第3話 世界の始まりと神の提案
俺が卵を温めること数ヶ月。
こんな面倒臭いことを長引かせたくは無い俺は食事すらも抜き、一瞬でも卵が冷えることの無いよう、卵を温め続けた。ドラゴンである俺は数ヶ月食事を抜いたとて、死ぬことは無い。体力はそろそろ尽きそうだが。
そんなある時、異変が訪れる。
「お? やっとか」
温めていた卵のひとつにヒビが入り始めたのだ。
――ピキピキ
「キュウ!!」
出てきたのは赤い鱗を持つドラゴンだった。
レッドドラゴンか? ブラックドラゴンである俺の遺伝子を持っているとは思えんな。
だが、まあ、俺の子なのだろう。
身長は1m弱。通常のドラゴンの子よりデカイな。俺が知る赤子は50cmもあればでかい方だったと言うのに。
そして、残りの5つの卵は直ぐに割れた。
残りは、それぞれ、青、緑、茶、白、黒色のドラゴンが生まれた。
統一性が無く、本当に俺の子か疑う程だった。
これが後の六龍王の誕生だった。
長男、フラム
長女、ディーネ
次女、ヴェンネ
次男、ボーデン
三女、セインネ
三男、ブイヘイド
それぞれが炎、水、風、土、聖、闇属性が得意らしい。神に教えて貰った。
6頭全員が生まれ、名前も決まったが、問題がひとつ浮び上がる。
「食料が無ぇ」
そう、ここには食用植物等はあるが、動物がおらんのだ。
「神よ! なんでもいい! 肉をこいつらに食べさせたい! 次にこの世界に現れるのは魔物で頼む!」
聞こえてるか分からないが、とりあえず叫ぶ。
すると、「おっけ~」なんて、緩い声が聞こえたが、翌朝には俺の魔力感知に生き物が引っかかった。
ダッシュボアという、イノシシの魔物を狩り、わが子らに食べさせる。
皆、「キュゥ~ン」などと、喜んでくれる。
そんなこんなで数千年が経過し、わが子らはとっくに成龍となり、自立できるほどになったのだが……。
「親父ぃ~」
「お父様!」
「父上!」
誰も俺の元から離れようとしない。
「いい加減にしろ。そろそろ自立してくれ。これ以上俺に手間をかけさせるな」
と、言うのも神が、そろそろ人間を作り出そうと考えているらしい。
こいつらの世話をしていると、人間の方に気が向けられない。
「お前らは自分を高めるため、向こうで稽古してこい」
そう言うと、わが子らは飛び立って行った。
ここから数千km離れたところで稽古しているらしく、そこの自然は破壊され、そこら一帯だけ砂漠と化しているらしい。世界の調停者としてどうなのかと思ったが、仕方ないだろう。
そんなことを思って数十年。神がようやく人間を作った。というか、連れてきた。
朝起きると、遠方にたくさんの気配がしたので行ってみると、ひとつの人間の集落があったのだ。
神曰く、「ちょっと他の世界から連れてきちゃった!」らしい。神が運営するもうひとつ世界の人々が戦争を起こし、滅びた。うち、生き残った人々は原始的な暮らしを始めた。その原始人のうちの人の集落をこちらに持ってきたらしい。数はおよそ100。
その後神は定期的に人を送り込んできた。ただの人以外にも、ドワーフやエルフ、獣人族なんかも連れてきていた。そんな中で世界各地に現れた人々は1万を超えた。当然、100以上の集落があるわけで、争いが起こらないことはなく、戦い、その後合併するか殲滅するか別れたが、多くの勝ち組集落は合併を繰り返し、いつしか国を作った。
繁殖力の強い人族はその数を増やし、繁殖能力の低いエルフ、ドワーフ、獣人は人族とは離れた所で暮らし始めた。
ここまで来るのに数万年。
人々は国を興し、戦争を始めた。しかし、その戦争は呆気なく終わったのだ。
なぜなら我が子であるフラムとディーネが、互いの国の兵士を皆殺しにしてしまったから。
経緯としては、どうしても勝ちたい→自分たちの力だけでは勝てるか分からない→目撃情報のあるドラゴンを味方につければ勝てるのではないか→とりあえず行くか。
この流れで双方の国はそれぞれフラムとディーネの元を訪れたらしい。しかし、2人の機嫌を損ねた両国の兵は皆殺し。戦どころではなくなった両国は和解した。
これを機に、我が子らは炎龍王、水龍王、風龍王、地龍王、聖龍王、暗黒龍王と呼ばれ始め、彼らは六龍王と呼ばれた。
……俺? 俺の二つ名は始祖龍。我が子らが、俺の凄さや容姿を吹聴したせいで、俺は六龍王の父として、この世界最初の生物として、始祖龍と呼ばれてしまった。
そんなことから幾億年後、人々は滅んでは繁栄を繰り返した。高度な文明を築いては、始祖龍、または六龍王に喧嘩を売り、滅ぼされる。あるいは、その高度な文明で世界を滅ぼすほどの力を得ると、世界の調停者として、エルガが滅ぼす。
滅ぼされた人々はまた、1から発展した。
しかし、歴史は繰り返し、十数回も滅んだ。
そんな、人々の十数回目の発展中、エルガの元へ神からの提案が来る。
「そろそろ神になるつもりは無い?」と。
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