第70話 ギリメカラと最後の切り札
ギリメカラ……!
とうとう再会した。
けれど、あの後俺たちは対策を見つけたんだよ!
「エンジュ! 閃光業火の巻物を!」
「あいよ。ちょっと待ちい」
エンジュが荷物を探り始める。
危ないし、切り札でもあるので預けてたんだ。
「どうしたんですか? 斬り掛からないんですか?」
ギリメカラを知らないエリオスが、俺たちの様子を見て不審に思ったのか、そう訊いてきた。
ちょうどいい。
基礎情報を知って貰っておかないと
「あれはギリメカラ。物理攻撃を反射する特性を持っている魔物だ。……俺たちの天敵みたいな奴だよ」
「……なるほど。対策はあるんですか?」
「ある」
……俺は閃光業火の巻物があることをエリオスに伝える。
その話を聞き、彼はしきりに頷いていた。
「なるほど」
まあ、頭はいいヤツだから。
1回で理解はしてくれた。
助かる。
彼は腕を組みながら
「だったらその巻物の一撃は万一にも外せませんね」
そうなんだよ。
「だったら……」
彼は一瞬考えて、少し眉を顰め
「ミナ、そいつの前に立って足止めしてくれ」
……そう言った。
心中、察する。
エリオスに指示されて
「承知致しました」
あっちはあっちで、事務的に自分の役割に沿った要求を受け、行動する。
金剛石の盾を構えながら、ギリメカラの前に立ち
「マハール デンジ ロルン ハースニ!」
……真空刃の魔法を発動させ、ギリメカラを攻撃する。
そして、注意を引き
ギリメカラの猛攻……
鼻による打撃、踏みつけ攻撃などを受け止めたり、ギリギリで躱したり。
地の邪神の注意を引く。
こっちから手を出せない相手を身体張って足止めできるのはミナしかいないしな。
俺たちとしては、それを見守るしかない。
そんなミナの仕事を見ながら。
エリオスは真剣な表情で、ギリメカラを見つめ、印を結び
この魔法の詠唱を開始した。
「マナ ステル アンチェン」
……魔力魔法第4位階の麻痺の魔法。
勘違いしている奴も多いんだけど、この魔法は相手の体内に麻痺毒を発生させる魔法じゃない。
意思で集中した魔力を使い、相手の自分の身体を動かそうという意思の伝達を阻害する魔法なんだ。
なので、この魔法はアンデッドでも効く。
アンデッドは毒が効かないけど、そんなのは関係ないんだ。
デメリットは1度に拘束できるのは1体までということと、術者の集中が切れたらそこで終了ってことだ。
……あと、問題は。
ギリメカラが抵抗に成功したら、効果自体が発生しない。
これか。
しかし……
エリオスの詠唱が終了した瞬間。
ギリメカラのミナへの猛攻が止まった。
どうやら効いたらしい。
……流石エリオス。
こいつならやりかねないとは思ってはいたけどさ。
ミナはそれを確認し、こちらに一度一礼した後。
下がって傷ついた自分を自己回復し始めた。
……あとは
「タケミ」
そこでとうとう
神妙な表情のエンジュが、ひとつの巻物を差し出してくる。
「……魔力魔法やからな。アンタに頼む」
……俺がやるのか。
分かったよ。
責任重大。
少しだけ、緊張で受け取る手が震える。
発動座標設定。
これが重要なんだよな。
1回しか使えないし。
慎重に狙う。
ギリメカラの身体を丸々飲み込める位置取り……
集中し
「皆、目を潰れ。目をやられるぞ!」
事前警告。
閃光業火はそういう魔法だ。
直撃を受けなくても、その光だけでも十分有害。
下手すると失明する。
眩しすぎて。
大きく息を吸い、吐き。
俺自身も目を閉じながら、俺は閃光業火の巻物の封を解いた。
同時に
瞼の向こうに、太陽が出現したのが理解できた。
……光が消えたとき。
何かが落下した音を聞く。
目を開けた。
そこには……
ギリメカラの牙と。
単眼と鼻のついた頭部の一部。
それだけが残されて。
他は全て消失していた。
これが……閃光業火の威力。
最高位の攻撃魔法の恐ろしさ。
例え邪神でも、喰らえばひとたまりもない。
凄まじい魔法だ。
……ギリメカラの牙が、塵になって消滅する。
倒されたのだから、そうなるのも当然だ。
パズズも倒したら消滅したし。
そうして、俺は気を緩ませていた。
いたが……
ある事実に気づき、俺は戦慄した。
……牙は消滅したのに、単眼と鼻がついた頭部の一部が消滅しない。
それが意味するところ。
そこに気づいて、俺は戦慄した。
こいつ、まだ生きてる……!
もう閃光業火の魔法は無いのに。
どうすんだこれ……!
ここからもし復活したら、もう打つ手がないだろ……
どうする……? 攻撃魔法を集中砲火して、これを焼き払うか……?
そう思い、対処法を模索していたときだった。
「タケミ!」
タマミが俺に駆け寄って来たんだ。
鞘に納まった一振りの刀を持って。
タマミは興奮していた
その表情で、俺はある予感をし、俺も一気に興奮してしまう。
タマミがその刀を俺に差し出した。
そして俺はその予感が
「これが無双正宗だよ!」
……正しかったことを知った。
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