第4話 神の使者
「そろそろ神になるつもりは無い?」
人里離れた森の中で、俺が優雅に日向ぼっこでもしていると、神からそんな提案があった。
「神ぃ? この世界じゃあ、実質俺が神みたいなもんだろ。今更なるようなもんじゃない」
「いやぁ、そうなんだけどさぁ」
妙に煮え切らない態度をとる神にイライラが募る。
「おい、ハッキリ言え。この俺がわざわざ時間を取っているんだぞ」
「そう言うところなんだよなぁ」
「チッ、御託はいい! 早く言え!」
あっ。
「……あーあ。やっちゃったねぇw」
くっ、急いで、魔力探知をしてみると、各地に散らばっている我が子らが一斉にこちらに飛んできている。ついカッとなって押さえ込んでいた魔力を解放したせいで、集合の合図と勘違いしてしまったのだろう。各地に散らばっている我が子らを集める方法として、俺が押さえ込んでいた魔力を解放することによって集合の合図としていたのだが、どうしたものか。
「貴様のせいだぞ」
「まぁ、後戻りは出来ないよ。それで私の方の話はどうなったのかな?」
「神などにはならん。お前を見ている限り、いつも忙しそうではないか。俺はそうはなりたくない」
「うっさいなあ! 私の言うことが聞けないっていうの!? 君を死の淵から助けたのは誰!? 今こそ恩を返すべきだと思うんだけど!」
くそっ。その事を持ち出されては何も言えんではないか。
「……何をすればいい」
「ふふっ、ドラゴンって楽ねぇ。義理堅い性格の種族だけあって、恩を盾にすればなんでも言うこと聞いてくれるっ」
「口に出して言うことじゃないぞ。それに、早くやる事を教えろと言っている」
「あぁ、ごめんごめん。えっと、君は今この世界に来てからどのくらい経ってるっけ?」
それって必要な質問なのか? 神になることと関係ない気がするのだが、神になるには最低でも何年は生きなきゃ行けないとかあるのかもな。と思いつつもどれくらい経っているか考える。
「数億年、いや、数十億年程度か? 正直数えていないから分からないか、人々はまだ20回も滅びていない」
十何回とかだった気がする。
「そう。そんだけ生きてれば問題ないわね。実はこの星が私の管轄から外れそうなの。ほかの神がこの星を管理し始めたら、君の居場所は無くなるわ。真っ先に粛清される。だから君が神になって、この星の管轄者になりなさい」
「そしたら、調停者はどうすればいいんだ」
「君の子供たちがいるじゃない」
あぁ。確かに。
聞けば、俺の遺伝子を持つ6つの卵を送り込んだのはこの時のためらしい。俺が神になった時、調停者を選べるように。まぁ実際、俺の手伝いとして、調停者の真似事をさせたことはあるが。
そんで、この星が俺の管轄外になった時、その時の調停者を神にして、子供の中から新たに調停者を選べばいい。
最後に神になる子には少し苦労をさせることになるが。兄弟全員が、神になり、自分の元からいなくなる。それに、調停者として、1人で世界を見る必要があるから、その分の負担もでかい。俺や、ほかの兄弟の場合は手伝ってくれる兄弟がいるが、自分の時はいない。1番寂しいし、1番忙しい。可哀想だ。
「それで? 俺はどうやって神になればいい?」
とても重要なことだ。
「人の生活を知ること、だよ。これから君には人間の街に行って人を知ってもらいたい」
「……正直気乗りしないが……。期間はどの程度だ?」
「君が人を知り、人間の生活に慣れるまで。まぁ君なら数百年あれば終わると思うよ」
数百年……。長い、長すぎる……ッ。
「て言うか、人の生活を知る必要はあるのか? 俺は魔物の生活を知っている。お前は人間主体の世界を作っているが、俺は魔物主体の世界でも構わないと思っている。そっちの方が運営が楽だ」
「そういう所だよ。まずは、プライドを捨てろとは言わないけど、その傲慢な思考をやめなさい。人は成長するんだよ。その成長を見るのも楽しいんだ」
うーん、よくわからん。だが、俺が神にならなきゃ、今の神の後任の神から粛清対象にされて殺されてしまう可能性もあるらしいし。やるしかないんだよな。数十億年も前だが、こいつに助けられた恩があるし、恩を返す前に死ぬ訳にもいかない。
「わかった。やればいいんだろ? でもよ、ドラゴンである俺が人里に行ったら騒ぎになる。生活ところではないだろ」
「ん? 何を言っているのかな? 君が人の形を取れば何ら問題は無いよね?」
俺が人として生きる、だと? 誇り高きドラゴンが劣等種である人間と同じ姿形で生活すると言うのか? そんなことが許されるのか?
「まてまて、俺は人化など出来んぞ? 好き好んで人化して人間の町に降りていった仲間も居たが、俺は出来ない」
「その事なら大丈夫。私がやっておくから。とりあえず私はやることがあるからここでお暇するよ。そっちに私の使徒を送るからその子の指示に従ってねー」
「おい! 待て!」
その後、何度も呼んだが、神からの声はかえってこない。……あいつ、やりやがったな。
仕方ない、あいつが送ると言っていた、使者とやらを待つか。
そうして、待つこと数分。
「親父!」
「お父さん!」
「お父様!」
「父上!」
我が子らの方が使者とやらより早くやって来た。
「親父! なんかあったのか!?」
あぁ、そうなるよな。急に集合の合図を出したし。
「いや、ちょっとカッとなった時につい、魔力を解放しちまって。特に用はないんだ。みんな申し訳ないな」
俺がそういうと、みんな「良かったぁ」とその場に崩れ落ちた。まぁ俺が急に集合かけるくらい大変なことがあったと勘違いしたならその反応は間違いでは無いな。
「随分と慕われているのですね」
そんな、親子の時間の邪魔をするのは――
「初めまして。
いつか見た神と、瓜二つな美貌持った女だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます