第7話 ダンジョンインフルエンサー
喋りがうまく、顔やファッションセンスもいいこともあって、ダンジョンという枠を越えて人気者になった。
今ではもうダンジョンじゃなく海外旅行の写真をあげても自分が作った料理の写真をあげても大量にファンからのコメントがつく。
SNSの写真を見ると、高級レストラン、ブランド物のファッション、高級車、海外旅行と羽振りはめちゃくちゃいい。
またSNSだけじゃなく、テレビ番組にも出演したり、自己啓発本を出版したり、ダンジョンで一番成功した人の一人だと言える。
彼に憧れて――あるいはうらやんでダンジョンに突撃して痛い目にあって身の程をしったものは多い。
それでいてしっかりダンジョン攻略もやっていて、驚くほど大量のアイテムを入手している。何か企業秘密の方法があるのか、どうやってそんなに手に入れたのか不思議なほどのアイテムを売って稼いだお金で焼き肉を食べたりしているというわけだ。
羨ましい生活をしてるけど、俺には無理だな。アイテムが消えるんじゃそれを売って豪勢な焼き肉を食べることもできない。
なにかアイテムを持ち出す裏技とかないのかな。ダンジョンには様々なものがあるらしいから、うまく俺の【初期アバター】の特性を無効化するものが一つくらいあってもいいと思う。
「まあ、まずは強くなることか。ダンジョンの中を自由に歩けるくらい強くならなければ、どっちにしろ机上の空論だし。稼ぎに戻ろう」
俺は再び地下へ行き、ライトニングスライム狩りを再開する。
階段はやはり長かった。
俺はしばらくこの地下に籠もって電気スライムを倒し続けた。
しばらく、というのは数時間ではもちろんなく、数日、十数日、とずっと。
毎日ダンジョンに来て、例の地下に向かい、時間いっぱい狩ったら家に戻って寝る。そんな生活を繰り返していた。
俺の攻撃でスライムが弾け飛ぶ。
《ティロリ♪【雷マスタリー ↑Lv1】》
ドロップしたコイルを拾い上げて自分の経験値にする。
《ティロリ♪【暗視 ↑Lv2】》
発光を始める前でも暗闇の中にぼうっとスライムの影が見えるようになり、狩りが加速する。
《ティロリ♪【ダッシュ ↑Lv3】》
素早さが上がり、スライムの一発目のチャージが終わる前に攻撃をして倒せるようになり、さらに狩りは加速する。
ティロリ♪【自然治癒 ↑Lv3】
スマホからレベルアップの通知音が何度も聞こえる。
何度も何度も、モンスターを狩れば狩るほどレベルが上がる。
「っはーーー……楽しい……!」
ダンジョンに入ってからずっとモンスターを倒し続ける作業ゲーをしているけど、なぜか俺はとても愉快な気持ちでいっぱいになっている。
新しいスキルが増えたり、レベルの数字が上がったり、その通知だけで幸福を感じられる。
子供の頃、某クッ○ークリッカーにはまった時のことを思い出すなあ。
なんならずっと稼ぎ続けたいくらいだ。
走り回って息が上がっても、すぐに回復してまたスライム狩りを再開する。多分【自然治癒】のレベルが上がった効果は、こういう時のスタミナ回復にも役に立ってる。
おかげでまだまだ経験値を稼げる。
《ティロリ♪【★初期アバター ↑Lv25】》
初期アバターのクラスレベルも上がった。
このダンジョンに入ったものは最初にクラスが決まるが、これは特殊能力だけでなく基礎能力にも大きな影響を与える。体力、腕力、敏捷性などといった要素だ。
クラスレベルがあがると、それらの基本能力が上がり、またクラス特有の能力も強化される。(俺の場合はアイテムを経験値に変化させる時の効率)
スキルレベルというのはそれとは別の個別のいろんな能力。【暗視】【歩き】とか、いろんな能力の熟練度をあらわすもので、これは万人が全てのスキルを磨ける。クラスが一人一つなのとは大きな違いである。
レベルの数値を見た感じだと、クラスレベルはどんどん上がるけど、スキルレベルはなかなか上がらないみたいだ。スキルは種類が多い分一つ一つは上がりにくいって感じなのかな。
これらはアプリ【エリアN】のヘルプを見たら説明が見られる。
基本的なシステムは一応これで確認できるのは親切……いやスマホアプリならヘルプがあるのは普通か。
ちなみに★マークはスキルではなくクラスのレベルだよ、という意味のようだ。
「それにしてもLv25って結構早く上がるな。まあ、毎日同じこと繰り返してるから変化が少ないだけで、もうダンジョン入ってから一ヶ月半くらい経ってるからこれくらい上がっても不思議じゃないか。とにかく、レベルが上がって一層稼ぎが加速できるな。くくく」
この快感、たまらないね。
効率のいい狩り場を見つけた時ってなぜこんなに楽しくなるんだろうか?
「もっと大きくて強いモンスターで狩ればもっと効率いいだろうな………………いやいや、それは危ない考えだ。快楽よりも安全が第一。そこだけは忘れない。……お、いたいた。覚悟スライム!」
他のプレイヤーという脅威もあることがわかったし、それにも備えて俺は地下での稼ぎをまだまだ続けていく。
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