第64話 敗北者じゃん

★タマミ目線です



 ミナがスルトを倒した後。

 おやっさんがアジ・ダハーカの最後の首を刎ねて倒して。


 タマミたちは戦闘に勝利した。


 ……けど。


「……メチャクチャしたな。普通、戦闘中に宝箱開けるなんて発想は出ないぞ」


 リンに回復魔法を掛けて貰いながら。

 タケミがそんなことをリンに言ってた。

 それはタマミも同意見。


 ……普通、そんなことやんない。

 常識外れ。


「だって、タケミもミナも、あのスルトに有効打を与えられてないみたいに見えたんだもの」


 だからワンチャン、宝箱の中に強力な武装が入っている可能性に賭けた。

 そう言ってた。あのひと


「……キミは罠の鑑定は苦手だったはずだろ」


「まぁね。10個鑑定したら2個は間違うもの。私」


 ……20%は結構高い確率だ。

 失敗率がそれだけあったら、危なくて普通は鑑定を任せて貰えない。


 ……でも、80%は正解を引けるってことでもあるよね。

 そこで、この子は賭けたのか。


 ……すんごい度胸。

 しかも戦闘中。


 よく集中できたね?


「……罠は何だったの?」


 タマミは思わず訊いてしまった。

 すると


「ん? 高圧電線」


 あっけらかんと、何でもないふうに。


 ……高圧電線。

 引っかかると宝箱周囲の人間が凄まじい電撃を浴びる罠。

 効果範囲は半径1メートルくらいだから、離れてる人間は大丈夫だけど。

 引っかかった人間は無事では済まない。


 良くて死亡。下手すると死体が燃え尽きて、死亡を通り越して灰になる。


「さすがに魔法のバッテリーを取り外す作業は手が震えそうになったけど。間違ったら私、死ぬんだなぁ、って」


 頭を掻きながら、えへへ、という笑いが聞こえそうな感じで、彼女は喋っていた。

 自分のとんでもない仕事のことを。


 ……負けた。

 本職、タマミなのに。


 彼女の武勇伝を聞くと、どんどん敗北感が高まっていく。

 宝箱では忍者に負けてはいけないのに。盗賊は。


 実質的に敗北したも同然に感じる。


「で、罠を解除してみたら何だか立派な剣が入ってるから、すぐにエンジュに鑑定して貰って、そしたら「これは多分ジュピターブレードやな」って言われて」


「それで俺の話を思い出して、起死回生の武器になると思ったのか」


 タケミの言葉に、リンはコクリと頷いた。


「ジュピターブレードは元々、巨人の剣士が使ってた片手剣や。人間が使うとサイズの関係で両手剣になってまうけどな。精霊や霊体に攻撃が通じて、あと悪魔にも効果がある。まぁ、相当すごい武器やわ」


 エンジュがその隣で、この新武装の素晴らしさを語ってくれていた。

 ミナが興味深そうに聞いている。


 ……タマミは、盗賊としての敗北感で深く深く落ち込んでいたけれど。

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