第4話 ダンジョンを進もう

 気を取り直して、翌日も俺は朝からダンジョンに入り脚魚狩りを始めた。


 巣を見つけ狩る。巣を見つけ狩る。


 その翌日もやる。さらに翌日もやる。


 途中気付いたが、数日でモンスターはリスポーンするようだ。倒して掃討した巣にモンスターが再び湧いていた。


 そうして十日ほど狩り続けて、結構レベルが上がってきたとともに、それ以上全然レベルが上がらなくなってきた。どうやらもう陸魚から手に入る経験値じゃ、さらなるレベル上げに必要な経験値には少なすぎるようだ。


 というわけで、新たなる狩り場を求めて、俺はこれまで入り口付近をうろついていた廃墟を奥に進んでいくことにした。


 歩くことしばらく……【歩き】スキルのおかげか、疲れず早く長距離を歩くことができたようで、良さそうなところをついに見つけた。


「お、公園か」


 井の頭公園みたいに、池があり木々がたくさん植えられていて、都会のオアシスという感じの公園が大通りの突き当たりにあった。

 もちろん、この廃墟のダンジョンでは公園も廃墟らしく草木が茫茫に繁茂していて、オアシスどころかジャングルになっている。


 雰囲気が変わればモンスターも変わるかもと探索を始めたその時。


「お、あれは蛇……といっていいのか?」


 ジャングルと化した公園の中を歩いていると、今度は脚の生えた蛇がいた。

 このダンジョン、モンスターに脚を生やすのが好きらしい。


「制作者に蛇足って言葉を教えてやりたいね。さて、次はあいつで稼ぎだ」




 蛇足も無事に狩ることは出来た。

 脚魚よりは動きが多少はやく感じたけど問題なく対応。俺も脚魚狩りで多少は強くなれているようだ。


 そして蛇足を狩った後は、松ぼっくりの戦士みたいなモンスターに白羽の矢を立てた。松ぼっくりに手足が生えて槍や剣を持っている、闇落ちキッ○ロみたいなモンスターだ。


 武器を持っていて常に集団行動しているため結構手強かったが、この初期アバターのシャツとパンツの装備で何度か切られてもたいしたダメージはなかった。

 まだ第一階層だからそんなに強くないのかな?


 とまあそんな感じで一ヶ月ほど色々と倒して行き、レベルを上げていった。

 クラスレベルも【初期アバター↑Lv21】まで上がった。


 なかなか順調にレベルを稼げていたのだが、このレベルになるとまた停滞してきた。

 また別の場所へと旅立ちの時が来たようだ。


 ワンランク強いモンスターを探したいけど、あまり遠くに行って強すぎるモンスターとエンカウントしてしまうのは困る。

 というわけで、まずは俺は廃墟と公園のすでに知っている場所に見逃しがないか徹底的に探索した。このエリアは今までの経験で安全だから、ここでちょっと強めの新モンスターを見つけることができればベスト。


 そうやって徹底的に探索している最中だった。


「やっぱりあったか、未発見の場所」


 崩れた瓦礫のかげに、地下へと続く階段が隠れているのを見つけた。

 地下鉄の入り口みたいな感じだ。ここに強めの新モンスターがいたらベストだな。


 早速階段を降りていったが階段は予想以上に長かった。どれくらい長いかというと、東京駅中央線エスカレーターくらい――いやその二倍くらいの長さだ。


 もう入り口が見えないくらい降りてようやく階段は終わった。

 帰りはこれ登っていくのかとため息つきつつ地下を探索していく。


 地下空間は広大なホールのようで、足音がカツンカツンとよく響く。

 床は石畳になっていて、床の上には地上と違い瓦礫はなく、その代わりに巨大な立方体の石が不規則に列し暗闇に浮かび上がっている。


 後方はわずかに外から入ってくる光で階段と壁があることが見えるが、見えるのは入り口付近だけで、前と左右は見渡しても壁は見えず暗闇に閉ざされている。


「へえ、面白いな。地上と全然違う。これはまた探索欲がわいてくるじゃないか」


 しばらく狩りを繰り返していたので、新しい景色にワクワクしながら前方へ歩いていくと――。


 ぽうっと闇の中に黄色い光が灯った。

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