第18話 プレイヤーvsプレイヤー
トイレの入り口から観察続行していると、あんのじょう戦闘が始まった。
初手を繰り出したのはやはり山野――鎧を着た荒っぽい男だった。
剣を振りかぶって大戸に斬りかかる。
だが、大戸はその足元に杖先から火球を撃って炸裂させる。
「あっちぃ! くそが!」
山野は後退するが、もちろんそれで勝負が終わるわけがなく、山野は諦めず斬りかかり、大戸はそれに火球で反撃し、戦闘は過熱していく。
戦闘は大戸の方がリードしていた。
剣で迫ってくる山野をたくみに火球で牽制し、近づかれると、杖の先から魔法の衝撃波のようなものを出して距離を離す。
自分の得意レンジを保って戦っていて魔道士かっけーってなるな。パンチと投石で戦う勢としては。
「ちっ! くそうぜえ戦い方しやがって……」
「山野お前じゃ僕には勝てない。ダンジョン内でのレベル上げも戦闘訓練も最近サボってただろう。その上芳賀さんに嫌がらせするんだからどうしようもない奴だよ。……でもパーティを組んでたよしみだ、ダンジョンから出て二度と戻ってこないなら見逃してやる」
大戸は小さい子供に諭すような調子で言っている。
山野の目尻がピクピク痙攣した。
「てめぇクソ生意気なこと言ってんじゃねぇぞ……。思い知らせてやるよ。俺にはアレがついてるんだから……」
山野はスマホを操作し始めた。
ダンジョンアプリを使っているみたいだけど、何するつもりなんだろう?
「ってめぇ!? 何見てやがる!」
ぶち切れた言葉は、俺の方に向けられたものだった。
こっちを見て山野がキレている。
しまった、気になりすぎてつい近づいてしまった。
だってしかたないじゃないか、プレイヤー同士の戦いなんて始めて見るし。
それにこれから先プレイヤーと戦うことがあれば、参考になるかもしれないし。
と誰にともなく心の中で言い訳をする。
そういうことってあるよね。
しかしストレートにキレられたらさすがに気になっても見続けるわけにもいかないな。俺は「すいませんっしター!」と三下っぽい演技をしつつそそくさと立ち去っていく。
駅の11番ホームへの階段を降りていく寸前、山野がスマホから何かを取り出すところが見え、その後に続くより激しくなった戦闘の音を聞きながら、俺はホームの先端へと瓦礫を避けながら進んでいった。
「ふぅ、前見た時も険悪そうだとは思ってたけどガチでやりあうとはな~」
パーティってギスるものなんだな。
俺はソロでダンジョン潜っててよかった。
「あれ、ここの線路は封鎖されてないんだ」
ホームを歩いて先端まで行くと、そこから線路が延びていた。
いや、駅なんだから線路があるのは当然なんだけど、他のところは屋根が崩れて線路が埋もれていたり、ホーム自体が瓦礫の山で通れなかったり、木々が絡まって通れなかったりして線路の先に進めないような場所ばかりだったのだ。
そんな中で見つけた先に進める道。いや線路。
例の三人組の行く末も気になるけれど、しかし新たに気になる道が出てきてしまったら、これは進んでみるしかない。
俺は線路を歩いてその先へと行くことにした。
線路上にはモンスターもいた。ちっさいけど金属質の固いモンスターだが、固いだけで強いものではなかったので、サクッと倒してさらに先に進む。
しばらくは地下のトンネル内を線路は走っていたが、徐々に上り勾配になっていく。
途中から地上に上がるタイプの鉄道のようだ。
しばらく上り坂が続いて、「しんどいな~下り坂がいいな~」と思い始めた頃、トンネルを抜けて線路は地上に出た。
すると、意外なものが俺の目に飛び込んできた。
「観覧車……だって?」
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