第16話 ファストトラベル解放
「ふぅ、無事離脱できた」
俺は早歩きの足を緩めて息をつく。
さっきの3人組の姿はもう見えない。
「まあ、そもそも追われてるわけでもないんだけど。プレイヤーはモンスター以上に未知数だからな」
装備品やアイテムには特殊な効果を持ったものもある。
さらにプレイヤーは俺の『初期アバター』みたいなクラスをそれぞれを持っていて、それ由来の特殊なスキルも持っている。
そこに人間特有の腹芸、罠、詐欺、手のひら返しその他諸々の要素が加わると、どれくらい危険か予測が立てられないのが他プレイヤー。
シンプルに襲ってくるモンスター以上にある意味危険な存在になりうる。
と人間の危険性について思いを馳せていると、また、人間の声が聞こえてきた。
「こっちの方で見たんだけどなあ」
「初期アバターを? ここ一層だぞ?」
「でもあの格好は間違いない。初期装備で歩いてる人なんておかしいし!」
まただ!
また初期アバターを探すプレイヤーがあらわれた!
今度は男女二人組でキョロキョロしながら捜索している。
大きな声出しながら探してたから見つかる前に察知できたけど、いったいなんなんだ。
俺は指名手配でもされてるのか?
別に悪いことなんてした覚えはないぞ?
とにかく、ひとまずここを、いやこのエリアを離れよう。
これじゃ落ち着いてダンジョン探索もできやしない。
俺は足早に公園を抜けさらに一気に公園周辺の廃墟ビル群も抜けていった。
公園を出て、そこからさらに廃墟ビル群を見ながら道を進んでいくと、これまでになかった建築物が見つかった。
「おお~すごい、こんなものもあるのか」
それは大通りの突き当たりにある巨大な駅だった。
東京駅にどことなく似た外観で、地上部分だけでもかなり大きく見えるが、これで地下もあれば東京駅や新宿駅より広いかもしれない。
もちろん駅も廃墟化していて、外壁は蔦が絡まっているけど、それはそれでおしゃれポイントがアップしてる。
「これは入ってみなきゃ嘘だな」
木と草が自分の陣地だと主張しているせいで狭くなった駅入り口を、草木をかきわけて中に入ると、内装もまさに俺が知ってる駅だった。
広い空間に階段がいくつもあり、看板や案内板が色々な場所を示している。
ただ○番ホームや○番出口の色々な表示があるにはあるが、案内板の地図はほとんどがかすれてよく見えないので、自分の足で確かめるしかなさそうだ。
これは迷うなー。
ちゃんと表示がある現実の駅ですら迷うのに、読めない表示多数のこの駅じゃ想像しただけでやばい。
まあ、ここじゃ電車の時間に間に合わなくなるなんてことはないから、じっくりダンジョンステーションを見るとしようか。
このダンジョン駅は構造としては広い駅とだいたい同じ感じだが、廃墟の他の場所と同じく天井が落ちていたり、床の割れ目から草木が生えていたりして、ちゃんと滅んだ駅って感じがする。
階段も崩れていて登り降りできないものが多いが、そんな中で8番ホームへの階段は通れたので階段を降りてみると、いいものを見つけた。
「転送装置だ」
二つのモノリスに挟まれた石の台座。
スタート地点や、暗い地下空間にあったあれと同じ形のものがある。
しかしスタート地点のものは白色、地下のものは黒色だったのに対して、これは水色をしていて少し違う。
俺が台座に近付くと、薄い水色が濃いブルーになり活性化状態になった。
同時にスマホのダンジョンアプリが反応して、
==========
【ファストトラベル】
◆第一階層
・瓦礫の廃墟E
・駅構内
==========
と通知音とともに表示が出てきた。
「なるほど青の台座はチェックポイントか」
ここからファストトラベル――つまり別の場所に転移できる。
同じような青の台座か、あるいはスタート地点に。
スタート地点から駅まで、結構距離があったしこれは助かる。毎回ここまで歩いてくるのは大変だしな。
探索しながらもっといろんな場所の青の台座を開放していきたいね。
早速この台座を利用して一瞬でスタート地点の白台座に戻り、その日はダンジョン探索を終了して自宅へと戻った。
冷蔵庫が空っぽだったので、その後食料を買いに行きました。
翌日。
土曜日で会社が休みなので、嬉しいことに一日中ダンジョンに潜れる。
朝起きて朝食を食べ顔を洗い準備を調えた俺は、早速ダンジョンに入場した。
ダンジョンに入った俺はまず、いつものレベル上げルーティーンを行う。
ダンジョン探索を始めたけれど、それはレベル上げをしない理由にはならない。上げは上げでやっていかないと、将来の探索が危険になるし、サボりはNGだ。
というわけでまずはルーティーン通りのレベルアップをする。
あのコロシアムも、近づかないようにって警告しておいたからプレイヤーと再び会うことはないだろうし、変わらずルーティーンに組み込んでる。
今いける中で一番経験値おいしいから外したくないんだよね。
その甲斐あってクラスレベルは【初期アバターLv45】になったし、スキルレベルも色々なスキルがあるが、例をあげると【暗視Lv6】【自然治癒Lv5】【アーマーLv5】【炎耐性Lv4】【炎術Lv4】などと成長してきている。
【暗視】スキルなんてLv6まで上がると、あの最初は真っ暗でライトニングスライムの光以外何も見えなかった地下空間が、ちょっと薄暗い部屋くらいの感じでそこにあるもの全部普通に見えるようになってるから、スキルレベルを上げる恩恵は結構凄い。レベル上げる意味あるなと実感できる。
炎耐性や炎術はグレーターデーモンからドロップした悪魔の尻尾というアイテムを経験値化した時に主に成長したスキルだ。
炎の魔法を使うモンスターだからそうなったんだろうな。
しかし炎の魔術は【炎術】スキルがあっても使えない。【炎術】は『炎の魔術や技の威力を上げる』スキルだからだ。
つまり元々炎のなにがしかを覚えてる人にとってだけ意味があるスキル。「そんなもんのレベルを上げてぬか喜びさせるなよ」と言いたいところである。
とまあ意味があるのもないのも色々とレベルが上がっている。
レベルが上がるからこそルーティーンのモチベが上がるんで、この調子で停滞せず上がっていって欲しいものだね。
そうしてレベル上げルーティーンを無事に終えたら、今度はダンジョン探索の始まり。
ダンジョンと外を繋ぐ白の台座に戻ると、今までは外に出るだけだったが、今ではダンジョンアプリにファストトラベル先が表示されるようになったので、そこから駅廃墟にある青台座へと転移する。
すぐさま周囲の景色が変化し、もう次の瞬間には俺は駅の中にいた。
これにて一瞬で駅から探索再開。やはりファストトラベルはいいものだ。
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