第14話 貴族の息子のだる絡み
「ヘイ、そこのレディ! このボクとパーティーを組まないかいっ?」
「おい、あいつ行ったぞ」
「さすが、貴族の息子は違ぇな」
「まぁ、顔がいいからなぁ」
黄金と翡翠色に彩られた豪華な装備をした男が現れた。
周りの反応を見るに、貴族の出で、顔も整っているらしい。
「誰ですか?」
「ボクかい? ボクの名前はボーデン・ザッツさっ! ザッツ伯爵家の長男だよっ」
「そうですか。あなたは昨日、ここで私たちを見ましたか?」
「? もしボクが昨日ここで君と会っていたら、今回と同じく、話しかけていただろうねっ。つまり、今日が初対面! だよっ((キリッ」
一瞬、ヒュウランの発言に戸惑ったザッツであったが、気持ちの悪いことをつらつらと言う。なんだか、行動までも気持ち悪く見えてきた。
「そうですか。それでは」
ヒュウランはなんでもないかのようにスルーする。
一方のザッツとやらは呆けてしまっている。今までチヤホヤされていただけに、このように無視されるのは初めてなのだろう。完全に戸惑っている。
「ちょ、ちょっと待ってくれないk――」
「――やめとけ。あいつはそういうやつだ」
俺はザッツの肩に手を置き、首を振る。
「う、うるさい! それにさっきから君はなんなんだ! 君は彼女の何だ!」
「おぉ、急に大声出すなよ。ヒュウランは俺の案内人。人里に降りたことの無い俺をサポートするために派遣されただけ」
「あ、案内人?」
どうやら、言葉を理解できなかったらしく、またもアホみたいな顔をする。
「そうだ。まぁ、貴様には関係ない。気にするな」
ほんのわずかだけあったザッツへの興味も無くし、ヒュウランの後ろを着いて歩く。ヒュウランの目的は受付のようだった。受付自体は5つあるが、少し早めの朝の時間帯ですら受付を利用している冒険者はいない。
「冒険者が利用するのはもっと早い時間帯。それと、日の入り前後よ。この時間を避けることをおすすめするわ」
「お、おう」
俺の心を読んだだろと言いたいくらいバッチリなタイミングで冒険者の利用時間を教えてくれた。
「いいかしら?」
「は、はい!」
ヒュウランが選んだのど真ん中の受付。受付嬢は昨日担当してくれた人と同じようだ。
「実は私たち、まだ冒険者じゃないのよ。それで冒険者登録したいなと思ってね。可能かしら?」
「は、はい。可能です!」
「……そんなに気張る必要は無いわ。いつも通りの接客をしてちょうだい」
「わ、分かりました。連れの方もご一緒に登録なさいますか?」
「えぇお願い」
「それではこちらの紙に記入をお願いします。あ、字の読み書きは可能ですか?」
「ありがとう。それくらい出来るわ。エルガ、こちらに来てください」
ヒュウランの隣に立ち、一緒に紙を見下ろす。記入事項には名前、年齢、職業の欄がある。
「俺って何歳だっけ」
「17歳よ。ちゃんと覚えて」
「はい」
そういえば、田舎から出てきた若者なら、無知でも怪しまれないと言ってたな。ヒュウラン的には若者は17歳って考えなのか。
「職業は魔法使いでいいか? 俺、武術はからっきしなんだ」
「……魔法使い二人のパーティーって怪しまれないかしら? でも、そういうところも有りそうだし、別にいいですよ。魔法使いにしましょう」
記入を終えた俺たちは紙を提出した。その際に、銅色のカードを受け取った。
「お2人は登録したばかりなので、Fランクからのスタートになります。説明はしますか?」
「えぇ、一応お願いできるかしら」
「かしこまりました」
曰く、冒険者のランクは低い順にF.E.D.C.B.A.Sの順。
曰く、冒険者同士の争いにギルドは基本介入しない。
曰く、冒険者同士で争いになり、闘うなら、負けた方が全て悪い。
曰く、ギルド内での殺傷行為は禁止。ただし、外の模擬戦場なら可。その際、ギルドに介入を求めることも可能。
曰く、他の冒険者の戦利品を盗むのは禁止。もし、した場合は、ギルドから追放される。
曰く、受けられる依頼は自分の冒険者ランクと同じかひとつ違いまで。
「ならば、昨日の俺はまだ罪には問われないな。冒険者登録してない状態でなら、ここでのルールは適用されないだろ?」
「勿論です。エルガ様の件は不問にさせていただきます」
よし。あとは、少し実力を証明して、上級ダンジョンを軽く攻略して終わり、かな。
「ちょ、ちょっと待ちたまえ!」
「なんだよ。うるさいなぁ」
話しかけて来たのはザッツ。
「君たちはパーティーを組むんだろう? それも魔法使い2人で」
「だからなんだ」
「ボクのパーティーと決闘をしよう。模擬戦場で」
「構わないが……ギルドはそれで構わないか?」
「何ら問題はございません」
との事だ。つまり、マッチング成功。
「そうか。そんなことよりザッツ。貴様の冒険者ランクはいくつだ?」
「ランク? Aランクだが」
ふむ。確か、冒険者ランクに適した依頼しか受けられないんだよな。ならば、Fランクのカス以来をこなすよりAランクのデカい依頼を受けてたんまり金をもらって、美味い飯を食べる方がいいよな。
「そうか。お前の要求は恐らく、ヒュウランだろう?」
「……わかってるじゃないか。別に決闘をしなくとも彼女を渡してくれても構わないのだが」
「いや、俺はギルドの介入を要求する」
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