第71話 俺は神剣を得た
無双正宗……これが……!
親父の代から夢見てきた伝説の刀。
それは黒檀の鞘に納められた打刀で。
鍔は特に特徴が無く。
柄にも無かった。
ただ……
ギラッと抜いてみると。
その刀身に浮かび上がる刃文の美しさが、溜息が出るほどで。
そこで、理解できてしまう。
これが伝説の刀なんだ、って。
「タケミ! 良かったね!」
リンが祝福してくれる。
ありがとう……!
「理屈以外の理由で納得できたみたいやな」
エンジュも嬉しそうだ。
伝説級の武具の鑑定ができたのが嬉しいのか。
俺も嬉しい。
信頼のおける人物に、この刀の真実を保証してもらえるなんて。
すると
「早速で悪いが、その刀でギリメカラを斬れ」
いきなり、戸惑うしかないことを言われたんだ。
ギリメカラを斬れ?
死ぬだろ!
できるか!
そう、口をついて出そうになったけど
続くエンジュの言葉で、俺は言葉を失った。
「……無双正宗に斬られると、斬ったという事実を誤魔化すことができなくなるんや。つまり……」
鎧を着ていたから無事だった。
魔術で斬られないバリアを張っていたから無事だった。
そういうのが通用しなくなる。
「ティアマト戦のときに、この無双正宗があったら、おそらくあの海の結界ごとアイツを斬れていたはずや」
なるほど……
で、続く言葉が……
「なので、当然ギリメカラも斬れる。反射も起きへん」
マジか……
俺はエンジュを信用している。
理由は仲間の学者だからだ。
彼女の知恵と知識が、このパーティーでのそれなんだ。
疑う選択肢など、あり得ない。
だから……
腰の刀を、今まで使っていた阿修羅から……
この無双正宗と交換する。
……今までありがとう。
阿修羅。
そしてこれからよろしく。
無双正宗。
今まで共に戦って来てくれた愛刀に礼を言い、そして新しい愛刀になる無双正宗に挨拶する。
そして
転がり、存在し続けているギリメカラの頭部の破片。
その前に立った。
で……
どうしても気になったので、しゃがみ込み。
1回、殴ってみた。
拳で、軽くだ。
……同時に、俺の頭が誰かに殴られた感覚があった。
うん……本当に反射する。
無双正宗で斬られたものには誤魔化しが効かない。
これが本当で無ければ、俺は死ぬわけね……
流石に緊張する。
緊張はするが……
俺は、無双正宗を抜いた。
抜き……
刀を逆手に持ち替え、その切っ先をギリメカラの眼球に深々と突き刺した。
頭の片隅で死を意識しながら。
だが……
俺には何の変化も起きず。
眼球を串刺しにされたギリメカラが、黒い塵になって消滅していく。
……本当に、斬れた……。
心臓が高鳴る。
そして興奮する。
息遣いが、上擦って行く。
すごい……すごい刀だ。
親父が生涯かけて追いかけた刀だけある……!
まさしく、神刀……いや、神剣!
これ以上の剣なんて、この世にあるわけが無い!
親父……やっと手に入ったよ。
俺と親父の親子2代の夢がようやく叶ったんだ……!
ゴアアアアアッ!!
部屋に入ると、巨大蜥蜴のティーレックスが2頭いた。
地下4階で遭遇したのはこいつのゾンビだったけど。
こいつらは生きてる。
ちょうどいい。
肉は相当美味いという話をどこかで聞いた覚えがあるし。
……それにな。
悪ィんだが……
今、スゲエ試し切りをしたいんだよ!
ティーレックスがその大顎で噛みつきを仕掛けて来た。
俺はそれをサイドステップで避けながらすれ違いざまの切り上げを浴びせる。
それだけで、ティーレックスの顎先が吹っ飛んだ。
ギオオオオオオッ!
苦しみ悶えるティーレックスの脚を踏み込んで切断し。
立てなくなったティーレックスの太い尻尾に近づいて、その根元に斬撃を入れて容易に斬り落とす。
……すごい!
あらゆるものが豆腐みたいに思える!!
斬っても全く抵抗を感じない!
伝説の通りだ!
感激しながら斬りまくる。
無論、これは食肉であるということは念頭に入れてだけど。
斬りながら、俺は思い返していた。
エンジュに伝えられた、無双正宗の真実の姿を。
無双正宗は……
「タケミ、無双正宗の使い手として、知っとくべきことを教えとくわ」
そう言われたんだ。
「無双正宗の秘められたチカラに、魂斬の能力があるけども」
魂斬……斬った相手の魂を滅ぼして、蘇生魔法だろうが何だろうが、どんな手を使っても絶対に復活できない状態にしてしまうチカラ。
「それな……一応、2回使える。2回使うと、刀が消滅する。それを覚えとき」
聞いたとき、え? と思ったよ。
1回で消えるんじゃ無いのか? って。
けど……
「そういう意味でも無双、なんやな。2つと無いという意味と……秘められたチカラを2回使うと無に還る刀という意味」
なるほど……と思い。
続く言葉を俺は心に刻み込んだ。
「ただし、チカラを使うと確実に性能は落ちるで。1回つこたら、ギリメカラを斬り捨てられる出鱈目さは消える。ただのとんでもなく性能がいい刀になるんや」
……なるほど。
「おそらくその状態でも、タケミやったら鉄斬を全ての斬撃で行える程度の切れ味は引き出せるやろけどな」
分かったよ。覚えとく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます