第69話 テレポーター
戦闘が終わったので。
タマミが宝箱に立ち向かっていた。
んで
なんかタマミの作業が進んでいる様子が無い。
何か難しいのか?
「……で、どうやって来たのかという話ですが」
おっと。
エリオスとの話なのに、他に気を散らすわけにはいかないだろ。
「うん。その方法って何よ?」
相槌を打つように。
すると。
「物質探索で阿修羅の位置を把握して、そこから飛んできました」
笑顔でそう言うエリオス。
物質探索……魔力魔法第2位階の魔法。
自分のよく知っているものの位置を探る魔法。
なるほどね……
つーか、当たり前だけどさ……
ミナの持ち物で飛んで来たわけじゃないのが、根深いよな。
深くは聞かないけど。
「まぁ、来てくれて嬉しいよ。
礼を言っておく。
よく、乗り越えてくれた。
そう彼に、ここに来るまでに味わっただろう苦難について思いを馳せながら話し掛けていると。
……リンがエリオスに恨みがましい目を向けていた。
そんなに俺に回復魔法掛けたかったのか。
まあ、悪い気はしないけどさ。
でもしょうがないことなんだし。
……この辺が、黒なのか。
そんなふうに、俺が呑気に気持ちの行方みたいなものを想像していたら。
「ちょっと皆、聞いて欲しいんだけど」
宝箱と向き合っていたタマミが、俺たち全員に呼びかけて来た。
「落ち着いて訊いて欲しいんだけどさ」
タマミが俺たちを見回しながら
神妙な顔つきでこう言ったんだ。
「この宝箱の罠は……テレポーターだよ」
え
テレポーター。
宝箱の罠で最悪のもの。
引っかかるとまず全滅するので。
だから、皆恐れている。
……一体どんな罠か?
それは転移の魔術刻印を組み込んだ罠。
罠が発動すると、効果範囲内にいる人間をどこかに転送する。
その場所が問題で。
どこかの上空だったり。
海の底だったり。
もしくは、石の中だったり。
どこか知らないけど、まあ、ろくな場所じゃない。
殺すつもりで飛ばすんだから。
そんな状態だから、死体の状況は悲惨なことになる。
まず発見できないし、例え見つけられたとしても、原型を留めない状況なのが容易に予想できるから蘇生は期待できない。
だから皆恐れているんだ。
……この罠に引っかかったことがあると口にしたヤツが1人もいないから余計にね。
解除したことがあるというヤツはたまにいるんだけど。
その意味、推して知るべし。
「……これからタマミはこの罠を解除するけど、覚悟だけはしておいてね」
失敗したら全員死ぬからね。
無論、やめてくれって言うならやめるけど、どうする?
降りる、沈黙。
そして
「私はいいよ」
リンがまず、そう言ってくれた。
そして次に
「僕も構いません」
エリオス。
「……タマミの腕は信じとるし」
「ウチも同感や」
おやっさん、エンジュ。
「……エリオスが良いと言ってるのに、私が否とは立場上言えませんわ」
そしてミナ。
全員、了承してくれた。
……ありがとうとしか言いようがない。
心が……震える。
そのときだった。
パオオオ! パオオオ!
……象の鳴き声。
この迷宮で、象。
それが意味すること。
それが俺の中で浸透してくる前に
パオオオオ!
壁の空間が歪み、巨大な漆黒単眼の巨象が壁を突き抜けて、この部屋に入って来た。
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