4人ね。彼はやっぱり魔法職のようね。ほか3人はタンク1人に戦士が2人ってとこかしら。女を前に出して自分は後方、ね。ダサすぎるわ。早々に片しましょう」
「あぁ」
「皆さんこんにちは! 司会を努めさせていただきます、モーリーです! 彼らの説明は不要でしょう! 片や貴族のパーティー、片や昨日突如現れた底知れぬ美男美女パーティー!それでは! 両パーティー集まったところで、試合開始!」
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