第12話 和解
「あいよ。龍人族の
「あぁ!?」
「あっ」
こいつ、言いやがった。誰が龍人族だ。あんな貧弱なヤツらと同じにするな!
「てめぇ、自分が何言ったかわかってるのか?」
「ちょ、エルガやめなさ――」
「――ちょっと黙ってろ、ヒュウラン。あんたも分かるだろ? この気持ち。神の使徒であるお前が、人族やオーク共から性の捌け口として見られたらどうだ? 腹が立つだろう? 同じことだ。俺は、ドラゴンである俺は、俺らの劣化版である龍や龍人族と間違われるのがすごく不快だ」
俺のヒュウランへの喩えと、俺が今置かれている状況があまりにも違いすぎるため、少し横暴な喩えかも知れないが、俺からしたら同じようなものだ。
「
「うるせぇよ。言ったまんまだ。わざわざ聞くんじゃねぇ」
「エルガ」
「うるせぇよ――」
「エルガ!」
「……んだよ」
「
「……」
ヒュウランの言っていることは正しい。確かに、最初に
だから、人間を見下したりしてはいたが、差別的な偏見はしていない……と思いたい。だが、神やヒュウランが言いたかったのは、人間だけじゃなく、龍や龍人に対しても下に見るような思想を抱くなと言うことだと……思う。
「どうなんですか? 質問に答えてください」
「確かに、言われた、です」
「そうですよね。あなたは何のために神になるため、こうして人の姿を取っているのですか」
「それ、今必要なこ――」
「質問に答えろ」
「は、はい。俺らドラゴンは恩義を大切にする。昔、
「はい。
珍しく饒舌なヒュウラン相手に呆気に取られてしまったが、彼女が言っていることは間違っていないと思うし、正しい。なんなら今までの俺が間違っているとすら思ってしまう。それほどまでに俺の考えが浅はかであった。
「確かに、貴方は強いです。その力を人族や龍人族に見せつけるのも大いに構いません。ドラゴンからすればあなたの力は普通なのかもしれません。しかし、人から見ればドラゴンも龍人も同じく異常な力の持ち主です。店主も貴方を下に見て龍人族と言った訳では無いです。ただ、しっぽを生やしたあなたの姿が龍人族に、酷似しているのが悪いんです」
「全部俺が間違っていたのか?」
「そんなに卑下することではないです。そもそも全部間違っていた訳ではありません。間違っていたのは9割くらい? ですかね。まぁ貴方はまだ人の中の赤子のようなものですから、間違えることはあります。そういうのをこれから学べれば、いいと思います」
9割って、全部間違っていると言っているようなもんだ。ただまぁ、ヒュウランの言う通り、人の生活をしたことすらない俺は赤子のようなものだ。思考もドラゴンその物だし。悪いのは多分、全て俺だ。振り返ってみれば、人や、ドラゴン、龍人を見下すような発言、思考しかして居ないように思う。
「そう、だな。感謝する。ヒュウラン。店主もすまなかった。ついカッとなってしまった」
「はい、感謝を受け取りました」
「オレもすまなかったなァ、
「い、いや、そう言うわけではないのだが……」
「プルプルしていますよ、エルガ。直ぐに思考を切り替えろとは言いません。今は説明してあげるべきでしょう」
「そ、そうだな」
てっきりここでキレたらヒュウランにまた怒られると思い、さっきの約束もあったので、我慢してたのだが、ヒュウランから許しを頂いた。
「俺をレッドドラゴン等の下等生物と一緒にするな。俺は龍だ。お前らで言う六竜王の父、始祖龍だ。わかったか?」
「ろ、六竜王や始祖龍って、おとぎ話の話じゃ」
「違う」
「そ、そうか。すまなかった。改めて謝罪する。確かに六竜王や始祖龍から見ればドラゴンなんて、下等生物だな、本当にすまなかった」
その後、店主とはきちんと和解し、仲良くなった。
後に店主から聞いた話だが、この世界の人々は六竜王や始祖龍を変異したドラゴンだと思っていたらしい。ドラゴンの特殊個体とでも思っていたらしく、俺の説明を聞いて、全くの別物だと理解したらしい。
◇
※あとがき
ドラゴン→この世界のドラゴン。レッドドラゴンとか、アースドラゴンとか。
龍→エルガ達のこと。六竜王、始祖龍を指す。
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