第66話 仲間たち
とうとう見つけた。
魔人ヨシツネ。
「……拙者との立ち合いを所望か?」
その男……魔人ヨシツネは、俺に面白そうに俺の意思を確認する。
そこで……俺は一瞬考える。
今、俺たちはブラケル討伐のために迷宮に挑んでいる。
その状況で、こいつに挑むのは正しいのだろうか……?
魔人ヨシツネの宝箱には、おそらく神器級の武具が入っている。
魔人ランスロットの宝箱に、聖者の法衣。
ストームジャイアント・ジュピターの宝箱に、ジュピターブレード。
ならば、きっと魔人ヨシツネの宝箱には……無双正宗が入っているはず。
無双正宗。
ずっと追い求めて来た伝説の刀。
親父の代からの夢。
その夢が叶うチャンス。
しかし……これは、完全に俺のエゴ。
いいのか?
これは?
迷う。
俺のエゴで、強敵との戦いに身を投じる。
許されるのか……?
戦いたいという気持ちと、自分のエゴを押し通そうとすることへの後ろめたさ。
どうすればいい……?
そのときだった。
「皆、協力してあげてくれないかな!?」
リンが、他の仲間に呼びかけてくれたんだ。
俺の思考は、そこで止まった。
振り返る。
彼女は続けてくれていた。
「魔人ヨシツネの宝箱には、きっとタケミの悲願が入ってるの!」
宝箱を指差しながら
「たった1人で最下層に潜ることを考えるくらいの!」
……リンは、自分のことみたいに、俺の夢の実現について訴えてくれた。
……リン。
ありがとう……!
「もし、皆は嫌だって言うなら、それならそれでいいよ! 私がタケミに協力するから!」
俺は、そんなリンに「もういい」って言おうとした。
だけど
「……タケミの夢についてはワシだって知っておるし、神器を求める武芸者の気持ちも分かるつもりじゃ」
「タマミも知ってるしそのくらい。……その宝箱、高レベルの罠が掛かってるに決まってるし、タマミが協力しないとどうしようもないよね」
「私の要求を聞いていただいておいて、他人の要求は聞かないなんて。それはどう考えても駄目でしょう」
おやっさん、タマミ、ミナが踏み込んで来た。
……いや、来てくれた。
俺は、震えていた。
「もちろんウチも賛成やから」
彼女も一歩前に出る。
エンジュ……
「皆、ありがとう……!」
……嬉しかった。
俺の築いた関係は、きっと本当のものだったんだ……。
そんな俺たちの様子を面白そうに見ている魔人ヨシツネ。
彼は言った。
本当に、楽しそうに。
「……決まったようだな。もう一度聞こう……拙者との立ち合いを所望するか?」
俺は阿修羅を抜刀する。
こう、答えながら。
「……所望する!」
そして俺の返答に、ヨシツネは獰猛な笑みを浮かべた。
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